これまでの、たび。~アイルランド編③ Dia duit, Éire!~
これまでの続き。
日本を出発して大きなトラブルなくアイルランドに到着。無事入国を果たしたものの、我に返って途方に暮れたがもう遅い。
アイルランド到着の翌朝。朝食付きのプランだったため、朝食会場に向かった。出発前にアイルランドのガイドブックを買って、ホテル朝食はいわゆる「イングリッシュブレックファースト」が多いことは事前知識を入れていた。このホテルの朝食もイングリッシュブレックファースト。ガイドブックの写真から察しても結構量が多いなと思ってはいたけど、
まさかこんなに出てくるなんて思わなかった。
日本人にありがちな、英語で何か聞かれたら「とりあえずYesって答えとこ」という考えで、注文を取りに来てくれたスタッフの人の質問に、Yesを連呼してたらこうなった。海外でよくある失敗談の代表例である。ちなみに、今思えば「卵の調理法はどうする?ソーセージはいる?ベーコンは?ポテトはつける?」とかその類の質問だったと思うが、当時の自分では判別不能だった。
荷物をまとめ、いざ二度目の出発。
ホテルを出発し、国際空港のあるアイルランドの首都ダブリンから、アイルランド第三の都市と呼ばれるゴールウェイを目指す。
移動手段は事前に調べた結果、バスが一番便利だということがわかり、ホテルから一旦空港に戻り、空港からゴールウェイ直通のバスに乗車することにした。
ここで間違えたら一大事。バスターミナルで慎重に慎重を重ね、恐らくこれがゴールウェイ行きであろうバスを発見。念のため、バスの運転手らしき人に「このバスはゴールウェイ行きですか?」と聞いてみた。無論、この質問をする前に脳内シミュレーションを何度も実行済みである。どうやらこちらの意図は伝わったらしく、バスの運転手さんの言っていることは、「このバスで間違いない」と。たぶん。
後は運を天に任せて、到着した町がゴールウェイであることを祈るのみ…。
バスはハイウェイを通ってひたすら西へ。
2時間半くらいかかっただろうか。ついにバスは目的地に到着した。
どうやらここはゴールウェイで間違いないらしい。
次の試練はホストファミリーの家にたどり着くこと。
当然、その当時はGoogle Mapなどという便利なものはなかったし、土地勘が全くない状況で、うろうろするのは危険極まりない。そこで、タクシーに家まで直接行ってもらうことに。
ゴールウェイの町の住所には、アイルランドの固有の言語であるゲール語表記の場所が多い。ホストファミリーの家の住所も全くなんと読めばいいのかわからず、住所を紙に書いて、「ここに行ってください!」と必死で伝えた。乗ってしまったらもう、タクシーの運転手さんを信じるしかなかった。
これから住むゴールウェイの街並みを眺めながら、タクシーはある住宅街の家の前で停車。どうやらここがホストファミリーの家らしい。『旅の指さし会話帳』曰く、「お釣りは取っといて」ということが多いと書いており、初実践。どうやらちゃんと通じたようで良かった。
大きなスーツケース(総重量は32キロくらい。当然超過料金も取られた。4万円も。重量超過の原因はシャンプーやコンタクトレンズ溶液などの水物。今思えばもったいない出費だった…)を抱え、意を決して家のベルを押した。すると、
“Welcome!”
と迎えてくれた、私のホストファミリーとなる人。
日本を出てアイルランドに着き、この世界に自分のことを知っている人がいない寂しさに心が折れかけていたところ、ホストファミリーに出会えたのは本当に嬉しかった。安堵した。何を言っているかあんまりわからなかったけれど、言葉の壁を越えて、ただただ会えたことに感謝した。
こうして、私の人生初の「長い旅」が始まった。
その後も語学学校で同じクラスのイタリア人の高校生の英語のレベルの高さに打ちのめされたり、自分の英語のできなさに心が折れて大聖堂で一人泣いたり、人生で初めてできた外国の友達が同じクラスのドイツ人の女の子だったり、現地の合気道の道場に突撃してみたり、人生の憧れだったストーンヘンジとピラミッドにいってみたり、旅先のホテルで閉じ込められたり、ギリシャでスリに遭ったり、ヒースロー空港で閉じ込められたり、自分の人生を見つめ直してみたり。語りきれないほど、いろいろなことがあった。
いろいろあったけれど、全ては最初の「行こう」という思いから。
思い始めた時が、きっと本当の「たびのはじまり」なのかもしれない。
おわり
ちはや ふみ