2024年2月29日に、タワーレコード渋谷店が大規模な改装工事を終えて、リニューアルオープンした。地上8階、地下1階の巨大な建物は、世界最大級の店舗であり、今や外国人観光客が訪れる人気スポットだ。ここでCDやアナログレコードを買って帰る観光客もいる。
今回のリニューアルの対象は、アナログレコード専門店『TOWER VINYL SHIBUYA』、洋楽、クラシックのジャンル。世界的な人気を集めるVINYL(レコード)フロアとともに、洋楽とクラシックフロアの拡充。
音楽の聴き方の主流が、デジタルになっている中でのフロア改修とラインナップの拡充。若者の街から国際観光都市へと進化していく渋谷に立地する店舗で、リニューアルの特徴と目指す方向性について、タワーレコード渋谷店 青木店長と広報部の谷河氏に伺った。
外国人観光客、シティポップ、VINYLの人気に胡座をかくのではなく
――本日はよろしくお願いします。タワーレコード渋谷店は、CDもVINYL(レコード)も扱っていますが、たくさんの外国人の方がお店に訪れているのを私もよく目にします。夕方ごろになると、ものすごく混んでいますよね。
――そうなんですね。リニューアルの大きな特徴の一つである、レコード専門店『TOWER VINYL SHIBUYA』ですが、コロナ期間中の2021年オープンしていますね。オープンしてからの感触はいかがでしたか?
――「レコードが流行っている」と言う言葉に説得力がある話ですね。最近は、アニメ関連作品のVINYL(レコード)も、注目されているそうですね。他にも傾向はありますか?
――リニューアルでは、VINYL(レコード)の旧譜(すでにリリースされている作品)の品揃えも強化していくとのことですよね。そのためには、VINYL(レコード)をレコード会社が再プレス(再製造)する必要もあると思います。働きかけなどもしていますか?
――レコード会社への働きかけ、そしてラインナップの充実は、お店からのムーブメントを起こすことに繋がるのかなと思います。それと、店内でのイベントやDJイベントなども強化されていくんですね。
CDは過去の産物ではないし、CDだけではない店舗づくり
――さて、今回のリニューアルでは洋楽・クラシックのフロアも拡充されます。縮小など寂しいニュースの方が多い中で、この決定には驚きました。まずはクラシックフロアのリニューアルについて、経緯などを教えてください。
――確かに。2000年代前半までは、クラシック専門フロアを構えた大型店もありましたが、縮小や閉店が多くなっています。その中で大英断をされたと思っています。
――高音質CDもありますものね。販売だけではなくて、ピアノを中心としたインストアイベントや高音質のストアプレイ(店内で聴ける音楽)など、店舗に足を運ぶことでできる音楽体験があるのは素晴らしいですね。
洋楽離れではなく、良いものには時代も国も関係ない
――洋楽が1フロアに集約され在庫数も強化されますよね。これは、やはり海外からのお客様に向けて作ったのでしょうか?洋楽のCDを拡充というのも驚きました。
――日本人からしたら、驚きのことです。その一方で 日本では、“洋楽離れ”という言葉が付きまとう印象もあります。青木店長は個人的にはどのようにお考えでしょうか?
――古いも新しいも国も関係なく、良いものは良いという考えの延長線のところに、そういったものがあるのかもしれませんね。
渋谷で40年以上 音楽好きが音楽好きのために作ってきた結果
――洋楽邦楽の垣根やターゲット層は日本の若者ということでは無く、もっと広い視点で見てみることが大事だと感じました。それと海外のお客様の反応や購買傾向が見られるのは、渋谷の強みかなと感じています。
――タワーレコードが渋谷に登場して40年以上が経ちました。店舗の場所は時代によって変わっていますが、渋谷の音楽カルチャーを語る時に外せない存在です。そして、渋谷には時代を彩った多くのCDレコード店が立ち並び、それらが切磋琢磨して大きな流れを生んできたように感じます。タワーレコード渋谷店は、他の店舗との差別化や独自のスタイルを築くことを意識し続けているのでしょうか?またその結果が、今回のリニューアルなのでしょうか?
サブスク時代に手触りのある商品を買うこと、売ることとは
――さて、今日は私(ミュージックソムリエ協会理事長 高安)のほかに、大学生が2名お話を伺いに来ています。彼女たちからの質問にもお答えをお願いできれば。最初の質問です。サブスク利用者が、特にコロナ禍で増えたと思いますが、そのような状況下でCDの買う良さは何でしょうか?
――CDショップ大賞では近年、ジャケットパッケージデザイン賞を創設しました。これは、ジャケットのデザインが素晴らしい作品に授与する賞です。例えば、YOASOBIの『THE BOOK』『THE BOOK2』の初回限定盤が受賞していますが、これはバインダーのような凝ったデザインでした。CDは以前ほどの大量販売ではないと考えると、付加価値をつけたグッズのような、ファンアイテムの1つのような流れは加速しているのかなと思います。
――お客様の傾向などを間近で見ているからこそ、話せることですね。音楽好きが、音楽好きのお客様の喜ぶことを実行したことが、グローバルな人気を獲得した結果なのかもしれませんね。“世界最大級のCDショップ”というと、量に視点が向かってしまうこともありますが、それだけではなくグローバルな視点で音楽と出会える、情報発信基地になるように感じます。今日はありがとうございました。
新しい価値を創造する渋谷の実店舗はたくさん
今回は、タワーレコード渋谷店にスポットを当ててお話しを伺ったが、渋谷には、まだまだたくさんのCDショップ、レコードショップがある。渋谷スクランブル交差点に面したQFRONTにある「SHIBUYA TSUTAYA」は、4月25日にリニュアールオープン予定だ。
「CDショップへ最後に足を踏み入れたのは、一体いつだろうか?」と思う人にこそ、渋谷の店舗の雰囲気やお客様の様子を見てもらいたい。CDなどのパッケージ商品の新しいあり方、店舗のエンタテイメント性を体感して頂けると思っている。
また、CDショップ大賞の授賞式が3月8日(金)14:30からタワーレコード渋谷店にて開催される。誰でも観覧可能なので、新しい音楽体験の一つとして遊びに来て頂ければ。(詳細は下記参照)
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YOASOBI『THE BOOK』『THE BOOK2』のパッケージ制作秘話に関するスタッフインタビュー。
編集:石井由紀子(ミュージックソムリエ)
取材協力:井手満菜・白神爽香