お墓にて
彼岸前のお墓は人がまばらだった。
線香の火をもらうために管理棟に向かう。すると、ドアから50代くらいの女性が足早に出てきた。トイレに入ると、20代くらいの若者が泡立てた手を一心不乱に洗っていた。まるで病的なほど。事務所に行くと、待合ベンチに座った初老の男性が、ロダンの「考える人」のように苦悩し、銅像のように固まって悔しがっていた。
おそらくこの三人は家族なのだろうが、墓参りに来て何があったのだろうか?
いろいろと想像してみた。お父さんが息子さんの手を汚してしまい、喧嘩した奥さんが先に出て行ってしまったのかもしれない。そして、お父さんは自分がしでかしたことを後悔しているに違いない。
いや、奥さんは笑顔だった・・・、となると奥さんがご主人に何か仕掛けてその被害者が息子さんだったのだろうか?
休日の昼下がりのシュールな出来事だった。
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