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楽器の音色をかみしめたい

音楽がなぜ心を和ませるのでしょうか?

それは音色だと思います。どの楽器も、声もですがそれぞれの音に色があり、耳から私たちの脳に伝わる際に、何か不思議な作用をするような気がします。

具体的な音楽作品でなくても、音を聞いて、心が洗われたり、感動したり、また発憤したり、怒ったり、色々な印象を受けます。それは音色の仕業なのです。きれいだな、と思える音色は人それぞれでしょうけど、色々な美しい音色を聞きたいものです。

以前ウィーンの音楽家達と一緒に国内を旅する機会があり、その時に彼らの音色に対する想像を超えたこだわりに接して本当に驚きました。

あるピアニストは、生徒にピアノを教える時、必ず最初に一音を一度だけ
弾く練習を繰り返しさせます。そしてその音の印象を伝えます。

「あなたは、どんな音を人に聞かせたいと思っていますか?」

「今の音はとても投げやりで乱暴です」

「とても悲しそうな音ですね」

などなど、抽象的なコメントを加えながら、生徒が一音に心をこめ、人に
伝えるという練習をするのです。当然鍵盤を弾く力加減、タイミングなどが
影響しますので音色も変わります。


あるホルン奏者は、音階練習の前に、一音一音づつ出す練習を徹底的に繰り返します。金管楽器は同じ指使いで、数種類の音が出ます。倍音効果です。その機能を利用し音階練習する前に、全部の音を一音づつ、唇と息の強弱だけで出す練習をするのです。全部の音をしっかり出せないうちに音階の練習をしてはいけないというのです。

楽器を練習するとき、初心者はどうしても音階に気をとられます。指使いのスピード、音を流れるように演奏することにあこがれます。でも、楽器で最も大切なのはそれぞれの音を正確に、そして美しく出すこと。

ほんの一例ですが、このようにしてプロの演奏家は自分の音色に相当気をくばっているのでしょう。

私は、彼らが醸し出す楽器の音色をかみしめて、堪能しつつ音楽を聞いてみようと思います。

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