第1週「初めてのエール」#天国と地獄序曲
NHK連続テレビ小説「エール」第1週3話に登場した曲です。
♪ジャック・オッフェンバック作曲 天国と地獄序曲(冥界のオルフェから)
ドラマでは父が買ってきたレコードの音楽に夢中になりながら、一方で運動が大の苦手の裕一。運動会当日の徒競走、裕一はビリでスタートした上に、転倒し足も痛めてしまいました。そんな時、藤堂先生が急ぎ連れてきた女子生徒たちのハーモニカの演奏に励まされ、裕一は見事ゴールまで走り切ることが出来たのでした。この時、裕一は音楽の力を感じたのでした。
徒競走など運動会でおなじみのあの曲、あの曲についてお答えします。
「天国と地獄序曲」は、ドイツで生まれフランスで活躍したジャック・オッフェンバックが作曲した30作目のオペレッタ「冥界のオルフェ」の中のいろいろな曲を繋ぎ合わせてメドレーにしたものです。いくつかのバーションが存在しますが、ウィーン公演のために、カール・ビンダーが編曲したものが、こんにちでは最も良く演奏されます。
「冥界のオルフェ」は、ギリシア神話「オルペウスの悲劇」を元にしたグルッグのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディです。グルッグのオペラは、夫婦の純愛を描いたハッピーエンドの物語ですが、「冥界のオルフェ」は、お互いに浮気をしている倦怠期の夫婦のドタバタ劇を描いています。現代を風刺し、笑いと皮肉満載の、フランスならではのオペレッタと言えるでしょう。
「天国と地獄序曲」は3部構成です。
第1部が明るく軽妙な音楽。クラリネットやオーボエ、チェロ、フルートのソロが楽しめます。
第2部は、一転嵐のような音楽ではじまり、ワルツ風なメロディが心地いい音楽。バイオリンのソロが印象的です。
第3部は、有名なギャロップ!オペレッタのフィナーレで、天国と地獄の神々が、オールスターキャストで乱痴気騒ぎをするシーンの音楽です。神々がバカ騒ぎをするなんて、考えただけでも可笑しいですね。曲は、弦楽器と木管楽器のかけ合いからはじまり、次第に、有名なカンカンのメロディが出現してきます。このメロディは、“3時のおやつは~”のCMや、運動会で使われる曲として耳馴染みがあると思います。
小さい頃の刷り込みはすごいもので、どれだけクラシックを学んでも、僕にはこのメロディが運動会の音楽にしか聞こえません。
興味を持った方は、是非、オペレッタを観てみてください。
ミュージックソムリエ:藤井 憲治(指揮者/アートプロデューサー)
NHK連続テレビ小説「エール」 (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00、土曜日は1週間を振り返ります。その他NHK BSプレミアム、NHK BS4Kでもオンエア中です。) *放送予定 3月30日〜9月26日