物語「MMワールド」3話( いざ,突入)

                                  「それが……毛の抜けたおっさんだったんですよ」「ワハハハー」

                     
 お笑い芸人が話を落として、一斉に芸人たちが笑っている。大きく口を開けながらやけに大きな口で笑ってやがる。この芸人は楽しいのだろうか、毎週水曜日この時間にいつも笑っている。禿げた芸人が喋り終わると急に目の前で広がっているチラシの中身が気になり出した。一番上にあるのは地元のスーパーの特売デーに向けたチラシ。それをめくると、「使用料」と「使用W数」と書かれた紙。さらにめくると先程見たカードがあった。部屋に入るときにぐしゃっと握ったせいでヨレヨレなのだが文字は認識できる。「未来」だとか「新しい」といった言葉が多く記されている。まるで詐欺師としかいえない調子の良い言葉の羅列にアホらしさを感じる。    
 「こんなの未だにあるのかよ」

 「どうしましたか。康太様?」

 「うるさい黙れ」言葉をよく見ると、「貴方は本当に今の暮らしに満足していませんか?あの時の後悔していませんか?」と、1文並んでいる。アホらしい。本当にアホらしい。でもなぜか柴田の言葉が思い出される。

「今の暮らしってどうなのかって」と震える声と電子レンジを見つめる背中。                                あの時の柴田はいつもと違った何かを物語っているように感じられた。                                ……私には関係がない。                       だけれどもこのチラシが気になるから掲載された「Mタワー」に行こうと思う。

―2週間後― 

大きなタワーに向かって上下黒の目立たない服装をした男が走っている。その男のモジャモジャした髪の毛は跳ねていて面白い。その3メートルほど後ろを如何にも若者らしい格好をした男が走っている。上がシャツに、下がジーパン。走り方と服装のアンバランスさを物語っている。2人が大きなタワーの中に順々に入っていくと、急にスーツの男性が現れタワーの扉を締めカギをかけた。そしてスーツの男は周りを見渡し、走って街中に消えてしまった。     

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僕に才能はない
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