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まだまだ世界にひらいていく
『ひらいて』綿矢りさ
職場の方に借りたもの。決して長くない物語だが、だいぶ奥深い部分、人が持ちうるドロッとしたものがあらわになる。だが、「わかる」。言葉にしづらい、し尽くせない感覚に共感ができる。後半の疾走感、どこに連れていかれるのだろう、どこまで物語は言葉尽くして展開されるのだろうと、終わってみればめまいがした。久々に「ぐっ」とくる小説に出会った感じ。何かの折にまた思い出すだろう。
受験前の高校生が主人公。それはもうずいぶん前のことだと実感する。今の年齢(46歳)にしてみれば30歳はとても若くて、30歳だったころは18歳なんて子供のようだった。今は40歳くらいのことは覚えているが、30歳の感覚はすっかり遠く。きっと20代なんて身体感覚が無い、というくらいに軽やかだったろうなとか、10代の頃なんてどんどんとやれることが増えていってきっと「世界が広がっていく」実感が心身共にあふれていただろう。
今になって身体が「ひらいて」いくことは無いかもしれないけど、そして経験則に抗うことは難しくなりつつあるけれど、それでも「ひらいて」身を投げうつようにできればと思う。「もっと本を読まなきゃ」と思った。