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キャシーの歌(ケイシーの歌)Kathy's Song サイモンとガーファンクル 「サウンズ・オブ・サイレンス」第4曲目

ポール・サイモンは、アート・ガーファンクルと「サイモン&ガーファンクル」とう名で発表したデビューアルバム「水曜日の朝、午前三時」がわずか3000枚しか売れなかったため、失意で英国へ一人旅立ちました。ソロシンガーとして英国で活動したのです。ガーファンクルは大学へ戻ります。

サイモンは英国でキャシーという女性に出会います。

この歌「キャシーの歌」はポール・サイモンがソロ・シンガーとして英国を回っていた頃の作品で、彼のソロアルバム「ポール・サイモン・ソングブック」にも収録されています。

ポールのギター1本の伴奏での演奏。そしてフォークギター奏法の基本「フィンガーピッキング」のお手本ともいえます。ギターの動きだけでも十分聞き応えのある音楽といえるでしょう。

ポールの淡々とした歌いぶりがいい味を出しています。押さえた情熱とでも表現しましょうか。それにしても静かな歌ではありませんか。熱烈なラブソングなのに、この静かさは何だろう?

I hear the drizzle of the rain
(霧雨の音が聞こえる)
Like a memory it falls
(まるで想い出が降るかのように)
Soft and warm continuing
(優しく暖かく続き)
Tapping on my roof and walls.
(僕の屋根や壁を叩いている)

Lyric by Paul Simon 迷訳:musiker(以下同じ)

こぬか雨が降る(drizzle)という言葉を今回初めて知りました。辞書を調べると「しとしと雨」とも記載があります。この優しい雨が降る、部屋で一人歌を書いているポールの姿が思い浮かびます。場所はホテルの一室かどこかでしょう。

2番では、ポールの心がその部屋にではなく、英国にあることを歌いますが、その中で私が好きなのは次の言葉です。

And from the shelter of my mind
(僕の心の隠れ場から)
Through the windows of my eyes
(僕の目の窓を通じて)

「目の窓」という言葉が、英語の「音」として新鮮に響きます。

1番、2番の長いプロローグを経て、3番でようやく恋人への想いが登場してきます。彼女への熱い情熱は、

My thoughts are many miles away
(僕の想いは何マイルも彼方にある)

という表現ですべてがわかります。そしてこの「想い」は、彼女に寄り添っているのです、一日中。

ところがその想いの歌が、4番では書きかけの歌の事に及びます。

Writing songs I can't believe
(歌を書く、それだけでいいのか?)
With words that tear and strain to rhyme.
(韻のため言葉を引き裂き、引っ張ることが)

彼は歌が作れなくて悩んでいます。詩を書く時は、いろいろなことばを組み合わせます。特に韻のためには並々ならぬ苦労をするはずです。その作業自体を信じられなくなってもいるのです。まるで「言葉のゲーム」であり、そこに真実など存在しないのでは、という疑問も感じているのでしょう。そうなった原因はすべて恋人に対する「愛おしさ」という雑念(?)のせいもあるのですが、、。

ついに自分の書いた詩についに疑問を感じてしまいました。自分が信じて書いたはずの詩が、いま自分の思いとは別の様相を帯びていることにショックを受けます。その絶望、そして最後にこう結びます。

The only truth I know is you.
(僕の唯一の真実は君だけ)

エピローグのような存在の6番は、また雨が登場します。私の持っているCDの歌詩の翻訳では、不思議な話ですが、訳文が中途半端になっていますので、私なりの翻訳で次に掲載します。

And as I watch the drops of rain
(そして、、僕は雨の雫を見ている)
Weave their weary paths and die
(疲れ果てた小道たちが織り合わされては消えていくのを)
I know that I am like the rain
(きっと僕は雨のようなもの)
There but for the grace of you go I
(優しい君がいなければ、雨の雫のようになりそうだ、、)

歌が終わり、歌の1コーラス分のギターによるエピローグが演奏されます。フィンガーピッキングを伴いながらメロディが奏でられますが、実に力強く、この歌の締めくくりにぴったりです。最後の優しげなコードストロークの締めくくりは「美しい」としか表現しようがありません。

最初に、「静かな愛の歌」と書きました。でも、静かな中に、想像以上の強烈な愛情が感じられます。そこには何の装飾もありません。純粋な想いが聞いている我々にストレートに伝わってくるのです。


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