「柴田南雄音楽評論賞」奨励賞を頂きました
子どもの頃から、書く、ということは、演奏するのと同じくらい「ひとり」になれる時間でした。特に何があったというわけでなくとも、何か漠然とした疲れを感じたとき、無性に外の世界から離れて「ひとり」になりたくなる。そして気持ちが落ち着いたら、また戻ってくる。そのような居場所が、ピアノを弾くことと、言葉を記すことでした。だからこのふたつの行動はずっと私にとって生活に溶け込んだもの-生きるために必要なものです。
このたび第10回「柴田南雄音楽評論賞」で奨励賞をいただきました。この賞を知ったのは、桐朋学園に移行する前、まだアリオン財団が担っていた頃です。15年ほど前で、まだ高校生でした。いつか応募して、審査にあたっている経験豊富な先生方に自分の文章を読んでいただきたいな…と憧れ続けていた賞です。このように形として評価をいただくことができ、とても嬉しいです。
<柴田南雄音楽評論賞>|桐朋学園音楽部門 (tohomusic.ac.jp)
受賞作の『音楽時評-無意識は誘い、待つ者を浸す』は、芸術現代社の雑誌「音楽現代」11月号に掲載されています。
音楽現代2023年11月号(vol.53 No.11) | 株式会社 芸術現代社 (ongakugendai.com)
書籍は本社の芸術現代社や、お近くの書店、ネット等でお求めいただけます。電子書籍版もありますので、ぜひお読みいただけましたら幸いです。
授賞式は、9月末に東京駅近くの工業俱楽部で行われました。ご高名な文芸評論家でいらっしゃる三浦雅士先生が審査員長で、賞状の授与と、お話をしていただきました。
なんといっても、さすが三浦先生で、「人っていうのは死なないんだ」から始まった受賞スピーチ。だから法要の形も変化していると。私は今、ここに来て良かった-そう感じました。
死というのが、想像を遥かに超える残酷さであることを経験していなかったら、私はまだまだお花畑のように天上を見ていたと思う-それはそれで、持てる限りの誠実さであったとしても。
私は今年6月、突然にも、かけがえのない家族を失いました。このようなとき、休んで良いのだと多くの人は言ってくれる。私も人に対して、そう言った思います。でも、休んだら本当に立ち上がれなくなる。今に至るまでその恐怖があります。リサイタルも仕事も、何の変更もなく続けています。そして発信する身として、やはり生きていた存在を、生かし続けていかなくてはいけない-そのくらいの使命を背負えるようでなければだめだと、改めて思う日々です。
それでも夜道-
電灯の薄明りの向こうに、その姿を探してしまう。
ここからゆっくりじっくり、人生の味わいとともに、奥行きと彩の香る演奏、執筆活動を続けていけるように、心から励んでいきたいです。
今後とも応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。