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『三宅雪嶺人生訓』八

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/933730/1/20

〇二つの力行
 黙するべくして黙するの力行なると同じく、言ふべくして言ふは、言ふべくして言はざるに比し、確かに力行なりと謂ふべし。

『日本及日本人』、『三宅雪嶺人生訓』四頁

【現代語訳】
〇二つの力行
 黙るべきところで黙るような(ことが)力行(努力して行うこと)であるのと同じく、言うべきところで言うのは、言うべきところで言わないのに比べて、たしかに力行であると言えよう。

【補説】
「力行」は『礼記』中庸「子曰く、学を好むは知に近く、力め行ふは仁に近く、恥を知るは勇に近し。斯の三者を知れば、則ち身を脩むる所以を知る。身を脩むる所以を知れば、則ち人を治むる所以を知る。人を治むる所以を知れば、則ち天下国家を治むる所以を知る」(孔子が言われた、学を好むのは知に近く、努め励んで行うのは仁に近く、恥を知(って危難を避けず善事に努め)るのは、勇に近いのである)の語。
いわゆる「三達徳」(「智、仁、勇の三者は天下の達徳なり」同上)へ至る入門の一つに位置づけられる。

「力行」という語には、努力するのは当たり前で、それを行動として具現化する意が込められている。
雪嶺が好んで使った言葉の一つである。

日本人は沈黙は得意だが、積極的な発言は不得手である。
言うべきところで、然るべきことを言うのは、たしかに「力行」であろう。

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