クアイフ『桜通り』
こんにちは。
記念すべき初回は、名古屋市発の三人組バンド、クアイフの『桜通り』を紹介します。
この曲は、情景が手に取るように鮮明に思い浮かぶほど、直截的な表現が印象的な曲です。
楽曲解説
最初はピアノ単音のメロディから静かに始まります。やがてボーカル森さんの声が入ります。
そして、一番の歌詞。
ここのビルの最上階の窓から
キミは飛んだ 誰にも言わずに
この空はどんな色をしてたのかい?
それとも涙で何も見えなかったかい?
あまりに直截的なこの歌詞を見るかぎり、最初は暗く悲しい内容かもしれないと予想してしまいます。しかし、最後まで聴いてみなければ分かりません。一番は全体を通じて、森さんのボーカルとピアノのみで進みます。
そして、サビの歌詞。
教えてくれよ
人生ってやつはいつか終わるのに
汗水垂らして 生きる価値があるのかい?
何一つ僕はわからない 何一つ僕は知らない
なんでキミは先に旅立ったんだい?
生きる価値を、僕は先に旅立った「キミ」に訊くのです。
一番が終わると、キーボード、ドラム、ベースが入ります。ただ、この楽曲は全体を通じてボーカルを強調するような楽器編成となっており、楽器はボーカルの邪魔をしません。
二番に入ると、一番の歌詞の意味がより深く分かるようになっています。
二番のサビの歌詞は本質的な内容で、個人的に二番目に好きな部分です。
教えてくれよ
しあわせだったかい?
太陽みたいに笑うキミの孤独に気づけなかった
都合良く想い出して 都合良く泣いてるよ
そんな僕をどうか許してほしい
僕は「太陽みたいに笑うキミの孤独」に気づいたのです。キミを失った後に。そして、”そんな僕を許してほしい”ということは、僕は本質的に「生きる」方向へ向いていることが分かります。
次に、落ちサビの歌詞です。
歩き慣れた道 いつものビル
ふと 懐かしい声がどこからか聞こえた気がした
流れてく雲を追って 必死に手を伸ばした
あの日と同じ風が吹いていた
キミの声が聞こえた気がして、ふと思い出したのかもしれません。
そして、この想いが大サビで結実します。個人的に最も好きな所です。
教えてくれよ
僕の人生もいつか終わるのに
悩み迷い生きる意味があるのかい?
今はまだ何もわからない いつの日かわかるかな?
なんでキミは先に旅立ったんだい?
ここで初めて、「キミ」の人生から「僕」の人生にシフトします。
「キミ」はいないかもしれないけれど、僕は生きつづけている。生きる意味なんて分からないけれど。
否、僕だけではなく、皆「生きる意味」を分からずに生きている。そんな真理と力強さを感じる歌詞です。
終わりに
この曲は決してネガティブな曲ではありません。ネガティブという一言では片づけることができないほど、生きることの本質を突いています。
人生には、上り坂も下り坂もあります。しかし、その差があるからこそ幸せを感じられます。
「生きる意味」の壁に人間はどこかで必ず突き当たります。そんな時に、ふとこの曲を聴くと、自分を見直すきっかけになるかもしれません。