10クラ 第59回 大真面目な音遊び
10分間のインターネット・ラジオ・クラシック【10クラ】
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第59回 大真面目な音遊び
2023年6月9日配信
収録曲
♫オリヴィエ・メシアン:預言者、羊飼いと東方の三博士のまなざし(『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より 第16曲)
オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」
演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)
プログラムノート
第二次世界大戦に従軍し、ドイツの捕虜となっていた最中も隙あらばスコアを読み漁り自身の精神的な蓄えを守り抜いた人がいる。20世紀最大の巨匠と名高いオリヴィエ・メシアンである。彼は人としての扱いとは思えないほど所要人数の大幅に超えたテントに押しやられながらも、むしろそこにいた敵対軍にさえもその音楽性を訴えるかのように作品を生み出した。解放された後に戻ったのは、支配されたパリである。彼は自分の音楽の仕事のことだけに専念したものの、パリ解放に向かう市街戦も経験し、フランスの地方にいた家族にはなかなか会いに行けぬまま時を過ごすことになる。彼はいつも心に信仰を持っていた。『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』もまた、愛に溢れ、音楽的実験に満ちた作品である。そして大いに批評界を賑わせ続けた「メシアン事件」-これほどの衝撃作を、人は待っていたのかもしれない。
地の底から聞こえてくるような壮大な低音は、タムタムという楽器を表している。大きな銅鑼のようなものだ。メシアンは「タムタムのように」とあらゆる曲に記しているので、よほど気に入っていたのではないだろうか。『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』にはオリエンタルな要素が存分にある。新約聖書にも「東方」は現れるが、タムタムの起源は中国であるし、メシアンのリズムルーツはインドであるし、音楽という自由度の高い分野のなかでいろいろな枠をひと際飛び越えていった人のように思う。
この第16曲は本当に面白い。全方面に対する遠近感が自在に描かれ、いとも自然な流れのなかに技巧を織り交ぜている。フーガであったり数学的手法であったり、盛りだくさんな仕掛けがコンパクトに小気味よく纏まっていながら、とても理にかなっているのでダイレクトに衝撃を感じられる。
「オーボエ」の音色は星の声のようにけたたましく宣言をする。三博士を導くかのように。古くから受難を暗示する半音階は終始聴こえてくるように配置され、イエスが福音書のとおり十字架を背負う運命を暗示させている。ピアノの最高音と最低音を存分に用いているのは天地の広さだ。メシアンの音楽は神の愛に基づくが、それゆえに生命の厳しさをもリアルに描いている。
🔶本作品を取り上げる演奏会🔶
2023年6月24日(土)15時開演:渋谷美竹サロン
『メシアン音楽の神秘2』
ご予約
https://mitakesayaka.com/events/2023-06-24-fukagairisako-messiaen.html
またはメール
musiquartier@yahoo.co.jp
(ミュジカルティエ 深貝理紗子 事務窓口)
【プログラム】
🌱オリヴィエ・メシアン:《8つの前奏曲》より
第1曲「鳩」
🌱オリヴィエ・メシアン:《鳥のカタログ》 第5巻より
第9番「ヨーロッパウグイス」
🌱モーリス・ラヴェル:《鏡》より
第2曲「悲しき鳥たち」
🌱ルチアーノ・ベリオ:《6つのアンコール》より
第2曲「葉」
第3曲「水のピアノ」
🌱オリヴィエ・メシアン:《鳥のカタログ》 第7巻より
第12曲「クロサバクヒタキ」
🌱ポール・デュカス:遥かなる牧神の嘆き
🌱クロード・ドビュッシー:《6つの古代のエピグラフ》より
第1曲「夏の風の神、パンに祈るために」
🌱オリヴィエ・メシアン:《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》より
第2曲「星のまなざし」
第4曲「聖母のまなざし」
第16曲「預言者、羊飼いと東方の三博士のまなざし」
第10曲「喜びの聖霊のまなざし」
2023年6月9日配信
収録曲
