心にしみ入るドローンライトショー
以前の記事で触れた通り、UAEを中心にドローンライトショー(drone light show)演出を手掛けてきた『電磁螢』(Electrical Firefly)を解散しました(『【開閉会式で顕在化】エンターテインメント後進国日本の演出力不足』を参照ください)。
1,000機以上からなる「群ドローン」(drone swarm)による演出実績を持つ稀有な日本のドローンライトショー演出チームでしたが、『東京2020オリンピック大会』を目安としていたので祭とは無縁なまま祭の終わりとともに消え入ります。
そこで今回は置土産として私が影響を受けた忘れられないドローンライトショーを紹介することにします。
心にしみ入るドローンライトショー
私が忘れ得ぬドローンライトショーは(以前の記事『【ドローンライトショー】とは何か?』でも紹介した)テクノロジーアートと自然の境界を探究するオランダのアート集団『DRIFT』(Studio DRIFT)が2018年の「Burning Man 2018」(Black Rock City)で展示したドローンによる光のインスタレーション(drone light installation)『Franchise Freedom』です。
椋鳥の群飛
『Franchise Freedom』で使用されたIntelの自律型ドローン「Shooting Star」にはDRIFTが椋鳥(ムクドリ)の群飛を10年以上研究して開発したバイオロジカルアルゴリズム(biological algorithm)が特別に組み込まれ、600機からなる「群ドローン」(ドローンスウォーム)はAI制御の自律飛行によって再現不可能な一度限りの空飛ぶ立体彫刻を夜空に描き出して行きます。
無為自然を取り込んだ演出
この『Franchise Freedom』は作品分類的にはエンターテインメントショーではなく、パフォーマティブアートインスタレーション(performative art installation)あるいはパフォーマンスアート(performative artwork)になります。計算された演出にテクノロジーによる無為自然が組み込まれた日本庭園のような素晴らしい作品です。
『Franchise Freedom』
Studio DRIFT『Franchise Freedom』at「Burning Man 2018」
ドローンライトショーの世界へようこそ
蛍が消えてしまったあとでも、その光の軌跡は僕の中に長く留まっていた。目を閉じた厚い闇の中を、そのささやかな光は、まるで行き場を失った魂のように、いつまでもさまよいつづけていた。
僕は何度もそんな闇の中にそっと手を伸ばしてみた。指は何にも触れなかった。その小さな光は、いつも僕の指のほんの少し先にあった。
(村上春樹『螢』1983年)
ようこそ、「電磁螢」の世界へ