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しりとりエッセイ  て  手相

 しりとりで、エッセイをやっています。成分は、下品とエロとエゴと恐怖で構成されており18禁です。

 手相を褒められたことがある。
 ますかけ線というのがあるそうで・・・
 芸能人だと、イチロー選手や木村拓哉さんとか又吉直樹先生などがいる。

 ようするに、手なのである。
 こういう感じだ。

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 両方ともだ。確かに、学生時代は才能があるとか、人より優れていると言われたことがあるのだが・・・。
 今は、しょぼい・・・。まずは運がないし、優柔不断だからいけない。

 大学の頃、気になる女の子がいた。
 その子と何か話したいのだが、共通の話題がない。
 僕は、映画とか本が好き。彼女は、音楽や踊りが好き。
 サークルが一緒なので、何度か飲み会などで同席になったが、いざとなると話しが続かない。話しが通じない。学部も学科も違い友達も違うから、ほとんど共通点はない。それでも顔が好みだったもので、何とか話題を・・・、お近づきになりたいと思っていた。

「彼女、占いが好きらしいよ」と同級生のKという女の子から聞いて、僕はとりあえず占いの本を買って来た。誤解のないように言っておくが、僕はそんな非科学的なものは一切信じてはおらぬ。
 B型だろうが、新潟だろうが、知ったこっちゃない。

 一応、手相はそれでも気になったもんで、1冊本を買って来て読破した。
所謂、座学である。僕は、いつも、このパターンだ。すべての知識は読書から獲得しておる。
ポイントだけを頭に叩き込んで、いざ、実践・・・。

 コンパの時に、試してみた。本丸の彼女に、いきなり攻め込む勇気はなかったので、3年の女の先輩から・・・。
「占いには興味あるけど、べたべた、手を触られるのは・・・」
ということで見るだけということに、手には触れさせて貰えなかった。
だいたい頭に入っていたから、普通に占えた。ようするに、線が長いかどうかなのである。
 生命線、財産線、結婚線・・・。
 だいたい、皆の関心があるのは、この3つだ。

 にしても、女性たちは、皆、手相占いには興味があるが、僕に手を触れられるのを極端に嫌がる。まるで、ゴキブリ扱いだ。僕は、自分では女に好まれる人間だと思っていたから、少しショックを受けた。
「手は握らないで・・・。見るだけで頼みます・・・」
 皆、僕に触れられるのを避ける。
 僕の手は呪われた悪魔の手であるかのように、皆、嫌悪する。

 度胸試しが終わり、本丸の彼女に突撃した。
「て、手相・・・見てやろうか?」
 彼女はにやりと笑い。「お願いします・・・」と。
 当然のように、手には触れないでと言われた。
 結婚線、財産線・・・短い。生命線が極端に短い。最悪の手相だ。
 僕は自信がなくなったので、鞄よりを本を取り出した。図を参考にしながら、彼女の生命線を探る。やはり、この線に間違いはない。短い。極端に短い。正直に言うと、すでに死んでいるlevelだ。

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 僕は笑いながら「80くらいまでは生きるっしょ。幸せな結婚に、子供できるっしょ」と嘘を言うと彼女は苦笑いを浮かべた。
 それから、僕たちは、しばらく占いについて話しをした。彼女は占星術占いが好きで、かなり専門的だった。占いサークルにも所属していると言う。「君も手相好きなら、うちのサークルにおいでよ。彼氏が部長なんだよ」
 ああ、なるほど・・・彼氏がいたのか。彼氏ーーー。

 僕は死んでしまった。
 僕の恋は、いつものように桜散る・・・であった。

 立ち去ろうと席を断った時、「君の気持ち知ってたよ」と言われた。
 Yという友人が、僕の陰謀というのか不純な動機を皆に吹聴していたのだという。
「私の手・・・、触りたかったのでしょ?」
 どんな風に吹聴したんだ。それだと、ただの痴漢ではないか?。
 それで女子たちは、「触るな」と言ったのか?。
 僕が、お触り目的に手相占いの知識を得たと思ったのだな。
「あっ、触りますか?」と彼女。
「いいですよ、そういうつもりじゃないし・・・」
「だよね・・・」
 彼氏が占いサークルの部長だとカミングアウトしたのも、僕の告白を事前に回避するためと思われた。

くそ、Yのやろう!。
彼は、バイトで来てない。
「逃げやがったな・・・」

Kさんが目の前に座った。
「はい、見て・・・」と手を出す。
「あ、はい・・・」
「触る、ちゃんと手に取って見る」
「いいのかい?」
「いいよ、どうせ、デマでしょ!」
「ああ・・、デマだよ」
「君がトイレで手を洗わないって・・・嘘だよね」
それは事実だった。適当にしか洗わん。
だから、女子たちは、僕に手を触れられるのを回避したのか。そうだったのか。

 僕は、最近、占いを信じている。
 というのも生命線の極端に短かった占い好きの例の女の子が、23歳で交通事故で死んだと聞いたからだ。
 ということは、僕は・・・80くらいまで生きれるのかい。

 都合の良いことだけ信じるのでした。

2020 4/15


次回は、 <て> 手相 >>>   <う> 上から目線の男



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