人間のやる気を引き出すためには
やる気がある人とない人みたいな話が自分の周りでも時々聞かれる。
「あの人は仕事のやる気が感じられない」、「仕事を嫌々やっていて、やらされてる感がある」などである。組織の中でも、モチベーションがある人とない人に分かれ、働きアリの法則(別名「2-6-2の法則」。組織の上層20%が高パフォーマンスを出し、中層60%割が人並み、下層20%が低パフォーマンスである)の中の下層20%がまさにこれにあたる。今回はやる気がないことに対する良し悪しはひとまず置いておいて、やる気がある人とない人の違いは何なのか、私的な持論を話そうと思う。
その人にとっての動機付け(インセンティブ)を考える
その人にとってのモチベーションとは何なのか。結論、それは人々の行動や動機付けに影響を与える要因や仕組み(≒インセンティブ)があるかどうかであると考えている。
例えば出世欲がある人。地位や名誉などの肩書きに憧れており、承認欲求が強かったりすると、そのために仕事に精を出せるという人がいるだろう。または、仕事がデキるようになって態度が前向きで良いと評価されることで、その分給料が上がることをインセンティブとしてやる気が出る人もいるかもしれない。
反対にやる気が起きない人たちをやる気にさせるにはどうしたら良いのだろうか。マネジメント側の立場にいる人間なら部下に対して一度は思ったことがあったりすると思う。
そもそもそういう人たちは先程の例のように昇格に興味がなかったり、承認されたいという欲求が低かったりする人かもしれない。そういったいわゆる「社会的報酬、金銭的報酬」を用意したとしても動きにくいわけだ。
このように、金銭的報酬、社会的(承認・名誉による)報酬のことを「外発的動機付け」というのだが、これだけではやる気は短期的、表面的にしか出せないと考えている。また、やらないと罰則や期限を与える(やらないと怒ったりして名誉に傷をつけたり、締切を設定させるなど)」についても、同様だ。では持続的なやる気(モチベーション)の鍵とは何なのか。
それは「内発的動機付け」であると考えている。
内発的動機付けとは?
「内発的動機」とは、外部からの報酬や圧力によるのではなく、個人が内面的な満足感や興味、楽しさを感じることによって行動を起こす動機のことだ。内発的動機は「行動そのものが目的」であることから、「行動を行うこと自体が楽しい、興味深い、または充実感をもたらす」という気持ちである。このマインドが形成されれば、「この仕事は楽しいから続けたい」といった気持ちも湧き上がってくる。この内発的動機付けによる行動は、金銭的報酬や社会的評価など、外部の要因に依存しない。
自分が上司であり、部下のモチベーションが低い場合、部下に対して内発的動機付けに繋がる行動、例えばこの仕事をすることで、どのようなビジネス能力が養われるか、社会に対してどんなインパクト、貢献があるかなどを伝えて、仕事の意味を考えさせることも有効かもしれない。
また、この組織にとってその仕事をしてくれていることで助かっている、ありがとうといった感謝の言葉を伝えたり、相手の意見にしっかり耳を傾けて尊重しながら仕事を任せるなど、部下の「自己効力感」を高めて主体性を持って仕事をしてもらうことで、やる気も上がっていくと考える。これはアドラーの言う「人は貢献感を感じたい」という欲求に刺さるものである。
総じて内発的動機付けは、長期的な満足感や継続的な努力を支える基盤になる。行動のドライバーは自己効力感や貢献感なのである。
結局、外発的動機付けと内発的動機付けはバランス良く必要
それでは個人の内発的動機付けだけでやる気が出ることばかりなのか。結論、外発的動機付けと内発的動機付けの両輪が必要であると考えている。
外発的動機付けに位置付けられる「組織構造や人事システム、報酬制度をはじめとしたインセンティブの仕組みづくり」によって、人間は合理的な行動を取りやすくなる。まさにそういった組織づくりを、企業ごとの経営戦略と整合性を持たせながら進めていかなくてはならない。
やる気が出ないのは個々人によって様々理由があると思うが、全てそれを個人任せにする組織にも問題があり、そういうデザインづくりが足りていないのでは?という視点も忘れてはならない。
その上で、長期的にやる気を持続させるためには、自他ともに、内発的動機付けが必要であると考えている。私の例でいうと(変な人だと思われてしまうかもしれないが)、この内発的動機付けのために、職場の机に仕事の意味、志、ありたい姿などを貼って、仕事に対しての意味付けをして、いつでも見返せるようにしている。
大学院でも「組織行動・リーダーシップ」、「人材マネジメント」などの分野で学んでいる最中だが、結局人間は外発的であろうと内発的であろうと「インセンティブの奴隷」なのである。
自分と他人をやる気にさせる方法については、それぞれ、どんなことに欲求を持っている傾向にあるのか、その欲求を満たしてあげられるようにインセンティブを設計してあげることが、やる気スイッチを押してあげることに繋がるのである。