安心をくれる声
ステージに出るときは、ステージマネージャーや音響の方々から「トイトイトイ」と送り出してもらいます。
「幸運を祈る(toi toi toi)」という、ドイツ発祥の言葉です。
最近だと、「いってらっしゃい」も多いかもしれません。
フランスでは「Bonne chance」とかその辺りの言葉をかけてもらってましたが、思えばトイトイトイは聞かなかったかもしれません…😶
いずれにせよこうした言葉は、これからステージに出ていくときに、元気であったり、安心であったり、力を与えてくれます。
ステージマネージャーさんは、演奏家にとってものすごく大きな存在です。
リハの時から、音の響き具合を会場のいろいろな位置で聴いてくれ、ピアノの位置の微調整にも携わってくださいます。
ピアノの位置を少し動かすだけで、音の聴こえ方はまるで変わります。
自分の音がどう響いているかは、実際に客席で聴くことができないので、調律師さんとステージマネージャーさんが手伝ってくださるととても安心です。
ステージマネージャーさんに相談すると、お客様の出入りや動き、挨拶対応なども絶妙にフォローしてくださいます。
コンサートは演奏だけでなく、いろいろなことへ気を配らなくてはいけないので、こうしてプロの方が入ってくださると安心感が違います。
こんなにやってもらっていいのかな…と思うほど気配りのプロのような方もいます。
コロナが終息し、コンサートへ足を運ぶときは、ぜひステージマネージャーさんの活躍も気にかけてみてください✨
上に書いたこと以外にも、たとえば舞台転換は客席からも見えます。
熟練されたステージマネージャーさんのスムーズさ、丁寧さ、緻密さにはびっくりしてしまいます。
宮崎隆男さんの《マエストロ、時間です》という本に、ステージマネージャーさんのことがとても細かく、そしてとても素敵に綴られています。
宮崎さんは、サントリーホールの設計から携わった初代ステージマネージャーで、カラヤンや小澤征爾さんなど多くの音楽家のために力を尽くした方です。
私はこの本を、オーケストラの理事もなさっているフルート奏者の先生から薦められて読みました。
ステージに立つ人はもちろんのこと、コンサートなど様々なスペクタクルに関わる方に知っておいてもらいたいことがたくさん書かれています。
いまでも忘れられないくらい、深い温かさを帯びた「トイトイトイ」があります。
それはこの本にも登場する、サントリーホール2代目ステージマネージャーの上原正二さんでした。
海外のコンクールなど、どうしても一人で出ていかなくてはいけない時、よくこの声を思い出していました。
不思議ですよね、この一言だけで、こんなにいつまでも安心を与えてくださるなんて。
プロ、というのは、こういう不思議な魔法を積み重ねてこられた方を言うのかもしれません。
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