![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/170759466/rectangle_large_type_2_679666454dc0c4fcfacbedfee53557c5.png?width=1200)
発達障害児のピアノレッスンを支える、3つの考え方と実践方法
最重度と診断された自閉症の子どもから、定型発達の子どもまで、
これまで様々なタイプの子ども達に、ピアノや作詞作曲、歌などを
教えて来ました。
ピアノレッスンの途上では、障害の軽い重いに関わらず、
また、定型と言われる子ども達でも、
それぞれに何らかの課題を抱えています。
しかし、やはり発達障害、知的障害、グレーゾーンと診断された
子ども達は、明らかに、ピアノレッスンマニュアルにあるような
通常レッスンでは伝わり難いことが多く、いつしか私なりの
マニュアル、考え方、ルールが、自然と出来上がっていきました。
その柱となる3つを、今回はお伝えします。
私はこれを25年間、場面に応じて使い続けています。
かなりいい感じで、私を助けてくれます。
なので、きっと同じようなお仕事をされている先生方にも、
お役に立つのではないかと思いました。
何と言ってもそれはシンプルで、副作用がありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1736501554-F1wmjSWT8QMVZkea3hA4pYyd.png)
1.100回できなくても、101回目にできたことは、偶然ではなく、できるようになる
知的障害がある子どもや、ワーキングメモリーが低い子どもは、
1-2回のアプローチでは、なかなか習得が難しく、何をどれだけやれば
理解できるのか?弾けるのか?途方にくれることがよくありました。
でもある時、ずいぶん回数を重ねた後で、奇跡とも思える瞬間に、
弾けるようになる子が、たくさんいることに気づきました。
10回目で弾けて、でも、11回目は弾けない。
でも、褒めながら促すと、(この時は、正解をはっきり伝える)
20回目に成功する。そうすると、もう間違わなくなるし、
次のレッスンの時も、よく覚えているのです。
もちろん、何度も繰り返すことが辛くなり、泣いてしまう子もいます。
でも、先生みなさん、子どもの頃どうでしたか?
何度も繰り返しをして、泣きながら弾いた経験のある先生方は、
たくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
だから、それでいいんです。
またか~wと思いつつも、子ども達も、やがて、
どのくらいやったらできるようになるかな?と、
経験値から、ある程度推測できるようになってきます。
心も強くなっていきます。
くり返すこと、できないところを何度も弾くこと、
シンプルに言えば、これこそがピアノ練習の基本中の基本なのですから、
発達障害があると言っても、ピアノレッスンにおいては
例外ではありません。
私は、「繰り返しは当たり前!」
「ただ、定型の子どもより、時間がかかるだけ」と考えました。
泣くから可哀想・・発達障害があるんだから・・と考えるのは、
その子に失礼です。
ピアノが弾けるようになりたいのですから…少なくとも、ご両親は
それを望んでいらっしゃるのですから。
しっかり身に付けさせてあげましょう!
*ただし、課題によって、また対象となる子どもの能力によって、
「できない」「できるようにならない」という判断をしなくては
いけないこともあります。
その場合はあきらめます。
「あきらめる」という言い方に抵抗のある方は、
「切り替える」と考えます。
その見極めは、経験と勘です。
例えば、ト音記号は読めるようになっても、ヘ音は無理な子なら、
ト音だけ繰り返しやって定着させ、ヘ音はふりがなを振って
弾かせてあげましょう。
その方が本人も楽しいし、レパートリーも増えます。
他の活動に時間を割くこともできます。
2.良い先生の条件は、短気であること
なんだか誤解される見出しです。
「短気」という言葉は、マイナスイメージしかないからです。
でも、この場合の短気は、全く意味が違います。
これは、1.でお伝えしたような「何回も弾かせる」時に、
指導者としてのアプローチの仕方を「短気」という言葉で
表しています。
例えば、30回やったら弾けた、とします。
30回って、弾いてる本人にとっての体感は、
ずいぶん長い時間だと感じると思います。
実際には、1小節、わずか数秒の繰り返しでも、集中力が
だんだん落ちてしまいます。
それと、これは長年の経験が役に立って来るのですが、
数回やらせてみて、「あ、この方法は無理!」と
ジャッジができるようになってきます。
そうしたら、速攻アプローチの仕方を変えます。
いつまでも最初のやり方に固執しないという意味の
「短気」なのです。
子どもが弾いている最中も、私の頭の中はぐるぐる・・
いろんなアイデアを考えています。
だいたい繰り返して弾かせるときは
●音や指番号の間違いを直す
●リズムの間違いを直す
●両手奏のタイミングを覚える
・・・などが中心でしょうか?
