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黒雪嶺 二

【原文】
医は甚だ進歩せりと謂はざるべからず。而も療治の効能は割合に妙ならず。難病は依然として難病なり。死ぬ者は死ぬなり。中には九死に一生を得たるもあれど、差し引き勘定昔から何程病人が減じたるや。医の進歩とは病人の減ずる謂にあらずして、別に解釈の下しやうのある者にや。

『小泡十種』第五種、六〇頁

【現代語訳】
医術は著しく進歩したと言わざるを得ない。ただ、治療の効果はそれほどすばらしいものではない。難病は依然として難病である。死ぬ人は死ぬ。なかには九死に一生を得る者もいるが、差し引き勘定、プラマイゼロで、昔と比べどれほど病人が減ったのか。医術の進歩とは病人を減らすことでないとすれば、別の解釈ができるものだろうか。

【補説】
雪嶺は儒医の家系に生まれ、母方も蘭医であった。
他方で、医者に対しては厳しい見方をする言説が散見される。

医者や医療については私も思うところが多々あるが、また別の機会にしたい。

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