青井風

気軽にやってきます。 よろしくお願いします。 小説…を書き続けますっ!…って意気込んで気軽さが消える、そんな安定の不安定。

青井風

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最近の記事

習い

 子供の描いた絵を見る。今は高校生の娘が小学校の図工の時間で描いたものだ。抽象画……と言ったら良いのか、分からないけれど、何か惹かれるものがある。青い画用紙に黄色と白と桃と紫の色が絵の具で散りばめられ、織りなされる世界は生の横溢と言った所だろうか。そんな言葉の羅列が陳腐に感じるほど、ただ、ただ、惹かれるものがある。  そんな世界を見てみたい……いや、感じていたい。  昼を告げる時計のアラームが鳴った。  そうだ、買い物行かなければ……。飲みさしの黒のカップを置いて椅子から立ち

    • 逃げた犬

       人気のない薄暗い路地を犬は歩いていた。風もなく、空気が澱んでいる。饐えたような匂いが鼻をつく。空腹に耐えかね、その場にへたり込む。もう一歩だって踏み出せない。犬はここで終わりかと思った。  そもそもこの路地に迷い込んだのは、偶々だった。何故か追ってきた人間から逃げようと入った、それだけだった。その後、歩けど、歩けど、出口はなく、薄暗い壁に囲まれ続けている。光が差すのは上からばかりで、前から広い道を示すような光は差して来ない。曲がれども、曲がれども、ただ、薄暗い道は連なるばか

      • 狐と蝶

         ある秋の晴れた日の午後、薄黄色の狐が一匹、野を駆けていた。  不思議なもので誰にも会わない。  ただ、ただ、芒を掻き分けて走る。すっと視界が開け、丘になる。登って見渡す一面は黄金色。しかし、やはり他に誰の影もなく、音もなく。見上げれば、陽が眩しい。  ふと、横を見遣ると、蝶がひらひらと舞う。 「お前も独りか」そう思って、安心し、狐はまた、駆け出した。何を目指しているのか、わからぬままに。  蝶はひらひらと舞い、芒に留まった。その色は陽に照らされて橙色に光っていた。 完

        • 故はなく 3

          桜の散るのを知りながら、いや、思いもせずに部屋の中で沈殿していた私が外に出た時に感じたのはやはり、母の記憶だった。この門を通って一緒に外を歩いたこと、生垣を剪定する母の横顔、家の前の通りの奥で私に手を振る母の姿、その全てが痛みになるのは辛かった。外に出て行くどこそこには必ず母がいる。家の近所なんて尚更ではあるが、家の中のあのどこにいても感じる痛みよりはましな時があった。この充満した空気に耽溺し、溺れて自分を消してしまいたくなる。外の空気はそんなのを振り払える気がした。しかし、

          故はなく 2

           私は母が好きだった。そこに偽りはない。いつも笑顔で私の事を何でも許してくれた母がいた。掃除が好きで一日中、掃除をしていた。料理はあまり好きではないと語っていたのを思い出す。父も穏やかで経済的な不自由もなく、何の不都合があっただろうか。それが私には分からない。分かっていたら、何か出来たのではないかと思う。止められたとのではないか、と。しかし、亡くなった今、何も残さなかった母の自殺の理由は全く分からず、私の心に沈澱する澱となっている。分かっていたら、分からない、その二つを繰り返

          故はなく 2

          故はなく

           私が失恋した日に母は自殺した。と言う事で、私の失恋はどこかへ飛んでいったと思う。あの時の事はあまり思い出せない。全てが真っ暗になった、って言うのはとても正しい表現で、感覚が断絶していて、何も帯びない。そして思い出してもその暗闇が広がり、今現在をも襲って来そうになる。だから、思い出す事を自分に禁じている。そうすれば、日常に救われるのだ。それを重ねて、幾日、幾月、幾年を経れば何かが変わると信じている。あの闇が消えるかもしれないって。そう信じるようになったのは、幼馴染の健太のおか

          はじめまして。

          今日から何かを気軽に書いていきます。 宜しくお願いします。

          はじめまして。