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印象派のモネとドビュッシー

展覧会『モネ 睡蓮のとき』が国立西洋美術館で開催中です。

印象派を代表する画家として親しまれるクロード・モネ(1840~1926年)。
彼は「光の画家」と称されるとおり、生涯にわたって光の表現を追求した画家です。パリ万博で睡蓮を目にしたモネは、自宅の隣の敷地を買い、池を造り、睡蓮を植えました。睡蓮を描き始めたのは57歳ごろ。そこから睡蓮を描き続け、モネの<睡蓮>は世界中におよそ300点以上あると言われています。


一方、クラシック音楽の「印象派」の代表といえば、ドビュッシー(1862-1918)。
連続的な不協和音や、多数のリズムパターンの併用などにより、和声進行やメロディーと伴奏のようなはっきりした輪郭線は存在しなく、曖昧で捉え所がないのが特徴です。

ドビュッシーとモネの交流があったとされる時期は1889年ごろと言われています。モネ49歳、ドビュッシー27歳くらいのころ。ドビュッシーは、芸術家の社交の場であったカフェや、象徴主義の詩人ステファヌ・マラルメの自宅で行われていた「火曜会」に足を運ぶようになり、そこで印象派画家たちと出会い、それぞれ絵画や音楽からインスピレーションを得ていたようです。さらにパリ万博で出会ったガムランに強く惹かれます。曖昧なメロディーラインなどの印象主義音楽要素、アジアの音階を取り入れるようになり、独自の世界を作っていきました。

ドビュッシー : 前奏曲集 第2巻;7.
《月の光が降りそそぐテラス》 ピアノ 舘野泉

ドビュッシーのピアノの曲から1曲。この曲は『前奏曲集 第2巻』に入っています。ドビュッシーが50代の円熟期の作品です。地味な曲ですが、複雑な響きは、謎めいた月の光が注ぐ様子を描写しています。水面が優雅に波立ち、官能的な香りが漂ってきそうです。水を表現したピアノの曲は素敵ですね。

モネの絵画は、その色彩が生む繊細なハーモニーから、しばしば音楽にたとえられました。
モネとドビュッシーの共通点は、香りまで漂ってくる空気感と時間の流れが作品から感じられることではないでしょうか。ドビュッシーの物憂げなメロディーや微妙に変化するハーモニーと、モネの描く光や色の表現とが重なってきます。


こちらは女優の石田ゆり子さんが印象派の巨匠・モネの世界にひたる、フランス旅の番組です。モネの庭や家、マルモッタン・モネ美術館の作品群を見ることができます。
https://tver.jp/episodes/ep1vdyp5c9



モネ:睡蓮の池、緑のハーモニー

モネとの出会い

私がモネと出会ったのは高校1年生の時でした。美術部だった私は、美術本にあったモネの<睡蓮>に心惹かれていました。風景画を描くにあたって、近所の公園を散策していたところ、ほぼモネの絵<睡蓮の池、緑のハーモニー>と同じ場所を発見。そう、睡蓮が咲く橋のある池です。「これモネの絵じゃん」と思った私は、早速キャンバスにモネそっくりのこの構図を描き始めました。実は、モネが日本の太鼓橋を庭に取り入れていたなんてことは知らず、その景色がモネの作品にしか見えなかった私は、モネの色を使ってみたい!と、たくさんの油絵の具を取り出し、特にボルドーやバイオレットなどの色を試して使って黙々と描いていました。
すると、先生が私のキャンバスを見ながら、「大人になったらヨーロッパを旅しなさい。空気の色を感じるんだ。」

私はずっとその先生の言葉を胸にいつかパリへ!と思っていました。日本とは違う空気の色…。28歳でようやくパリへの一人旅が実現。確かに空の色も雲の形も自分の住んでいた町とは全く違いました。毎日いろんな美術館に通い、そしてオランジュリー美術館でモネの本物に出会いました。憧れていた<睡蓮>の絵に囲まれた、贅沢な楕円形の空間に感動して、しばらくそこにぼーっと立ち尽くしていたことを思い出します。

今回の展覧会はそんな、モネとの出会いを思い出させてくれました。
当時、お世話になった美術の先生(現在88歳)は、今でも彫刻家として、元気に作品と向き合っています。


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