♫オリヴィエ・メシアン:預言者、羊飼いと東方の三博士のまなざし(『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より 第16曲)
オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」
演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)
プログラムノート
第二次世界大戦に従軍し、ドイツの捕虜となっていた最中も隙あらばスコアを読み漁り自身の精神的な蓄えを守り抜いた人がいる。20世紀最大の巨匠と名高いオリヴィエ・メシアンである。彼は人としての扱いとは思えないほど所要人数の大幅に超えたテントに押しやられながらも、むしろそこにいた敵対軍にさえもその音楽性を訴えるかのように作品を生み出した。解放された後に戻ったのは、支配されたパリである。彼は自分の音楽の仕事のことだけに専念したものの、パリ解放に向かう市街戦も経験し、フランスの地方にいた家族にはなかなか会いに行けぬまま時を過ごすことになる。彼はいつも心に信仰を持っていた。『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』もまた、愛に溢れ、音楽的実験に満ちた作品である。そして大いに批評界を賑わせ続けた「メシアン事件」-これほどの衝撃作を、人は待っていたのかもしれない。
地の底から聞こえてくるような壮大な低音は、タムタムという楽器を表している。大きな銅鑼のようなものだ。メシアンは「タムタムのように」とあらゆる曲に記しているので、よほど気に入っていたのではないだろうか。『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』にはオリエンタルな要素が存分にある。新約聖書にも「東方」は現れるが、タムタムの起源は中国であるし、メシアンのリズムルーツはインドであるし、音楽という自由度の高い分野のなかでいろいろな枠をひと際飛び越えていった人のように思う。
この第16曲は本当に面白い。全方面に対する遠近感が自在に描かれ、いとも自然な流れのなかに技巧を織り交ぜている。フーガであったり数学的手法であったり、盛りだくさんな仕掛けがコンパクトに小気味よく纏まっていながら、とても理にかなっているのでダイレクトに衝撃を感じられる。
「オーボエ」の音色は星の声のようにけたたましく宣言をする。三博士を導くかのように。古くから受難を暗示する半音階は終始聴こえてくるように配置され、イエスが福音書のとおり十字架を背負う運命を暗示させている。ピアノの最高音と最低音を存分に用いているのは天地の広さだ。メシアンの音楽は神の愛に基づくが、それゆえに生命の厳しさをもリアルに描いている。
🔶本作品を取り上げる演奏会🔶
2023年6月24日(土)15時開演:渋谷美竹サロン
『メシアン音楽の神秘2』
ご予約
https://mitakesayaka.com/events/2023-06-24-fukagairisako-messiaen.html
またはメール
musiquartier@yahoo.co.jp
(ミュジカルティエ 深貝理紗子 事務窓口)
【プログラム】
🌱オリヴィエ・メシアン:《8つの前奏曲》より
第1曲「鳩」
🌱オリヴィエ・メシアン:《鳥のカタログ》 第5巻より
第9番「ヨーロッパウグイス」
🌱モーリス・ラヴェル:《鏡》より
第2曲「悲しき鳥たち」
🌱ルチアーノ・ベリオ:《6つのアンコール》より
第2曲「葉」
第3曲「水のピアノ」
🌱オリヴィエ・メシアン:《鳥のカタログ》 第7巻より
第12曲「クロサバクヒタキ」
🌱ポール・デュカス:遥かなる牧神の嘆き
🌱クロード・ドビュッシー:《6つの古代のエピグラフ》より
第1曲「夏の風の神、パンに祈るために」
🌱オリヴィエ・メシアン:《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》より
第2曲「星のまなざし」
第4曲「聖母のまなざし」
第16曲「預言者、羊飼いと東方の三博士のまなざし」
第10曲「喜びの聖霊のまなざし」
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クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。
深貝理紗子
https://risakofukagai-official.jimdofree.com/