レビュー Alvvays "Blue Rev"
今回は、カナダの5人組ドリームポップバンド、Alvvays(オールウェイズ)の新作"Blue Rev"のレビューを書いていきたいと思います。
Alvvaysといえば、2017年に前作をリリースして以降、リリースはおろか、近年はライブ活動さえも全く無い状態でした。あまりの音沙汰の無さに、心配したファンの方も多かったかと思います。長い期間に渡る沈黙の間、何があったのかについては最近のインタビューによって明らかになっていますので、その辺りにも触れつつ、簡単に彼らのキャリアについて振り返っていきたいと思います。
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2014年に1st『Alvvays』でデビューを果たし、ノスタルジックでドリーミーなサウンドと、ずば抜けたメロディセンスで一躍注目を浴びます。
2017年には2nd『Antisocialites』をリリース。この作品によって、現行ドリームポップの最高峰という地位が決定づけられた印象です。前作の良さはそのままに、よりドリーミーで洗練されたメロディを披露しています。
そこから次のリリースまでに5年という長い歳月がかかることになります。その期間に起きたことと言えば、ボーカリストのモリーの自宅からデモ音源が盗難に遭い、その翌日に洪水によってバンドの機材が壊滅状態になってしまったという悲惨な出来事。そこにコロナ禍も重なったとあって、バンドがいかに大変な状況であったかが伺い知れますね。しかし最近のインタビューで、上記の出来事がアルバム制作が滞ったことの直接的な原因ではないと、否定しています。現在は新メンバーも迎えて楽しくやっているようで、過酷な状況を乗り越えてくれたことにまずはホッとします。ファンとしては、このまま彼らの新作を二度と聴けないのではないかという不安に襲われたものです。バンド活動の再開は何よりのニュースですね。
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ここからは、新作『Blue Rev』について書いていきます。
まず最初に特筆すべきことは、Alvvays史上最もロック色の強い作品であるということ。My Bloody Valentineからも影響を受けたという、シューゲイザー要素の強いノイジーなギターサウンド。これまでよりもグッと主張が強くなったドラミング。非常にダイナミックで、疾走感のある楽曲が多いです。
このサウンド面での変化は、Big ThiefやAlabama Shakes、The KillersやThe War on Drugsなど、数々のアーティストの作品を手掛けてた敏腕プロデューサー、Shawn Everettの手腕よるところが大きいようです。彼は実験的なサウンドアプローチを駆使することで知られており、本作においてもそれを遺憾無く発揮していると言えるでしょう。
そのことは、最初に先行公開された、1曲目の"Pharmacist"を聴けばすぐに分かるかと思います。本作における名刺代わりの一曲と言えるでしょう。まるで洪水のようなギターノイズに、いつまでも身を任せていたくなるような陶酔感を覚えます。疾走感溢れるビートで一気に駆け抜けるこの楽曲は、猛々しくも瑞々しい、本作のサウンドがよく表れていると思います。
2曲目の"Easy On Your Own?"と11曲目の"Belinda Says"の2曲は、従来通りのAlvvaysの良さが最も出ている楽曲として双璧をなしています。メロディセンスが冴え渡る、王道のドリームポップ。思わず「おかえりなさい」と言いたくなるような、安心安定のAlvvays節です。特に"Belinda Says"は、個人的に2022年のベストソングとして挙げたいくらいです。
他に特筆すべき楽曲を挙げるとするならば、7曲目の"Very Online Guy"でしょうか。ノスタルジックなシンセの音色がどこか不気味な印象も与える楽曲ですが、この派手なサウンドを効果的に響かせる絶妙なラインを突いていると思います。この匙加減が素晴らしい。
ちなみにジャケットのアートワークは、ボーカルのモリーの幼少期の家族写真とのことです。この写真の背景にある「暗くて分厚い雲を背後から照らす光」こそ、本作のサウンドをよく表しているなあ、と感じます。4曲目の"Tom Verlaine"や、12曲目の"Bored In Bristol"といった楽曲から私はそれを強く感じました。今にも暗雲を吹き飛ばしてくれそうな、力強くて大きな光が背後に見えます。
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総じて言えるのは、1曲1曲の尺が短いものの、その分、中身は濃密だということでしょうか。
あまりのテンポの速さと目まぐるしさ、怒涛の展開に、一回目に聴いた時はついて行けない部分が少なからずあったのは事実です。本作は決して、純粋にキャッチーなだけの作品ではないと思います。ですがリスナーに強烈なインパクトを与えてくれるのは間違いないです。また聴こうと思わせる、惹きつける魅力に溢れていると思います。
早くも最高傑作との呼び声も高い本作。これを機に、これまでAlvvaysの作品を聴いてこなかったという方も、是非。
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