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最終週「エール」「『エール』コンサート」

NHK連続テレビ小説『エール』最終回は
「『エール』コンサート」をNHKホールから!

古関裕而さんの数々の名曲を、ドラマの出演者たちが歌いつなぎました。
司会はドラマ主人公の古山裕一が担当。

ドラマ「半沢直樹」では歌舞伎俳優が大活躍しましたが、「エール」ではミュージカル俳優が多く出演していましたので、コンサートを通じてその歌声を聴くことができるとわかり、心待ちにしていました。
ミュージカル俳優が多数出演したのも、戦後、古関裕而が東宝ミュージカルや舞台に数多くの楽曲を提供してきたことへのリスペクトも感じられました。

ドラマのチーフ演出で、脚本も手掛けられた吉田照幸さんは、こう振り返っています。
「最後をコンサートにしたのは、そもそもプロデューサー陣から『どこかで歌を』という要望があったから。でも本編の途中に入れるのは違和感があったので、古関さんに『ありがとう』という意味を込めて、最後に持ってきました」

当日の演奏曲目と歌手の皆さんです。
1.とんがり帽子:御手洗清太郎(古川雄大)、藤丸(井上希美)、夏目千鶴子(小南満佑子)、子ども時代を演じたキャストの裕一(石田星空)、音(清水香帆)、鉄男(込江大牙)、久志(山口太幹)など子供時代を演じたキャスト。

御手洗ティーチャーが登場!ドラマでも非常にインパクト大きかったですね。演じる古川雄大さんは2019年『モーツァルト!』『マリー・アントワネット』『ロミオ&ジュリエット』での演技が評価を受け第44回菊田一夫演劇賞を受賞されています。菊田一夫さんは、ドラマでは北村有起哉さんが演じていましたね。

子役の子達も懐かしく、一人一人カメラの動きと共に姿を確認しては笑顔になります。

♪「とんがり帽子」
 1947年放送開始のNHKドラマ『鐘の鳴る丘』主題歌。前年の流行歌採用が原則となった1962年以前、1948年の第20回選抜高等学校野球大会入場行進曲で使用されました。それだけ日本に住む人々にとって、広く馴染みのあるメロディーとして認識された楽曲です。後に「君の名は」シリーズでもタッグを組む、菊田一夫・古関裕而コンビ初期の作品です。

2.モスラの歌:藤丸(井上希美)、夏目千鶴子(小南満佑子)
佐藤久志を献身的に支えた藤丸さんの姿も、音のライバルであり凛とした姿が素敵な夏目千鶴子、いろんなシーンが思い出されます。
お二人ともミュージカル出身、見事な美しいハーモニーでした。夏目千鶴子役の小南満佑子さんは「レ・ミゼラブル」でコゼットを演じ、藤丸役の井上希美さんも劇団四季で堀内敬子さんと同様「美女と野獣」でベルに抜てきされ、退団後はドラマ「やすらぎの刻」に出演されています。

♪「モスラの歌」
1961年公開の怪獣映画『モスラ』主題歌。ゴジラ、ラドンに継ぐ東宝の怪獣キャラクターとして売り出されて大ヒットしました。劇中ではインファント島の小美人が歌う、モスラを呼び出す歌として作られています。平成以降のリメイクでも様々な女優が演じていますが、元祖はやはりザ・ピーナッツ。ちなみにインファント島は、自身が悲惨な光景を目にした東南アジアの熱帯雨林のジャングルをイメージしたもの。そこで聴いたリズムがモチーフになってこの曲が作られたというエピソードがあります。

3.福島交響曲:御手洗清太郎(古川雄大)
ドラマ「エール」では歌手、川野三津代を演じた二卵性双生児の姉とデュオ「山田姉妹」を組んでいる、女優でソプラノ歌手の山田麗(やまだれい)さんでした。古川雄大さんの朗々とした歌声が、ドラマで出てきた福島の風景を思い出させました。

♪「福島行進曲」
 作曲家・古関裕而のデビュー作。1931年、天野喜久代によって歌われました。幼馴染の野村俊夫が作詞した、故郷・福島をテーマにした楽曲。古関裕而だけでもなく野村俊夫にとっても、デビュー曲となっています。

4.船頭可愛いや:佐藤久志(山崎育三郎)ギター/村野鉄男(中村蒼)
居酒屋で、歌いましたねー、一向に具体的に歌手への道へ自分から行動を移さない久志を連れ出して。鉄男がギター弾いて、歌う久志に一人の男の子から手渡された硬貨。あの出来事は久志の忘れられないシーンでしたね。

