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【10クラ】第20回 気さくなユーモアとエレガンス

10分間のインターネット・ラジオ・クラシック【10クラ】
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第20回 気さくなユーモアとエレガンス

2021年9月24日配信

収録曲
♫アルフレッド・グリュンフェルト:《ウィーンの夜会》~ ヨハン・シュトラウス2世『こうもり』のワルツ主題による演奏会用パラフレーズ ~ Op.56

オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」

演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)


プログラムノート

「自分が出る幕じゃないよ。オペレッタなんて書けっこない」

世のなかにはその気がなくても、周りが放っておかない才能というものがある。
その名作は、しのぎを削り合う良き友と、劇場支配人の辛抱強い熱意によって誕生した。

オペレッタ《こうもり》
発表以降現在に至るまで、燦然と輝く不朽の作品である。

フランスにおいてオペレッタブームを起こしていたオッフェンバック(《天国と地獄》はほとんどの人がご存知と思う)はウィーンを訪ね、ヨハン・シュトラウス2世にオペレッタの作曲を勧めた。いまこそ、軽やかにジョークを飛ばすべくオペレッタを書くべきだと。

ウィーンの劇場支配人シュタイナーは、たびたび劇音楽の仕事をシュトラウスに委ねては、オペレッタ成功の機会を窺っていた。
なかなか聴衆受けしなかった作品が続いても諦めることなく、興味深い題材を探してはシュトラウスの好みそうな脚本へ色付けし、作曲を依頼した。
そのなかで生まれたのがこの《こうもり》である。

それぞれの登場人物の持ち場のバランス、スポットの当たり具合、脚本の質と品、ウィーン受けしそうな洗練、粋で軽妙なストーリー…
多くのものに支えられてシュトラウスの本領が発揮されている。
シュトラウス2世ほどの人物でも、周囲の多大な尽力に支えられて音楽活動が行えていたことを垣間見ることができるように感じる。

忍耐と希望への執念、これは成し遂げたい何かがあるならば、絶対に手放してはいけないものと思う。
聖書にもたくさん出てくるだろう。
必ずや、待ち望め、と。

さて、この《こうもり》に因んだ作品が本日の演奏曲目《ウィーンの夜会》である。
グリュンフェルトはプラハに生まれ、長年ウィーンの教育者として活躍した。
シュトラウス2世とは親しく、ワルツの人気曲《春の声》はグリュンフェルトに献呈されている。

上品で明るい世界観と溢れ出る歌心、華やかでピアニスティックなパッセージは聴く人の心に微笑みを運んでくる。
 
パラフレーズ―
フランツ・リストの得意とした分野である。
既存の素材を使い、アレンジをしていく作品スタイルのこと。
リストの場合、自らの華麗な奏法へのチャレンジである一方、音楽的環境の整っていない地域へも良い作品の数々を届けるという信念があった。
それゆえ、かなり「ギラギラ」している。

グリュンフェルトの《ウィーンの夜会》はそこをいくと、どこまでも品よくまとまっている。
いたずら心、恋、やきもちの嘘。
ドロドロにも描ける要素がたくさんあるにもかかわらず、軽やかにはじける音楽は非常に心地よく、「バカみたいな感情」がまた、ほどほどな人間の温度を感じさせる。

シュトラウス2世との友好的信頼と、多くの教え子を持つ温かな眼差しが目に見えるようだ。
香り立つのは、煌びやかなエレガンス。

クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/