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僕がカフェラテを頼めなくなった理由

毎度毎度釣りのようなタイトルで申し訳ないが
今回も当たり前のように釣りである。
釣られた皆様、ご機嫌麗しゅうございます。

当然、毎日のようにカフェラテは頼んでいるし
なんなら今もスタバでラテを飲みながら
この記事を書いている。

ではなぜ今回のタイトルをつけるに至ったのか?
ゆっくりと面白く書き進めて行くので
今日も最後まで付き合ってほしい。

Today's My Office
BLUE NOTE公演の休憩時間に

ラテアートの師匠と出会ったあの日


私はショートケーキが嫌いだ。
180cm120kgという我儘な体型をしておきながらだ。
生クリームの悪意のある甘さと
スポンジに口内の水分を全て持っていかれるあの感覚。
イチゴだってイチゴ単体で食べた方が
どう考えても絶対に美味い。(個人の感想です)

そんな私が生まれて初めてショートケーキを
美味しいと思えたお店がある。
新宿の『TSUBASA COFFEE』さんだ。
まだまだコーヒーが苦手で甘いものと一緒に飲んで
やっと美味しいと思えていた頃。
新宿でのライブの空き時間にたまたま近くだった
TSUBASA COFFEEさんに入った。

TUBASA COFFEEさんの
絶品スイーツの数々

プリンショートという看板メニューと
ドリップコーヒーを注文すると
ピンクのロングヘアーが似合う美女が
今日のドリップコーヒーの説明をして下さった。
この女性が後に私のラテアートの先生となる
Chigusaさんだった。

まずショートケーキの美味しさに度肝を抜かれた。
スポンジケーキもしっとりとしていて
口の中の水分も持っていかれない。
それどころか潤いすら感じる。
更に生クリームの甘さのバランスたるや!
しっかりとした甘さとコクでそれでいてしつこくなく
スポンジと溶け合うような感覚。

Chigusaさんからもこちらのお店のスイーツへの
拘りを聞かせていただき、頷きながら
淹れてもらったコーヒーを飲んだら
またしてもその美味しさに言葉を失った。

あまりの感動に半狂乱になりながらも
何でこんなにコーヒーが、ショートケーキが
美味しいのかと質問攻めになってしまった。
しかし少しも困った顔をせずに答えて下さったChigusaさん。

そんな彼女がラテアートを教えている
という事を知りすぐに申し込みのDMを送った。
グループレッスンとマンツーマンがあると言われたが
そんなのマンツーマン以外ないだろう!
独り占めしたい!!変な意味ではない!!
質問しまくりたい!!!

そんな熱い思いがレッスンの日まで膨らみ続けた。

まさかカフェラテが頼めなくなる(誇張)なんて
この時の私は微塵も思っていなかった。

エスプレッソの深淵を覗いたあの日


初めてChigusaさんのいや、Chigusa師匠の
ラテアートレッスンを受けたあの日を
私は一生忘れる事はないだろう。

師匠はレッスンの始めにラテアート、いや
カフェラテにおいていかにエスプレッソが大事か
という話をして下さった。

エスプレッソという土台がしっかりしていなければ
いいラテアートは描けない。
美味しいエスプレッソを作る事が何よりも大事なこと。
つまり逆に言えば美しいラテアートは美味しい
という事になる。なんて素敵な話だろう。

そして美味しいエスプレッソには
沢山の拘りが詰まっている。
豆の剪定は言わずもがな
まず最初に驚かされたのは使用する豆の量。
基本的に今回のレッスンでは
1杯のエスプレッソを作るのに
18gの豆を測って粉にしていたが
それが0.5g多くても少なくても味が変わるのだ。
いやマジで。

今まで自分の家でドリップを淹れる時に
目分量で豆も水も測っていたと
伝えた時のChigusa師匠の目は
今まで共演したどの大御所ミュージシャンよりも
鋭い眼差しをしていた。。。

