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フラウト・トラヴェルソ祭 バルトルド・クイケン

フラウト・トラヴェルソ(バロック・フルート)の世界的第一人者、バルトルド・クイケンの演奏を聴くことができる『バルトルド・クイケンとその仲間たち』というコンサートに行ってきました。

大フラウト・トラヴェルソ祭

このコンサートは、B.クイケンに薫陶を受けた日本人奏者7名が、今しかできないアンサンブルを求め集結したもの。
B. クイケンはすべてのプログラムを演奏し、アンサンブルの相手は次々に変わっていくというスタイルのプログラムでした。
普段はほとんど聴くことのない、5本のフルートのための協奏曲や四重奏など、トラヴェルソならではの選曲はとても新鮮でした。
まさに、大フラウト・トラヴェルソ祭!
こんなコンサートははじめてでしょう。

そして最後にトリとして登場した日本の一番弟子である有田正広氏とB・クイケン氏の演奏は、ことのほか音色が美しく、L.N. クレランボーのフルートの曲は初めて聴きましたが、一音一音が軽いのに凛とした美しさで、ほどよい緊張感が保たれていました。音色はとても柔らかく、かつ、丸みを帯びた音の輪郭がはっきりとしていて、とても綺麗なのです。

最後に、B・クイケンからのご挨拶の中に、日本人がなぜバロック音楽に魅了されるのかというお話がありました。

日本人はバロック音楽が好き?

私は40年にわたって、初めは個人で、その後はオランダにあるハーグ音楽院とブリュッセルの王立音楽院で教えましたが、その間に教えた日本人の生徒は約20人です。毎年、日本人の生徒はいましたよ。クラスの半分が日本人の時もありました。
多くの元生徒たちとは良き友人になり、今晩ここで一緒に音楽ができることをとても嬉しく思います。

バロックフルート奏者に限らず、日本の音楽家がなぜ、ヨーロッパの古楽、特に17世紀と18世紀の音楽にこれほど魅了され(そして成功を収め)るのか、私は不思議に思っていました。ヨーロッパの音楽家には、日本の伝統音楽を同じくらい熱心に、そして理解して学ぶ人はほとんどいません。日本の音楽家たちはバロック音楽の強固でバランスのとれた型と、なおかつ力強く高貴で優雅な(ただしやや控えめな)感情表現の独特な融合に魅了されているのでしょうか。
私には、日本の芸術と社会が、絶えずよく行き届いた美と配慮の要素を含んでいるように思えます。日本の音楽家は、西洋のバロック音楽にもこれらの特徴を見出して、親しみを感じているのでしょうか。

私は、よく生徒たちにこの質問をしましたが、誰も明確な答えを出してくれませんでした。

まるで、それは合理的で説明可能な選択というより、むしろ無意識で言葉にできない気持ちであるかのようでした。

結局、これはそれほど驚くべきことではないのです。音楽と言葉は2つの異なるコミュニケーション媒体であり、それぞれが異なるレベルで機能しているのですから....とにかく、私はいつも、日本の同僚や生徒たちが古楽のなかに何らかの形で自分自身というものを認識し、自分の居場所であると感じているのを見てきました。彼らと私は、共通点が大変多いので、彼らに教えたり、一緒に仕事をしたりすることは、私にとって喜びとなったのでした。
バルトルド・クイケン(プログラムより一部抜粋)


バロックフルートの音色に心奪われ、モダン・フルートからバロック・フルートに切り替えて2年経ちました。音で語り合えるようなバロック時代の遊び心あふれる音楽には、ジョークのような音符があったり、即興的なものもあったり、ダンスのステップがあったりと、そこに集う人たち同士の親密な関係が何となく好きなのかもしれません。
クイケン氏のバロック音楽に「自分の居場所を感じている」というお話は、私にとってもしっくりくる感じがしました。

東京のバロック・フルート好きが集まった、心温まる満席のコンサートでした。
翌日は朝からバルトルト・クイケン氏のバロック・フルート基礎講座が開催されました。


<プログラム>

J.B.d.ボワモルティエ(16891755):五本のフルートのための六つの協奏曲Op.15(1727)より第5番イ長調
演奏:クイケン、長島、野崎、前田、菅

F.クープラン(1668-1733):「諸国の人々」(1726)より第1オルドル<フランス人>ホ短調(抜粋)
演奏:クイケン、前田、折原gb、渡邊cemb

W.F.バッハ(1710-1784):フルートニ重奏ソナタへ長調 F.57
演奏:クイケン、菅

A. ドルネル(1691-1765)
サンフォニー集(1709)より四重奏によるソナタ ロ短調
演奏:クイケン、新井、野崎、折原gb、渡邊cemb

-休憩ー

J.S. バッハ(1685-1750):フルートとチェンバロのためのソナタイ長調 BWV1032
演奏:クイケン、渡邊cemb

M. マレ(1656-1728):「トリオ曲集」(1692)より第2組曲ト短調(抜粋)
演奏:クイケン、相川、折原gb、渡邊cemb

L.N. クレランボー(1676-1749):シンフォニア第7番ソナタイラ・マニフィク>ホ短調
演奏:有田、クイケン、折原gb、渡邊cemb

<B・クイケン プロフィール>

B・クイケン氏は1949年3月8日ベルギーに生まれました。
二人の音楽家の兄、ヴィーラントとシギスワルトの影響で、音楽を学び、ルージュ音楽院、ブリュッセル王立音楽院、ハーグ王立音楽院ではモダンフルートを学びましたが、その勉学中に素晴らしいオリジナルのバロックフルートを見つけるという幸運に恵まれました。そして、博物館や個人のコレクションにある本物の楽器の研究や、さまざまなフルートやリコーダーの製作者とのコラボレーション、17世紀〜18世紀の資料の研究に基づき、現在もオリジナルの楽器で古楽を演奏しています。また、ブリュッセル王立音楽院、ハーグ王立音楽院でフラウト・トラヴェルソの教授を務めておられます。

今回、会場となった五反田文化センター音楽ホールは250名のホールでしたが、壁面が木製の、心が落ち着くアットホームな雰囲気のホールで、今回の企画にぴったりという感じがしました。

バロック・フルートを聴いてみたい方は、公演録画のアーカイブ配信をどうぞ。
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