「クラウディ」 Cloudy/サイモンとガーファンクル第3作アルバム 「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」3曲目
100マイルのヒッチハイクというと、どれくらいの距離になるんでしょうか。
1マイル=160メートルですから、160,000メートル=160キロメートル。
「クラウディ」とはご存じの通り、曇り空のこと。梅や台風の季節のあのどんよりとした空には、どうしても憂鬱にさせられます。そんな雲をモチーフとするこの歌ですが、とても爽やかで美しい歌声で歌っています。
ギターのはじける響き。澄んだベルの音。メトロノームの音のようなリズム楽器の前奏に続いて聞こえる文字通り澄んだハーモニー。
とっても覚えやすいメロディです。思わず口ずさみたくなります。
二人は(あるいはポールの声の多重録音?)ユニゾンで歌を続けます。とても息が合い、そして美しい。
sometimes~のあたりの、まさに憂鬱さの歌声。hich-hike a hundred milesの軽快さ。歌にかぶるガーファンクルのバックコーラス。クリアな声に、うっとりさせられます。
冒頭で「なんと雄大な例え」と書きました。けれども、これは憂鬱さの度合いの高さを表しているような気がします。それほどうんざりする長い距離のヒッチハイク。うんざりしているのは、ずっと晴れない空模様、そして自分の心なのでしょう。
「ぼろをまとった子供」という表現は、妙に微笑ましく感じます。10歳位の少年が、一所懸命、車が止まってくれるよう、指をたて微笑む光景が目に浮かびます。
第2番は、心の中の曇り模様を表現します。
次に突然トルストイというロシアの作家の名前とJ.M.バリー作「ピーターパン」に登場する妖精の名前、バークリー、カーメルという地名との対比で、とてつもない距離感=遠さ、長い時間を表します。
トルストイからティンカー・ベル
バークリーからカーメル
ポケットの中には、撮った写真
そして死ぬほど退屈な時間
続く第3番冒頭はこの歌のまさにクライマックス。
ベルの音、軽妙なギターに乗り、淡々としかも美しく進む歌、ユニゾンにバックコーラスという組み合わせで続いてきた歌は、ここでようやく二人のハーモニーとなります。いつもより単純なコーラスですけれど、絶妙な呼吸はさすがです。
再びリズミカルな歌声へと戻ります。
それにしても、ガーファンクルの高音は美しい。サイモンの物憂げな歌いぶりも味がありますしね。
「クラウディ」は「パセリ・セージ・ローズマリー&タイム」の収録されただけの地味な歌で、ファン以外の耳には馴染みの薄い曲です。わずか二分と少しの短い歌。
「曇り」をモチーフとしているわりには、この爽やかで流々としたメロデとハーモニーを聞くだけで、心洗われる気がします。オススメです。
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