名曲685 「誰もいない海」【広瀬香美】
ーー詩的なタイトルが物語を生むーー
【誰もいない海】
以前の某迷曲でさらっと触れた広瀬香美の曲を紹介。本当は冬まで待つつもりだったのだが、例によって忘れてしまいそうだったので早めに。あと、モチベーションが……。
まずはタイトルがかなり好み。これだけで一発で季語がわかるのだ。この手法はいろいろ応用できる。例えば「売れ残った花火」とか「タンスの奥のビキニ」とか。……うーんどうも庶民的。しょぼい。ああ、これが才能の限界か……。悲しいなあ。
私の悲しい例えはさておき、夏が去ったことがよくわかる比喩である。そして頭に光景がよく目に浮かぶ。その海岸沿いを歩いているだけでも画になるし、心情を察することさえもできる。当然夏とは違って大人数ではなく独り。わざわざ寒い時期にそんなところに行くなんて、と思わせるのがいい。きっとつらい過去があったのだろう。恋人を失ったか、死別があったか、著作権の侵害で記事を取り下げたか。
広瀬香美の歌声も切なさを増長させてよし。伸びやかなそれがメロディーとよく合う。アルバム曲とはいえ、広瀬香美の隠れた名曲と主張したい。まあ、例の映画によってイメージは悪いのだが、それとこれとは別だ。あ、そうそう、やっぱり映画も悪評が目立っていた。逆に見たくなる私(ひねくれてるねえ)だけれども、どういう感想を抱くだろうか。
例によって今回もまた歌詞は書かないでおいた。えっへん。タイトルならいくらでも歌詞に抵触しないものね。悩みも涙も波に返しまーしょ。