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重要なコンセプトアルバムの発表 サイモンとガーファンクル第4作アルバム「ブックエンド」(1968年)

サイモンとガーファンクル第4作アルバム「ブックエンド」は、1968年に発表されました。

ジャケットはモノクロで、二人がこちらを見ているとても印象的なショットが使用されています。

タイトルもジャケット下部に細めのゴシック体で

BOOKENDS / SIMON & GARFUNKEL 

と白抜き文字で記載があるのみの。CDで見るとさほどではありませんが、LPレコードジャケットの大きさ(30cm×30cm)で見ると相当インパクトがあります。また、細かいことですが、CD版の写真は青みがかっていて、LPに比べると陰影も飛び気味。少しのっぺらぼうに見えます。LPの方が深みのある写真に印刷されています。紙質のせいもあるでしょうが。

A面~この組曲が語るもの

アルバムの第1曲目「ブックエンドのテーマ」。ジャケットの印象がそのまま音楽として奏でられているようにギターのシンプルなソロで静かに始まります。

このみずみずしい音が語るもの。それはとてつもない重いテーマでした。「人生、そして老い」という。

以下、2〜7曲目の概要を紹介します。

第2曲目「我が子を救いたまえ」では、飛び降り自殺をしようとする若者を、大騒ぎしながら見ている第三者、泣き叫ぶ母親、騒動にうんざりしている警官の様子などが、映像的に描写されます。どこかがおかしくなってきている、人間社会は発展し進化しているはずなのに、何かがずれている。ドラッグに走る若者、子供を押さえきれなくてうろたえる親、規則で縛ろうとする社会、飛び降り自殺をまるでショーのように見ている野次馬。
 
第3曲目「アメリカ」は、若いカップルのバス旅行を歌っています。二十歳
前後の想定(?)による男女の無邪気で微笑ましいやりとりをポールは優し
い詩で語ります。三拍子のリズムにのったメロディが歌の調子と見事にマッ
チしています。そしてどこか神秘的な音楽にもなっています。歌の最後では、主人公は自分を見失い悩んでいることを告白しますが彼女は眠っています。ひとりごと、、。でも最後では繰り返し歌います。「みなアメリカを探しに来た」、、、と。何かに悩み、何を求めているのか誰も知らない。でも、前に進んでいる人間。「アメリカを探す」とは「自分を探す」という意味なのかもしれません。

第4曲目「オーヴァーズ」 中年の夫婦がすれ違いの気持ちになってもなお
共に生きている矛盾。寝室を共にすることもなく、廊下ですれ違っても笑み
を浮かべながらも、本心から笑うことはない。サッカリンのように常習性だ
けのような関係。もうおしまいにしよう、と何度も思うのに、主人公は結局
そう考えるのをいつも途中で投げ出し、そのまま冷え切った関係を続けてい
く。

第5曲目「老人の会話」 老人たちの話を聞けば聞くほど悲しくなります。
彼ら皆に輝かしい人生があったはずなのに、今は家族とではなく、同年代の
人々と一緒の施設での生活。彼らの自慢は子供たちの写真。この施設にいる
境遇をあきらめているものの、どこか哀しみを秘めている。もう社会では自
分たちを必要とされていない。残りの人生、ただ日を過ごすだけなのを知っ
ている。そんな哀しみを、、、。

そしてこの「組曲」のクライマックスである第6曲「旧友」では、数十年後、共に年老いた友人(あるいは恋人、夫婦)を想像し悲哀を込めて語り、やがて、冒頭の「ブックエンドのテーマ」のメロディに歌詞が付き、過ぎ去る時への哀愁と哀しみを歌う第7曲「ブックエンド」へ進みます。

この2曲こそ、このアルバムの重要な位置づけ、いや、もっといえば、サイ
モン&ガーファンクルの全部の歌の中でも非常に重要な作品であることは、
疑う余地はない、と私は思っています。

LPレコードA面に収録されたこれら7曲は、第1曲「ブックエンドのテーマ」と第7曲「ブックエンド」が、2〜6曲を題名のとおりブックエンドのように挟み、組曲として表現されています。当時静かに流行り始めたコンセプトアルバムのひとつ(複数の楽曲がひとつのテーマを共有し、それがアーチストのメッセージとなっています)。

次回から、第2曲〜第7曲を詳しく紹介していきます。

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