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ベートーヴェン ウェリントンの勝利~戦争交響曲
怪作「戦争交響曲」をあなたは知っていますか?
皆さんはベートーヴェンが残した愚作といわれる有名な「戦争交響曲」をご存じでしょうか。たぶん知っている人は少ないと思われます。よほどのベートーヴェンファンじゃなければきっと知りません。
これは楽聖と呼ばれるベートーヴェンの作品としては、できれば表沙汰にしたくない俗物的作品だといわれています、その筋の方々の間では。
フランス軍に勝ったイギリスを讃美するため、いえ、実はご機嫌をとることで、ひと儲けをたくらんだメルツェルという、今風にいえばプロデューサーから依頼を受け、この曲の創作にあたったのです。
オーストリアはフランスと10年間戦争を続けていました。国内は疲弊し経済的にも精神的にも打撃をこうむりました。そんなさなかオーストリアの同盟国イギリスが有名なウェリントン将軍の指揮によりスペインで勝利を勝ち取ります。
オーストリア中がこの勝利を喜びました。そこで、もともとメルツェルが作った三流の音楽をベートーヴェンが編曲し、「ウェリントンの勝利~戦争交響曲」ができあがったというわけです。
愚作といわれつつも、れっきとしたベートーヴェンの音楽
まあ、愚作かどうかは聞き手の判断に任せるべきでしょうが、これは編曲とはいえ、れっきとしたベートーヴェンの作品の風格です。聞けば誰もがベートーヴェンの曲だとわかるだけのパワーにあふれる怪作。
編成も大がかりで、メインのオーケストラとは別に左右にイギリス軍、フランス軍役の軍楽隊、大砲、銃、太鼓、信号ラッパまで登場させるという、さながらベルリオーズの「幻想交響曲」や、マーラーの「一千人の交響曲」を思わるほど大がかり。大砲の音を伴う戦争の演出は強烈で、19世紀初頭を描く映画音楽に使うと、うってつけかもしれません。
メルツェルの狙いは大当たり。ウィーン市民はフランス軍への恨みを晴らす爽快な音楽として大いに受け入れます。演奏会も何度も繰り返し開催されます。メルツェルもベートーヴェンも大儲けです。今でいえばミリオンセラーを出し、一生食べていけるだけのお金を得るようなもの。
貧困にあえいでいたベートーヴェン、音楽界からつまはじきにされつつあったベートーヴェンの名声はこの曲をきっかけに絶頂を迎え、世に知られることになるのです。きっかけが、後に愚作と揶揄されるこの作品であったことが皮肉な運命ですが…。
俗物化したベートーヴェンの行く末 世間は甘くなかった
いわば俗物と化したベートーヴェンです。神聖な音楽の巨匠の別の顔ですから、ベートーヴェン信望者たちは見て見ぬふりをしたいでしょう。でも、私は、こんなベートーヴェンの一面こそが、彼の音楽のパワーの源でもあると解釈しています。
私は、聖人君子でない彼が好きです。
さて、ベートーヴェンはこの金儲けの法則の味をしめ、この後、とことん俗物の音楽家としてかなりの実益を得ることになります。しかし、時流は俗物をいつまでもチヤホヤするほど甘くはありません。禁断の果実を食べたベートーヴェンを待っていたのは厳しい世間の荒波でした。
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