🎈 🎈 🎈 🎈 🎈 🎈 🎈 🎈
それではここで、●リズムの間違いを直す、
について、私が取った実例をひとつお伝えします。
知的障害のある子どもは、リズム感があまり良くないことが多く、
拍感も期待できるほどではありません。
付点四分音符なども、教えるのに苦労しました。
あるダウン症の男の子(当時小5)とのレッスン時、
最初から弾かせようと、4拍子の曲で、「1.2.3.はい!」
「いっせーの、せっ!」など、1拍目から入れるように
カウントを取るのですが、この子は、4拍目の「はい!」
「せっ!」を聞き終わってから、大きく息を吸うのです。
本来であれば、「はい!」「せっ!」で無意識に息を吸って
小節の頭から弾き始めるのですが・・・絶望的でした。
次は、掛け声をかけながら、背中をトントンと軽く叩き、
4拍目で少し強めに叩きます。
これもダメ✖
次は声はかけますが、最初の指を無理やり1拍目に鍵盤に落とします。
でもダメ✖ 指が固まっています。
次はラマーズ法みたいに、フッフッフッ スー(3回吐いて4回目に吸う)
で、1拍目に入ろうとしましたが、
これもアウト✖
なんなら、2回息を細かく吐いたりするので、できません。
息を吐いたり吸ったりする行為は、体の使い方と連動していると
私は考えていて、いつも緊張気味、常に上半身に力が入っている、
手足や指先の不器用な子どもは、指示された規則性のある呼吸が苦手で、
深呼吸の意味がわからない子も多くいます。
また彼らは、呼吸がとても浅いと感じています。
さて、ここらで、ずっと私も一緒にやっているので、
私が呼吸困難になりそうになりますw
もう20回くらいやったかなあ~?もっとかなあ~?
あまりにも夢中で覚えていない。。
ずいぶん前の話です。
で、最後に、一度ピアノから離れてもらって、
床の上に1mくらいのカラーテープを真っすぐ貼って、
一緒に手をつないで、「1.2.3.4!」で、足を揃えて
テープを飛び越える練習をしました。
あの頃は若かった。こんな体張った練習ができた。
だんだん飛べるようになってきました。
それで、タイミングを見計らい、ピアノに戻って、
もう一度やったのです。
お!少しましかも・・?
さっきの大きく体を動かしたのとリンクさせたいので、
「指がジャンプするよ!」などの声かけをしつつ・・
で、、もうこの頃には40分のレッスン時間はとっくのとーに
過ぎていましたが、まだジャストじゃないにしても、
かなり出来るようになって、この日はサヨナラしました。
この子が、しっかり完璧に1拍目から入れるようになったのは、
それから半年~1年後のことです。
ここに、この子(たかしくん)の発表会の動画があります。
しっかりリズムを取って弾いているので、見てあげてください。
3.良い先生の条件は、しつこいこと
発達障害のある子ども達にピアノを教える先生の
短気であること=いつまでも一つの教え方に固執せず、
アプローチ方法を変える
と、2つ目でお伝えしましたが、
ここでの「しつこい」は、1.と2.のまとめでもあります。
まず、できるまで、課題は変更せず、指導方法を細かく変更しながら、
何度も繰り返す。というのが1.2.の大まかな内容でした。
そして、できないこともある。
その時はあきらめて、できるところまでを確実に定着させ、
別の課題に取り組む。
では、ここでの「しつこいこと」という意味は、
言い換えると、「先入観を持たない」という意味でもあります。
中程度~重度の知的障害があったり、発語が無いと、
指導している方は、どうしても簡単な課題ばかりになってしまい、
次に進めない。でも、思いきってトライしましょう。
今、現在、私の教室MusicLabMelodiahttps://www.melodia-web.com/
には、医者から最重度と言われた小5でIQ28(これ以上計れない)
の男の子が、ド~ソまでが読めるようになり、簡単な曲を
両手で弾いています。リズムは取れていませんが…
また、発語が無く、すぐに泣いてしまうので、同じく検査ができず
ひらがなを書くことも困難な小6の女の子が、バイエル40番程度を
わりと達者に弾きます。指に力が入らないので、大きな音は出せません。
二人とも、(おそらく)ピアノが好きです。
二人とも、(おそらく)ピアノの音が好きです。
二人とも、(おそらく)自分が鍵盤上で指を動かすことで、
メロディになることに興味をもっています。
二人とも、ちゃんと毎日宿題をします。
なので、私は偏見をもたず、最初から、どうせ無理だろうと思わず、
あれこれアプローチ方法を変え、しつこくトライします。
できるようになったら、定型の子ども達より以上に、
しつこく「振り返り」をしながら覚えているか確認し、
次の課題へと進みます。
能力が低いからと最初から諦めず、アプローチ方法を変えながら
何度も弾かせてみる。
一度でもできたら、それは定着する可能性が高い。
毎回のレッスンで、振り返りをしながら覚えさせる。
それでは、もう一人、繰り返し練習することで
ト音記号をマスターし、視る力が大きくアップしたと感じている
ピアノ歴7年目の女の子の演奏を聴いてください。