クリティカル・ビジネス・パラダイム
著書:クリティカル・ビジネス・パラダイム
著者:山口 周
企業の未来が変化しつつあると感じることはないだろうか?
私は、近い将来、今のような資本主義の形態が異なるものになるのではないかと思っている。この本では、企業の未来像と、その一つの解決策と今後の見通しが示唆されている。
内容について詳しく書くとネタバレになるので控えるが、巻末に描かれている興味深いエピソードがあるので、ここに引用したい。
今から半世紀前、1973年、アイスランドのヘイマエイ島で大規模な火山噴火が発生し、その後も噴火は5ヶ月にわたり続いた。島民の1/3が家屋を失ったそうだ。
政府は家を失った人たちに補助金を与え、島の別の場所に家を建てるか、他の場所に移住しても良いとした。当時、島民は代々漁業で生計を立てていたため、当然そのまま漁業を続けると思われた。
このとき島民は、この先どう生きていくべきか、人生に真剣に向き合うことになった。そして、家屋を失った人々の42%が島を出て、漁業という代々続いた仕事を捨て、新しい人生を選ぶ決断をした。
著者が興味深いと指摘しているのは、その後の話だ。アイスランドは非常に小さい島であり、納税記録などから、ヘイマエイ島の元住民がその後どのような生活を送ったかを精密に追跡することができた。結果、島を出て新しい人生を選んだ人々の生涯収入は、島に残った人々を大幅に上回っていたそうだ。
さまざまな要因が考えられるものの、このエピソードが示唆しているのは、短期的には不幸に見える出来事が、今後の生き方に真剣に向き合う契機となり、新しい道を選んだ結果、成功のきっかけになったということかもしれない。
本書のタイトルにある「クリティカル・ビジネス・パラダイム」の通り、従来の規範や仕組みに対して、これからの時代は大きな変化をもたらすように感じる。
多くの人に、この大きな変化の兆しが不幸に見えるかもしれないが、それこそ自分の人生に向き合いどう生きてゆくべきか真剣に考える契機となるに違いないとおもう。
私はこの本を読んで自分の人生観が変わった気がしました。そして 、それを実行しようと思いました。
今年一番のおすすめ書です。(ちなみに、それまでの一番は彬子女王著の『赤と青のガウン』でした。)