
3〜4月 新譜レビュー
もう5月も終わりですが、今更ながら3〜4月リリースの新譜レビューを書いていきます。
順番はリリース順です。
Altın Gün『Aşk』

トルコ系オランダ人の男女ボーカルを擁する6人組サイケロックバンド、通算5作目。彼らのルーツである60〜70年代のトルコ民謡を現代的に再解釈し、サイケ、ファンクの要素を付加した独自の音楽性を展開してきた。エキゾチックな独特のサウンドが癖になることは元より、ロックバンドとしての躍動感、グルーヴ感に更に磨きがかかったダイナミックな内容となっている。期待値を超えてきた一枚。
Boygenius『the record』

Julien Baker、Phoebe Bridgers、Lucy Dacusという、各々がソロとして既に大きな成功を収めている 3人の女性SSWによるスーパーユニットのデビュー作。感情豊かに力強く歌い上げるジュリアンの"$20"、繊細な歌声で美しく囁くフィービーの"Emily I'm Sorry"、聴き手を優しく包み込むように語りかけるルーシーの"True Blue"と、それぞれの個性が際立つ3曲が2〜4曲目に並んでいるが、その個性が互いにぶつかり合うことなく自然に調和しているのは、バックに効果的なコーラスワーク、ハーモニーがあってこそ。6曲目の"Not Strong Enough"は、多くの人々に強烈なインパクトを与えるであろうアンセム的楽曲。エネルギーに満ち溢れた一枚。
Daughter『Stereo Mind Game』

ロンドンの3ピースバンドによる7年ぶり3作目。ボーカルElena Tonraの憂いを帯びた歌声と、儚く美しいメロディ。ドリームポップ/シューゲイザーな空気感を纏いながらも、バンドサウンドが前面に出ており、あくまでもインディーロック然とした佇まいなのが良い。メランコリック過ぎないというか。Men I TrustやAlvvays好きなら刺さるであろう一枚。
Fenne Lily『Big Picture』

UKブリストル出身のSSW、Fenne Lilyの通算3作目。前作"Bleach"では過去の恋愛について歌い、どこか悲しみを伴うムードであったのに対し、本作ではNYに活動拠点を移したという彼女の現在進行形の恋愛の過程で書かれた楽曲が並んでおり、繊細なフォークサウンドの中に、ポジティブな響きを確かに感じ取ることができる。丁寧なソングライティングと、温かみに溢れた優しい音像が魅力の一枚。
Feist『Multitudes』

カナダを代表するSSW、Feistの6年ぶり6作目。父親の死と、娘の誕生という大きな変化を経て制作されたという本作だが、相変わらず歌唱における表現力が冴え渡っている。1曲目の"In Lightning"と、9曲目の"Borrow Trouble"以外はほとんどアコギ主体の静かな楽曲のみで構成されているが、表情豊かな歌声によって、その音像は非常に色彩豊かに感じられる。上記の2曲も良いアクセントになっている。
The National『First Two Pages of Frankenstein』

前々作で全英1位、全米2位、グラミー賞を獲得し、USインディーシーンにおける絶対的な地位を築いたThe Nationalの通算9作目。Taylor Swift、Phoebe Bridgers、Sufjan Stevensという華やかな面々がゲスト参加。私自身はこのバンドの作品を聴くのは初めて。ベテランの円熟味、職人の渋い技、といったワードが思い浮かぶような、落ち着いた雰囲気の楽曲が中心。派手さは無いが、じっくりと聴かせられるだけの優れたソングライティングだとは思う。地味になり過ぎないような、絶妙なラインを突く最低限のサウンドメイクも施されている。堅実で大人なインディーロック。
以上の6枚です。
堅実な良作が多かったという印象ですが、強いて1枚挙げるなら、やはりインパクトの面でboygeniusは強烈なものがありました。
Daughterも長く愛聴することになりそうだし、Altın Günも想像を超える進化を見せてくれました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。