フォトグラメトリをした3Dモデルから意味を見出したい。 ー廃仏毀釈 その2ー
私はフォトグラメトリで生成した3Dモデルを単に愛でるのも好きですが、その3Dモデルから何らかの意味を見出したいとも思っています。このシリーズでは私が作成した3Dモデルのうち、石塔や石仏、石碑の3Dモデルから私なりに読み取れたこと、そこから仮定したことを綴っていきたいと思います。
そのシリーズ1回目のテーマは「廃仏毀釈」です。
以下の記事は@musimarusanが個人サイト(現在は廃止)に掲載していた内容を基に改めて考察を行い再構成をしたものです。
1.西東京市下保谷天神社の題目塔2基について
このシリーズのその1で触れた西東京市北町の路傍の題目塔から東へ500mほど離れた位置に天神社という神社があり、この境内に二基の題目塔が建立されています。図1はその二基の様子です。一方は高さが3mほどですが、もう一方の高さは1mはなかったと思います。
これら二基の題目塔は西東京市の指定文化財として登録されていまして当市サイトの指定文化財ページでは次のような一文で廃仏毀釈との関係に触れています。
そして、現地の説明看板では図2の記述がされていまして、次のように、廃仏毀釈が起こったとき当時の人々はこの二基の題目塔を破壊や損傷から守ったことが記されています。
2.題目塔の3Dモデルを確かめる
さて、この二基の題目塔の3Dモデルを確認したいと思います。始めに背が低い方の題目塔を確認します。以下のリンク先でこの題目塔のテクスチャーなし3Dモデルを観ることができます。リンク先の3Dモデルでは最初に南側の面を向いています。
この題目塔には南側の面にしか文字は刻まれていません。図2は3Dモデルの南面と読み取れた碑文の内容です(上記説明看板には『九月造立』とありますが、一番右の文字は私には「三月」に見えました。九月造立は正しいのでしょうけどどうして「三月」なのでしょう)。「成就□」の□は読み取れなかった文字を表しています。3Dモデルでは碑文が刻まれた南面はもとより、どの部位にも損傷はないように見えます。図2のほか高解像度の南面と北面の画像のリンクも貼っておきますのでじっくりご覧下さい。
次に背の高い方の題目塔を確認します。こちらも以下のリンク先でこの題目塔のテクスチャーなし3Dモデルを観ることができます。リンク先の3Dモデルでは最初に南側の面を向いています。
南面に「南無妙法蓮華経」という文字が刻まれていることが見て取れますが、低い方の題目塔に刻まれていたようなその他の文言は刻まれていないようです。また、南面以外の面には文字は刻まれていないように見えます。こちらも高解像度画像のリンクも貼っておきますのでじっくりご覧下さい。
このようにこの天神社に造立されている題目塔は、本シリーズその1で紹介した題目塔と異なりほとんど損傷、損壊がないことが分かります。図1の説明板にもあるように廃仏毀釈の世にあっても三十三番神(明治以前の神仏習合の信仰)を信仰するこの地域の人々によって守り抜かれたことがうかがい知れます。
西東京市の下保谷地区にはあと2基の題目塔があります。次回はこの2基の題目塔の損傷の状態を確認したいと思います。
2024年7月17日追記
文中で高解像度画像やScanniverseで作成した動画へのリンクへの説明をした箇所がありますが、現在、レンタルサーバの運用を見直しをは図っているため、取り消し線をつけてリンク切れにしています。