僕らは歩く、止まる、歩く、走る。
彼はスタートラインで準備を始めた。
腕を組み、左へ伸ばしほぐした。 足を前へ置き、後ろ脚を伸ばした。
彼は服を気にしだした。手でゼッケンの下を弄り、着る服が変に織り込まれているのではないかと。 全身を眺めて、初めて着るゼッケンに不自然なところがないのかと。
クラウチングスタートを切るために、ポーズを足と手を合わせスタートの準備をとった。
顔は汗にまみれている。拭っても流れてくる。準備をしたいのに流れてくる。
ばん!!
目を閉じていた瞬間にスタートが切られてしまった。 まわりの選手はすでに走っている。 どんどん。どんどん。
取り戻そうと足に力が入るが距離が縮まらない。どんどん。どんどん。
左隣の男もたくさんの背中を追いかけている。 どんどん。どんどん。 息は荒く、表情がとてつもないものになっている。
今はとてつもない。みんなが頑張っている。それを皆知っている。だから1人じゃない。どこかにあるゴールテープを切ることができるはずだから。
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