そこには誰もいない
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
文章が上手になるにはどうしたら良いのだろう。
とにかく書くしかないんですかね?
そんな事を常々思っております。
さて、今回も自分が役者生活を送る中で出会った怪異の話。
呼んでいただければ幸いです。
初舞台を踏んだ翌年の春に入学した養成所では、年度末の3月に卒業公演を行うというのがカリキュラムで、
ミュージカル俳優を育成するという場でしたから、1年かけて卒業公演の作品を中心に歌や芝居を習っていくというモノでした。
そして迎えた3月。
それまで稽古場で散々作品をブラッシュアップしていき、本番はそれなりの規模の中劇場で2日間公演を行う。
養成所の卒業公演としては異例の規模の劇場に、生バンド付き。
そうなると、舞台装置の規模もかなり大掛かりなモノとなり、演者である自分達もあくまでも養成所生ですから劇場の仕込み作業に参加します。
もれなく男共は力作業です。
プロの舞台監督の割り振りで、僕は搬入口でトラックから装置や道具類を荷降ろし、そのまま業務用エレベーターにスタッフさん達と同乗して劇場階まで上げるというポジションでした。
朝9時から作業がスタートし、昼までに搬入を終え、夕方17時頃から舞台稽古スタートというスケジュールでしたので時間との戦いだと舞監さんからはとにかく言われていました。
小物は全て上に上げ終わり、大物の装置もあと2回に分けて送り込めば搬入も終わる。
帝国劇場の様な大劇場の場合、舞台は地上階にあって搬入口からの搬入も楽なのですが、多くの中小劇場は建物の上層階だったり地下にあるもんですから搬入用エレベーターでの行き来が必要です。
大きなエレベーターで、扉が上から下に降りてくるタイプ。
また、収容限界ってのがあって扉から10cm程モノを離さないと閉まらないんですよね。
例えるなら路線バスの後ろ扉みたいな感じ。扉に近付いてると閉まらない。あんな感じです。
残る舞台装置や細々したモノの事を考えれば、上手く載せれば1回で行ける。
プロのスタッフさん達がそう確信しているのだからいけるのでしょう。
僕も指示に従いながらテトリスの様にはめ込んでいく。
半信半疑ではあったが10分後には本当に全ての荷物がエレベーターに積み込まれ、尚且つ担当してる僕を含めたスタッフ6人もみんなエレベーターに乗り込める。
プロってすごい!!
そして舞監さんが注意しろよーなんて言いながらエレベーターの閉じるボタンを押す。
警報音を軽く鳴らしながら降りてくる扉。
僕達はセンサーに引っ掛からない様に注意しながら荷物を押さえる。
扉が半分ほど閉まったその時だった。
ガコンッ!!という大きな音と共にエレベーター内の荷物が崩れる。
ヤバい!!と誰かが叫んだ時にはもう手遅れで崩れた荷物が扉にぶち当たりエレベーターの扉は大きく歪んでしまったのでした。我々はほうほうのていで扉をくぐってエレベーターから這い出しました。
積み方が悪かったのか。
そんな事ではないという事は僕は知っていたし、おそらくあのエレベーターの中にいたスタッフさんもみんな分かってたと思います。
扉が半分降りてきた直後、
扉の下から真っ白い手が何本も伸びてきて荷物をあちこちに引っ張っていたのを僕達は見ていたのですから。
その後2時間ほどでエレベーターは復旧し仕込み作業もスタッフさん達が休憩を削ってくれのでその後のスケジュールに大きな変動は起きませんでした。
ですが、その後の舞台稽古、ゲネプロでは、稽古場では起きなかった小さなトラブルが頻発し、本番前に養成所の所長が急遽お祓いをお願いするなんていう一幕がありました。
あのエレベーターに乗ってたスタッフさん達から僕は、
芸能に携わると大なり小なり怪異に巻き込まれる事がある。
ただし、巻き込まれる人間はとことん巻き込まれるし、巻き込まれない人間は引退するまでそういう事と全く無縁なのだと教えられました。
初舞台の時の事、それからこの後遭遇していく事。
それらを思うに、やはり僕は前者の括りにいるのでしょう。
僕は早生まれなので、初舞台の時は19歳になる学年の時の11月の話。
今回は数日後の誕生日で20歳になる3月の話。
今考えると若かったんだなって思いますね。
ところで、怖い話タグを付けてるけど、僕の話って怖い話というより怪異遭遇体験談なんですよね。
タグの使い方も考えなきゃなぁ...。
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