Is This Itの衝撃から20年、The Strokes特集
00年代における一大ムーブメント、"ロックンロール・リバイバル"を巻き起こすきっかけとなった衝撃作、"Is This It"のリリースから今年7月で20周年となったThe Strokes(ザ・ストロークス)。
今回は、彼らの楽曲をまだ聴いたことがないという方へ、入門となるような記事を書いていきたいと思います。
■The Strokesの魅力とは
00年代に巻き起こった一大ムーブメント、"ロックンロール・リバイバル"。その最大の立役者こそがThe Strokesです。
ニルヴァーナの解散以降、ロック・シーンの中心に居たのはUKブリットポップ勢。90年代後半、USのロックに翳りが見える中、暗雲を断ち切ったのが彼らの2001年リリースのデビュー作"Is This It"でした。
「これが求めている音楽か?」と言わんばかりのアルバムタイトルと共に、全世界のロックファンが渇望していた、シンプルでストレートなロックンロールの形を、より現代的な解釈によって世に示したのです。
本作が衝撃作として迎えられ、ロックンロールの歴史を塗り替えることができた要因の一つとして、極限まで削ぎ落とされたミニマルなサウンドが挙げられます。
ボーカル、ギター、ベース、ドラム、それぞれがぶつかり合うことなく気持ちよく分離した極めてクリアな音像が、都会的で洗練された印象をリスナーに与えました。
一見、無骨なようでいて、実は極めて精緻で巧みな音楽だったのです。
また、彼らがカリスマ的存在になった要因として、スタイリッシュなファッション性も挙げられます。その面についてはギタリストのアルバート・ハモンドJr.の影響が大きかったようです。とにかく、彼らはクールなビジュアルまで含めてその存在感を獲得していったのでした。
The White StripesやThe Libertinesといったバンドらと共にムーブメントを牽引し、後のArctic MonkeysやFranz Ferdinandにも大きな影響を与えることになります。
20年の時が経った現在においてもなお色褪せることなく、インディーロックの理想的作品であり続ける"Is This It"。その後も5枚のスタジオアルバムを世に送り出してきた彼らの軌跡を辿って行きたいと思います。
■プロフィール/経歴
活動拠点:アメリカ合衆国🇺🇸ニューヨーク
活動期間:1998年〜現在
ジャンル:ガレージロック
オルタナティブロック
2001年、1stアルバム『Is This It』で鮮烈なデビューを飾ります。シンプルで洗練されたストレートなロックンロールサウンドによって、ロックの歴史を塗り替えた衝撃作。
2003年、2ndアルバム『Room On Fire』をリリース。1stに次ぐ人気の高さを誇る作品だと思います。基本的には前作の方向性を引き継いでいますが、情報量が増え、より音のバリエーションが多彩になった作品。
3年のスパンを経て、2006年に3rdアルバム『First Impressions of Earth』をリリース。バンド史上最もヘビィで、ハードで、主張の強いアグレッシブで攻撃的なバンドサウンドが特徴。
そこから5年の時を経て、2011年に4thアルバム『Angles』をリリース。過去3作は基本的にボーカルのジュリアン・カサブランカスが一人で全ての楽曲を制作してきたのに対し、本作はメンバー全員が楽曲制作に携わったことも影響してか、過去作までとは雰囲気がガラッと変わり、どこか実験的で新境地的なサウンドアプローチとなっています。
2013年、5th『Comedown Machine』をリリース。前作に続いてメンバー全員が楽曲制作に携わった本作。事前のプロモーションが無く突如発表されたということも影響してか、セールス的には過去作を上回ることはできませんでした。
3年後の2016年、EP『Future Present Past』をリリース。そこから次作まで、またしても4年という歳月が経過します。
そして2020年、実に7年ぶりのフルアルバムとなる6th、『The New Abnormal』をリリース。ジュリアンが一人で大半の楽曲を制作するという元々のスタイルに戻った本作では、初期の抜け感にスケール感が加わり、グラミー賞ロックアルバム部門を受賞するなど、全盛期ストロークスの復活を印象づける作品となりました。
■勝手に全アルバム格付け
※あくまで私個人の独断と偏見です。どの作品から聴き進めるかの参考までに。
最高傑作の"S"にはもちろん『Is This It』。これは多分、誰がやっても同じ結果になるであろう問答無用の大名盤。入門は間違いなくコレです。
問題は"A"以降ですが、私は最新作の『The New Abnormal』を次点として推したいと思います。全9曲のクオリティが総じて高く、メロディが良いんです。単純な原点回帰というわけでもなく、スケール感が進化してるという点もポイントですね。個人的には、新たな代表作の誕生と言っていいと思います。
同じく"A"に、人気作『Room On Fire』。これも1stの延長線上な感じで非常にクオリティが高い作品です。ただ、情報量が増えて多彩になった分、都会的で洗練されたサウンドという点では1stからやや減退したかなという印象です。
"B"に『First Impressrons of Earth』。これも一つ一つの楽曲のクオリティ的には"A"でもおかしくない内容なんですけど・・・完全に好みの問題ですね。個人的に、ストロークスには攻撃的サウンドよりも洗練された感じを求めてしまうというか。あとは14曲52分と、彼らの作品の中では若干ボリューミーなのと、作品全体の統一感という観点から少し辛めの位置になりました。
"C"は『Angles』。これはむしろ逆に"D"でもおかしくない内容。新しい方向性で、面白い楽曲もありますが、全体的な集中力に欠けるというか、所々、正直何がしたいのかよく分からないような曲があるんですよね。ただ1〜2曲目は凄くカッコいいです。
"D"は『Comedown Machine』。作品全体の集中力という意味では、"Angles"より上です。#4や#6など、カッコいい楽曲もあります。ただ、"Angles"ほど開き直って変な方向に突き抜けるわけでもなく、個人的にどこか中途半端な印象があり、この位置になりました。
■名曲紹介
「Last Nite」
1stに収録されている彼らの代表曲。彼らの音楽性を象徴するような楽曲ですね。
「Brooklyn Bridge To Chorus」
最新作(6th)に収録。ストロークスらしさ全開ながらも、どこか新境地なカッコよさ。
■最後に
2010年代に入ってからは、正直その存在感が薄れてしまったことが否めなかった彼ら。
そしてそれを吹き飛ばすかのような会心作『The New Abnormal』。
今年は衝撃のデビューから20周年。
2020年にはフジロックGreen Stageへの出演が決まっていたにもかかわらず、残念ながら中止になってしまいましたが、またいつか訪れるであろうその日を心待ちにしながら、今一度彼らの軌跡を辿ってみては如何でしょうか。
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余談になりますが、ストロークスが好きな人は、日本人の4人組バンド、DYGL(デイグロー)の1stアルバム『Say Goodbye to Memory Den』(2017年リリース)を是非聴いてみてください。ストロークスからの影響が色濃く反映されたロックアルバムに仕上がっていますよ。何しろ、アルバート・ハモンドJr.がプロデュースしているのですから・・・オススメです。
↓興味を持って頂けたら、今年リリースされた3rdのレビューも読んで頂けると嬉しいです。