現在は独立されて上野のLUPI COFFEEさんで
コーヒーを淹れていらっしゃるChigusaさん

そしてコーヒーは豆を挽いたその瞬間から
空気にさらされ酸化が始まり味が落ちていくという。
つまり豆を挽いて粉にして
エスプレッソマシンで抽出するまでの間
無駄のないスピーディな動きが必要となってくる。

そういう視点で見ると
どんなにお喋りで明るい店員さんでも
豆を挽いてエスプレッソマシンの抽出ボタンを
押すまでの動きは非常に滑らかでスピーディなので
一度その辺りも楽しんでご覧になってもらいたい。
楽器の演奏でもそうだが
所謂「所作」の美しさが決め手となるのだ。

そしてもう一つ印象的な出来事があった。
エスプレッソにも抽出量や方法によって
様々な呼び名、種類が存在する。
その中でも「リストレット」呼ばれるものがあって
エスプレッソと同じ豆の量で
抽出するお湯の量を半分にしたものがそれだ。

当然、エスプレッソよりも濃いものになるので
そのまま飲むと強烈な苦さである。
ところがどうだろう。
フォームミルクと融合し所謂「ラテ」の状態になると
エスプレッソで作ったラテよりも豊かな甘味が出る。
これはもう魔法だ。

その理由を尋ねてみると
エスプレッソの苦味は抽出の後半で 
より多く出てくる為、湯量を半分にする
つまり抽出時間も半分にすることで
後半の苦味の抽出を抑える事ができるのだという。

つまり先ほど、リストレットのまま飲んだ時に
感じた強烈な苦味は単純に濃度の高さから来るもので
苦味の質自体はまろやかなものだという。

そう言ってもすんげー苦かったじゃん!
と思わなくもないのだが実際にリストレットのラテは
本当に甘くて飲みやすいので信じざるを得ない!
ちくしょう!

様々な驚きと発見に溢れたこの日。
とてもじゃないがラテアートの段階にまで
進めなかった。いや、進みたくなかった。
エスプレッソの魅力に取り憑かれた私は
恐れ多くてしばらくの間
カフェラテを頼めなくなるほどだった。
こんな拘りを詰め込んだ飲み物、いや芸術作品を
おいそれと簡単に注文なんて出来ない!
そう思ってしまった。

そう、つまりこれが
私がエスプレッソを頼めなくなった理由なのだ。

カフェラテを頼めるようになったあの日

そんな話をChigusa師匠にすると
彼女はあたたかな笑顔でそんな事きにしないで!
と仰ってくださった。

続けてこんな事を話してくれた
同じクオリティのエスプレッソを淹れられれば
つまり軸となるものが出来れば
それを微調整することも出来るようになる。

暖かい日もあれば寒い日もある。
若いお客さんから年配の方まで年齢も様々。
仕事に行く前に寄る人も仕事の帰りに寄る人もいる。

そんな人たちの体調や気持ちに寄り添って
エスプレッソの濃さ、カフェラテの甘さを
調整している。例え気づかれないとしても。

まーた見つけちゃったよ。
「なんか良い」を追い続けてる人を。

その後も何箇所かラテアート講習を受けたが
大半はエスプレッソもフォームミルクも
出来上がった状態で渡されてラテアートに臨む。

勿論それが悪いことだなんて1ミリも思わないし
ラテアート人口が増え、コーヒーを楽しむ人が
増えていってほしいと心から願っている。

しかし、最初に教わったのがChigusaさんで
本当に良かったと思っている。
前よりもずっとカフェラテを楽しみ愛せている。

やはりこだわりとは儚く美しい。
そんな美しい人たちとの美しい出会いが
コーヒーの世界には溢れている。

最後に美しくない私の初めてのラテアートを添えて
このnoteの結びとさせて頂く。
それではまた、ご機嫌よう。

儚く美しい私のラテアート

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