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新作"Thirst"リリース!DYGLのキャリアを振り返る
今回は、今月4thアルバム"Thirst"をリリースしたばかりの日本のインディーロックバンド、DYGL(デイグロー)のキャリアを振り返っていきたいと思います。
■結成
2012年、大学のサークル内で結成。
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写真左から
下中洋介(G)
秋山信樹(Vo, G)
嘉本康平(Dr)
加地洋太朗(B)
※ギターの下中を除く3人については、DYGLの活動と並行し、別プロジェクトであるYkiki Beatでも活動していた。(2016年末をもって活動休止)
まず、DYGLの音楽性の核を担う人物、フロントマン秋山のパーソナルな部分に焦点を当てていきたい。
彼は、中学生の頃に初めてバンドを組むと、UKのガレージロックに出会い、The Viewや Razorlight、The Libertinesといった、00年代初頭のガレージロック・リヴァイヴァルのムーヴメントを巻き起こしたバンド達に心酔したのだという。
少しでも彼が追い求めるUKロックサウンドに近づけるべく、大学では英文学を専攻し、海外のリスナーでも違和感なく聞けるようなナチュラルな作詞のノウハウ、ネイティブと同水準での発音を徹底的に学んだそうだ。
そんな秋山の音楽に対するストイックな姿勢があってこそ、DYGLというバンドが持つ、どこか飄々とした雰囲気、独自の存在感が成立しているのだと私は感じている。
■EP『Don't Know Where It Is』
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バンドが一躍注目を浴びるきっかけとなったのは、2016年5月にリリースした6曲入りEP『Don't Know Where It Is』。ガレージロック・リヴァイヴァルからの影響を色濃く反映したギターロックサウンドと、優れたソングライティングが高く評価された。
■1st AL『Say Goodbye to Memory Den』
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翌年の2017年4月には、The Strokesの天才ギタリストAlbert Hammond Jr.をプロデューサーとして迎え制作した1stアルバム、『Say Goodbye to Memory Den』をリリース。NYでレコーディングしたという本作は、前年のEPで見せつけたガレージロックサウンドを更に磨き上げた素晴らしい内容で、同年のフジロック・フェスティバルにも初出演を果たすなど、着実に飛躍を遂げた。翌2018年は精力的にライブ活動をこなしつつ、6月からは活動拠点をロンドンへ移した。
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■2nd AL『Songs of Innocence & Experience』
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2019年7月にリリースした2ndアルバム『Songs of Innocence & Experience』は、メンバー全員がロンドンで生活する中で多様な文化に触れ、そこで得たインスピレーションを基に創作された作品である。サイケやプログレ、ポストパンクなどの様々なジャンルを消化し音楽性を更に拡げつつ、根本の部分には彼らのアイデンティティであるガレージロックの要素がしっかりと残されたサウンドに仕上がっている。また、本作を引っ提げてのツアーを敢行するにあたり、ロンドンでの生活は終了。結果的に1年間の滞在となったが、彼らのバンド人生にとって大きな意味を持つ期間となったことは間違いない。
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■3rd AL『A Daze In A Haze』
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2021年8月には3rdアルバム『A Daze In A Haze』をリリース。本作を制作するにあたっては、Green DayやSUM41、Blink-182といったUSポップパンクから、Hilary DuffやAvril Lavigne等のポップスまで、これまでの彼らの音楽性からは想像もしなかったようなジャンルの音楽を参照したという。そこには、かつてティーンを熱狂させた00年代初頭のロック・ポップスのムードを、今の時代なりに再解釈するというアルバムコンセプトがあったのだと秋山は語る。数多のインディーバンドがひしめく2010年代という時代について秋山は、「大失敗もしないけど大成功もしない時代」と評し、そんな中で「ライブでキッズが拳を突き上げてシンガロングできるような、突き抜けた楽曲が欲しい」という思いのもと、"Half Of Me"という楽曲を完成させる。彼らのキャリアにおいて一際目立つようなキャッチーさを秘めたこの楽曲についてはメンバー内でも賛否両論あり、「本当にDYGLとしてリリースすべき曲なのか」という葛藤も経て、最終的には「後悔はない。リリースして良かった」と振り返る。元々のソングライティング能力の高さ、メロディセンスにより一層の磨きがかかった、キャッチーで普遍的なロックアルバムとなった。
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■4th AL『Thirst』
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2022年12月リリース、通算4作目となる『Thirst』は、レコーディングとミックスをバンドメンバー自身が手掛け、メンバー4人全員で作り上げたというDIY精神溢れる一枚。
秋山は、様々なジャンルの引用元を一つの音楽として落とし込むという意味で、本作をミクスチャー的であると語っており、参考にしたアーティストとしてKing KruleやAlex Gらの名前を挙げている。それぞれ引用元は違えど、複数のジャンルをクロスオーバーしているという点で共通性を見出すことができる。そのコンセプト通り、これまで以上に情報量が増え、よりジャンルレスで音楽的深みを増した内容となっているように感じた。
ノイジーなギターロックにヒップホップ的なビートを取り入れた"Under My Skin"や、
"I Wish I Could Feel"は本作の顔。
更に彼らにとっての新機軸と言えそうな楽曲が"Dazzling"。ラップ的な淡々としたメロディと、溜め込んだフラストレーションを一気に吐き出すような攻撃的なバンドサウンドが交互に繰り広げられる。
勿論、元々のDYGLの良さであるメロディの良さは健在だ。切ないギターサウンドと共にメロディアスに歌い上げる"Road"や、繊細なギターフレーズが魅力の"Sandalwood"、"Loaded Gun"といった楽曲たちの小気味の良さにはDYGLらしさが詰まっている。
アルバムジャケットが表しているように、混沌としていてどこか掴みどころのないサウンドだが、角度によって様々な表情を見せてくれ、聴く度に新たな発見がある、そんなアルバムだ。
結果として、過去3作のどれとも異なる、全く新しいタイプの作品に仕上がっているが、決して堅苦しい内容ではなく、肩肘を張ることなく聴けるインディーロックアルバムだ。
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