儚さに惹かれて
悲劇のヒロインになりたい人が多いように。
本当は悲劇ではない、偽物の悲劇にみんな憧れているのだ。
儚さというのは、どうして魅力的なのだろう。
儚いものは、儚いからこそ魅力的なのだろう。
呼吸一つで崩れてしまうような、そんな儚いものに皆憧れる。
本当はパンチ一発食らったって倒れないのに。
悲劇を演じる。
悲劇を演じれば、みんなが注目する。
注目されるために、また新しい作り物の悲劇を作る。
「私はなんて不運なのでしょう!」
そんなセリフを吐きながら、心の中では嬉々としてるんだ。
『さぁ皆、私に注目しなさい』
『皆が私に注目してる!』
そうやって。
そんなもの悲劇でもなんでもないのに。
ただ、舞台に立って、台本通りのセリフを言っているだけなんだ。
演じているだけ。
儚くて脆い。
すぐに崩れるから、美しいと思ってしまうの?
その一瞬だけしか存在できないものが、美しいの?
本当は、一瞬しか存在しなかったから、皆見えてないだけだよ。
一瞬見えたゴミを、美しいと錯覚してるだけかもしれないよ。