♪「船頭可愛いや」
 1935年発表。瀬戸内海の音戸瀬戸を行き交う舟をテーマにした、新民謡調の楽曲。音丸の歌唱によって大ヒット、この曲によって古関裕而は人気作曲家の仲間入りを果たしました。

5.フランチェスカの鐘:藤堂昌子(堀内敬子)
まさか、藤堂先生と一緒になるとは!銀行員時代も裕一を励まし、みんなのムードメーカー的存在とも言えましたが、藤堂先生と藤堂先生の父との間で、そして藤堂先生を戦地に送る時、藤堂先生の死の知らせを聞いた時、彼女の優しさが心に沁みました。
堀内敬子さんは劇団四季で「美女と野獣」のベルや「エビータ」の主演を務め、退団後は三谷幸喜作品に出演されていらっしゃいます。ドラマでは歌声を聴くことが叶わず、このコンサートでそれが叶った嬉しい一人です。

♪「フランチェスカの鐘」
 1948年発表。当時コンビを数多く組んでいた菊田一夫作詞。悲恋をテーマにした歌謡曲ですが、翌年の映画化を境に広島原爆の鎮魂歌として人々に記憶されるようになります。歌唱した二葉あき子は広島出身、当日は帰郷の為広島を出て汽車のトンネルに入った際に原爆が投下されました。生涯この曲を特に大切に歌い続けてきた背景には、本人の被爆体験が大きく関わっています。また、古関裕而の従軍で九死に一生を得るような経験も、この曲に深い影響を与えたと言われています。

6.イヨマンテの夜:岩城新平(吉原光夫)
この人の第一声で、SNSは騒然としたのではないでしょうか?寡黙で職人気質の岩城新平の大きく響く声。演じた吉原光夫さんは劇団四季退団後に英国へ短期留学、32歳の時に「レ・ミゼラブル」のオーディションに挑戦し、ジャン・バルジャン役を手にし演じています。
もう、待ってました!という感じで聞き入りました。

「イヨマンテの夜」 記事はこちら

7.高原列車は行く:関内光子(薬師丸ひろ子)
薬師丸さんは、何と言っても、空襲の被害を受け焼け跡が広がる荒廃した地を前に独唱した、賛美歌「うるわしの白百合」が賞賛されました。息を飲んで聴き入ってしまう魅力に溢れていました。

♪「高原列車は行く」記事はこちら

10.栄冠は君に輝く:藤堂清晴(森山直太朗)、佐藤久志(山崎育三郎)
森山直太朗さんと山崎育三郎さんは実際に森山さんが山崎さんに楽曲を提供したりするなど交流が続いているようですね。そうした二人の距離感や息があった様子が感じられました。ドラマでは藤堂先生の一言が子供達の未来に大きく影響を及ぼしていましたね。この曲も、ドラマでのシーンも彷彿とさせるスローテンポながら、思いがしっかり伝わってきました。

「栄冠は君に輝く」記事はこちら

11.長崎の鐘:指揮/古山裕一(窪田正孝)、古山音(二階堂ふみ)ほか、
オールキャスト
原爆投下直後の長崎で被爆者の治療を行う医師の永田を吉岡秀隆さんが演じていました。「落ちろ、落ちろ…どん底まで落ちろ」のセリフには静かな中にも凄みを感じました。オリンピックの開会式に緊張でトイレに駆け込み尻込みする裕一に萩原聖人さん演じる警備員が『長崎の鐘』が生きる希望を与えてくれたと語りかける。
音楽で人を励まし、応援する。新型コロナウイルスによる危機的な状況の今、コンサートを締めくくる最後の曲は平和の祈りを込めた「長崎の鐘」でした。
音を演じる二階堂ふみさん、またオペラ歌手、双浦環を演じた柴咲コウさん共にクラシックの発声を短期間で学ばれることは大変なことだったと思います。心が伝わる素晴らしい歌声でした。

「長崎の鐘」記事はこちら

あっという間の15分でした。終わって、そうだった朝ドラは15分だった…. もっともっと、このメンバーでたくさんの曲を聴きたい、そんな気持ちになり名残惜しくて仕方ありませんでした。

ミュージカル俳優が多数出演された今作「エール」、山崎育三郎さん、古川雄大さんは2021年4月帝劇で「モーツァルト!」にダブルキャストで主演、吉原光夫さんは、2021年5月に帝劇で「レ・ミゼラブル」に主演予定、堀内敬子さんも2021年1月にミュージカル「パレード」で石丸幹二さんと夫婦役で共演されます。
舞台でも皆さんの姿を拝見したいですね。

(ミュージックソムリエ:柏井要一)

NHK連続テレビ小説は11月30日から「おちょやん」がスタート!


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