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第326回/パラダイム Persona 9H 納品[鈴木裕]

2021年12月25日に購入を決断してオーダーしていたスピーカーが4月25日に納品された。カナダのメーカー、パラダイムPersona 9Hだ。重量が86kgあるので、ピアノ運送の二人によって2階に上げてもらい設置。とりあえずのセッティングで鳴り出している。実は一週間後には人が来て取材する予定が入っており、果たして聴かせるに値する音になっているのかまったく不明。メーカー資料には「エージングは絶対必要です」「箱から出してすぐにワールドクラスのパフォーマンスを期待しないでください」「200~300時間が必要です」と記されている。ちなみに太字にしたのは実際そこも太字だったのでそれを反映した。

高さ132cmに厚さが30mmのインシュレーターなので、135cmという立ち姿。

基本的な概要を短めに書いておくと、6つのドライバーユニットを使った3.5ウェイ。
・ツイーター     25mm径 ベリリウムの振動板
・ミッド       178mm径 ベリリウムの振動板
・フロントウーハー  215mm径×2
          マグネシウムとアルミの合金にセラミックコーティングの振動板
・リアウーハー    215mm径×2
          マグネシウムとアルミの合金にセラミックコーティングの振動板

クロスオーバー周波数はオフィシャルウェブサイトには掲載されていないが、海外のウェブサイトに数値が出ていたので、それを参考程度に書いておくと、
2.4 kHz  24dB/oct. (パッシブネットワークによって)
400 Hz  24dB/oct. (ミッドのローカットはパッシブで。
     フロントウーハーのハイカットはDSPで。
     フロントウーハーはローカットせず)
200 Hz   12dB/oct. (リアウーハーのハイカット。DSPにて)

ツイーターとミッドはPPAレンズという名の、穴空き位相調整機が取り付けられている。

ちなみにDSPによってコントロールされるフロントウーハーとリアウーハーのカット周波数は部屋のレゾナンスによってはそのクロス周波数自体も変化する。そういった意味でも参考までに、ということ。
そしてそれぞれのウーファーのペアは、音楽信号がA/D変換され、DSPでf特を補正した後に内蔵するDクラスのパワーアンプで駆動。それぞれ定格で700W、ピークで1400Wの出力を持ったアンプ部だ。そのため、それぞれの後ろの下の方に電源ケーブルを接続することになる。

エンクロージャーの形式は密閉型。材質は上から見て湾曲した本体がHDF(硬質なMDFのこと。これの薄いものを7枚、制振性を持たせた接着剤で接着した上、形状を固定。内部のブレースとフロントバッフルは重量級のバーチ合板を組み合わせている。その上で、フロントにはその上からアルミの押し出し材のバッフルが取り付けられている。

「P」のマークはLEDで点灯する。
スパイクの1本。ネジの外径は約19mm。かなり太い。

足元は4点支持のスパイクで、スパイクはかなりの極太。スパイク受けは付属していないため、ティール/CS-7、アヴァロン/アイドロン、ソナスファベール/ELECTA AMATORⅢと使い続けてきたオーディオリプラスのOPT-GR-SSを使用。スピーカーケーブルはコード・カンパニーのコードミュージック、ジャンパーケーブルも同じくコードミュージック。そして内蔵アンプ用の電源ケーブルはとりあえず付属のもの。黒いメッシュがかかっていて、中はやや太めの白い被服で硬めのケーブル。文字が印刷されているのだが読み取れない。プラグはモールドだが付属のものとしてはけっこう力が入っている。

接続して、チェックCDで左右や正相/逆相などをチェック。最初にエリック・クラプトン『アンプラグド』を聴いたが、鳴らしだしにしては意外とまともな音だった。

現在、ゴールデンウィーク前の締め切りに忙殺されているため、それが終わったらまずはスピーカーのセッティングの精度を上げる。何回も書いている「左右をシンメトリーにミリ単位で設置」というのを行う予定。言うのは簡単だが、左右の高さ、前後方向のスラント、それぞれの左右方向の直立、左右の内振りの角度。これらを1mm以下の精度で合わせるのが意外と難しい。そもそもたとえば右に傾いたり、左に傾いたりしないように、という場合、どこを基準にするか検討するところからのスタートになる。側板や低板に水準器をあてればいいのか、もっと別の基準点を探し出すところからなのか。重りのついた糸を使うのか。このあたり、ティールでずいぶん苦労したのでノウハウはあるのだが時間がかかる。

ウーハーの振動板はマグネシウムとアルミの合金にセラミックをコーティングしてあるようだ。
付属の電源ケーブル。左右チャンネル分の2本。白い被服に何か印字してあるが読み取れない。

それと前後して、電気が通る部分の端子にアンダンテラルゴのSuperTMD処理をしたい。本来、慣らしの前にやるべきなのだが、なにしろすべてが見切り発進、泥縄状態。

たとえば、ツイーターとミッドのドライバーユニットに取り付けられた網のようなもの(PPAレンズ)や、ドライバーユニットをエンクロージャーに取り付けるやり方にもいちいち特徴があり、設計思想からその実態まで紹介したいのだがものすごくたくさんあり過ぎるので割愛。メーカーによれば「5年以上の歳月と1億円以上の開発費」を使って開発したスピーカーなので、ドライバーユニットひとつひとつ、取り付け方それぞれに、理詰めでもあるし、熟成もされた痕跡があって紹介するだけでも大変だ。そういったことは鳴らしこんでいって、感覚的に自分のものになった段階でまた紹介していきたい。

ウーハーのストロークが50mmあり、対応した構造。アルミのバッフルは緩やかな曲面。

クルマでもオーディオでも、高い買い物をする時は徹底的に調べるし考えるし、ある意味購入を決断する時点ではその対象に対して飽きているというか、ゲップをするとPersona 9Hが出て来ちゃうくらいになっているが、実際に手元に来てそのクルマとかスピーカーとの生活が始まるとまたモチベーションが復活してくる。そんなスタート。カスタムカラーは、本体がキャンディ・アップル・レッドで、フロントバッフルやウーハーの振動板、PPAレンズがマット・ブラックという組み合わせ。これも実際に見ていい感じ。
ちょっと鳴らしただけでも相当にとんでもないポテンシャルのスピーカーだが特に低音の表現力が考えていた以上に凄い。

スピーカー端子のところ。パラダイム Persona 9H。CRAFTED IN CANADA。

(2022年4月29日更新)    第325回に戻る


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鈴木裕(すずきゆたか)

1960年東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。(連載誌)月刊『レコード芸術』、月刊『ステレオ』音楽之友社、季刊『オーディオ・アクセサリー』、季刊『ネット・オーディオ』音元出版、他。文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)。『オートサウンドウェブ』グランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員、音楽之友社『ステレオ』ベストバイコンポ選考委員、ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテスト審査員。(2014年5月現在)。


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