
バルトルド・クイケンのバロック・フルート基礎講座
フラウト・トラヴェルソ(バロック・フルート)の世界的第一人者であるバルトルド・クイケン氏によるフラウト・トラヴェルソ基礎講座に行ってきました。
内容は、トラヴェルソの構え方から、呼吸、タンギングまでの演奏の土台となる部分です。今回は前田りり子先生が通訳をしてくださいました。
私のようなバロック・フルート初心者にはとてもありがたい講座。
しかもB・クイケン氏のお話を直接聴けるなんてとてもラッキー!
B・クイケン氏は前日のコンサートで2時間演奏されたので、お疲れなのではと思いましたが、そんなことはなく、ジーンズにシャツというカジュアルなスタイルで、スッキリとした雰囲気で登場。身長がとても高いのですが(180cm以上あるなあ)、背筋がスーッとして姿勢が綺麗で75歳には全く見えません。
今回は受講者約30名でクイケン氏を囲んで輪になって実践も交えての2時間でした。
以下は、B・クイケン氏のお話からメモしたものです。
1.構え方
まずは重心を見つける。立っている時に自分のカラダが重くない場所を探すこと。
左や右や前に偏らないこと。
2.姿勢が大事
頭までが背中だと思って、まっすぐにする。
音がおかしいと思ったら、壁に背中をくっつけてフルートを構えて手が壁に当たらないように左に回して吹いてみる。
実は、良い音が出ていない時には、楽譜を見るために腰を曲げて、首を前に出していることが多いのだそう。
3.リラックス
リラックスして、いつでもすぐに吹ける準備をしておく。
楽器は握りしめないようにする。
私は、シャワーを浴びている感じをイメージしている。
ホッとするでしょ。そのイメージを持ってください。
4.呼吸
呼吸は、やたらたくさん口を開けて吸うのではなく、必要な分だけ吸うようにすること。
風船に肋骨や背骨を描いたものが胸に入っていると想像して、その風船に息を入れます。全体に息が入るように、風船がまあるくなるようにイメージする。
口だけではなく、喉や、肩甲骨のところや背中などに穴があって、そこから吸うイメージをしてみる。
5.喉を締めない
しゃべっている時の『声』は音と響の間に境がない。
喉に力が入っていると、音も硬くなって切れてしまうので、普通にしゃべるようにあたたかな息で吹く。
6.体で音を響かせる
体のお腹の方から頭まで、音域によって響かせる部位が違う。
例えば、中音Dは喉のあたり、中音Fは鼻腔のあたり。
すごく時間はかかるけど、音を響かせる体の部位を自分で見つけることが大事。
7.タンギング
モダン・フルートのタンギングでTukuTukuやTekeTekeが始まったのは1830年以降。
それ以前のタンギングはクヴァンツの本に書かれているタンギング方法。
ti、di、ri、Did'llという発音。
喉は開いたままの状態にする。
ちなみにTukuTukuでは喉が閉まってしまいがち。
以上です。
今、ちょうどタンギングを勉強しているので、B・クイケン氏のタンギングのお話はとても参考になりました。
前田りり子先生のクヴァンツ講座でも、”Did'll”という発音は、日本人はほとんどできないとおっしゃってました。
クイケン氏のようなドイツ語や英語を日常的に話す人でさえ、”Did'll”という発音は難しいというお話をしてくださいました。
「私も何年もかかった。この発音は難しく、まだできていなかった時は、それが必要な曲(16分音符が長く続くような)は人前で吹かなかったよ。それは古楽の演奏としては嘘をついているということだからね。誤魔化して演奏するのは嫌だったんだ。」
なるほどなあ。すごくわかったけど、練習しかないんだなと改めて思いました。
そして、練習のアドバイスとしては
「ゆっくりやると、かえって難しい。まずは同じ音で、少し速めでリズミカルに練習してみると良いですよ。」
と3拍子でDid'll、Did'll、Did'll、と3回繰り返すところを実際にやってみてくださいました。
また、トラヴェルソでtukutukuでタンギンしたものとDid'llでの音を比較してもくれて、やっぱりtukutukuは強すぎて、せっかくのトラヴェルソのふんわりした音が切れてしまいました。
やっぱりこの楽器に合わせた当時の発音は大事なのだと納得!!

あっという間の2時間。
もっとリラックスできるようにしなきゃなあ。楽譜見すぎて、首が前に出ちゃって音色に影響するのはよくないですね。自分の姿勢を見直すのにも良いきっかけとなりました。
これからバロック・フルートを始めたい方にも参考になったら嬉しいです。
講座ではフラウト・トラヴェルソの楽器を持った方が30人も集まって、一緒に勉強。バロック音楽好きの仲間が結構いるんだなあと嬉しくなった1日でした。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
過去の記事は各マガジンからもご覧いただけます。
楽しんでいただけたら幸いです。
スキ&フォローをしていただけたら大変励みになります。