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名曲81 「王将」【村田英雄】
ーー大阪の名棋士の粋な振る舞いが浮かぶ、将棋界の誇る名曲ーー
ふ〜け〜ば〜とぶような〜。今回は初の演歌を取り上げる。歌い上げるは昭和の伝説歌手村田英雄。1961年の曲で、現時点での本noteでは最も古い曲になる。
王将は将棋をテーマにした曲であり、将棋界では今も有名な曲だ。時の名棋士坂田三吉が大阪から東京に上京する際の決意をうたう。坂田三吉は大阪のスターであり、天才といわれた。実力はありながら当時の大名人木村義雄に敵わなかった。いわば悲劇の名人であった。
{吹けば飛ぶよな 将棋の駒に 賭けた命を 笑わば笑え}
いい表現である。こんな小さな木の駒に俺は命を賭けとるんじゃと画が浮かぶではないか。
{あの手この手の 思案を胸に やぶれ長屋で 今年も暮れた 愚痴も言わずに 女房の小春 つくる笑顔が いじらしい}
極限まで考え抜いた結果、2手目△9四歩や△1四歩を思いついたのだと。昭和の、それも戦後間もないような古き良き時代風景が浮かぶようだが、やぶれ長屋というのが貧しさを想像させる。坂田三吉ならば賞金で稼いでいたのではないかと思ったが、浪費癖があったのだろうか。
{明日は東京に 出て行くからは なにがなんでも 勝たねばならぬ 空に灯がつく 通天閣に おれの闘志が また燃える}
3番は将棋に限らず、すべてのアスリートや勝負師、お笑い芸人などにも共通する。もしかしたら大阪の人はいまもそう思っているのかもしれない。
いまのAIで調べる時代とは違って、当時は将棋盤の前でうんうんと考え抜いていたのだろう。その坂田三吉の姿を想像すると、より王将の味が染みてこないだろうか。節々に見られる勝負にこだわる姿勢は、いまのクールな若者に向けてぜひ送りたい。
ちなみに名曲81にこの曲を選んだわけだが、81という数字は将棋盤のマス目と一緒。将棋は運の要素が絡まない素晴らしいゲームだ。老後の趣味にしようとしている方、今始めても後悔はしないはず。
【今日の名歌詞】
月も知ってる 俺らの意気地