名曲118 「薔薇は美しく散る」【鈴木宏子】[ベルサイユのばら]
ーー高貴で崇高なアニソンとは思えぬ名曲ーー
【薔薇は美しく散る】
ベルサイユのばらは少女アニメの金字塔的存在だ。20代男性というまるで接点のない私でも「オスカル」の名前は聞いたことがある。ちなみに主人公はマリーアントワネット。歴史でも習うレベルなのでご存知だろう。
個人的にはルイ16世とマリーアントワネットがあまり好きではないのだが、今回はそういった歴史的な背景を考慮に入れずに進めたい。
本作品はそういった煌びやかな王宮の世界を美しく描いた作品で、それはそれはハードルの高い主題歌が求められたことだろう。これでガッチャマンみたいな曲調を流してごらんなさい。3話で打ち切りである。
ベルサイユのばらが大ヒットした要因の一つが主題歌の秀逸さ。「薔薇は美しく散る」。まずタイトルがいい。当時はアニメ主題歌というと、アニメタイトルをそのまま使うことが多かった。そして主語+動詞で完結するタイトルなんて斬新そのものではなかっただろうか。
そして歌詞がまた素晴らしい。
{草むらに 名も知れず 咲いている 花ならば ただ風を 受けながら そよいでいれば いいけれど
私はバラのさだめに生まれた 華やかに激しく生きろと生まれた
バラはバラは 気高く咲いて バラはバラは 美しく散る}
1番の最初からサビまで記した。すべてひとまとまりでのストーリーとなっているのである。歌詞だけでアニメの内容が手に取るようにわかる。登場人物の気高い様子を短くまとめているのは秀逸以外の言葉が浮かばない。
マリーアントワネットもおそらくそうだったのだろう。気高く孤高に咲いて散り際は美しく。どこか異国のような日本離れした価値観に、多くの少女は虜になった。
そういえばこの作品の作者は池田理代子さんで、連載当時はまだ25歳だったのだという。こんな着眼点を20代半ばで生み出すとは貴族か何か。フランスは感謝すべきではないだろうか。これだけ自国をロマンチックに描き、日本に浸透させたのだから。
【今日の名歌詞】
バラはバラは 気高く咲いて バラはバラは 美しく散る