てんし105

だきしめる

  だきしめる

 ステンドグラスにうつるいろ
 あかあおきいろ
 
 いろはひかりになって
 ぼくのからだにしみる

 ひかりはてんし
 ぼくのからだのなかでおどり
 
 あいになる
 

 あのステンドグラスの教会に
 行ったのは
 6歳か7歳のころ
 いやいや家族についていった。

 私のうちは3人姉弟
 歳の離れた姉は父に愛され
 私が生まれた後すぐに生まれた弟は
 母に愛されていた。
 それを羨む私はひとりになりたかった。

 気がつくとステンドグラスの前に 
 たたずんでいた。
 ただながめぼーっと。
 風で光が移り変わるのをみていた。
 
 とてもあたたかい光の影。

 今になってわかった

 光は僕を抱きしめていた。


  こきょう
 
 とりが鳴いていた
 もうかえるの?

 ぼくも泣いた
 まだかえりたくない

 だがわたしは大人になり
 鳥の声がきこえなくなった


 そこから十数年余り私は都会に出た。
 あの時のことはわすれて蓋をしていた。
 しかし僕は憶えていた。
 その愛
 又は光を求めて彷徨い続けていた。
 
 ぽっかり空いたその心を埋めるため
 母親の愛でしか埋められないと思っていたあの大きな穴。

 そんな僕は私はみつけたのだ。
 大きな光。
 そして私はその人の腕の中で
 思い出す。
 
 ステンドグラスの光を。
 
 あの時に戻りあの光は僕自身。
 私は記憶を旅して僕を抱きしめていた。 


  記憶
 
 あいはつなぐ記憶を
 じかんはそこにはなく円になる
 

 あのころのわたしと手をつなぎ
 ひかりのなかへ 

 かげのきおくはうらがえる
 つめたさもあたたかさも
 

 わたしのいちぶ
 

 あいになる