バッハを聴く 調布国際音楽祭2024 音楽の捧げもの
調布国際音楽祭2024の最終プログラム『バッハコレギウムジャパン 音楽の捧げもの』を聴きに行ってきました。
「調布国際音楽祭」ってどんなフェスティバル?
音楽でまちの人々に感動を届けることを目指し、「バッハの演奏」、「次世代への継承」、「アートとの連携」をテーマに、クラシック音楽を中心とした音楽祭として2013年に「調布音楽祭」の名称で始まりました。
調布市在住で世界中から注目を集めるバッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督、鈴木雅明氏の監修のもと、エグゼクティブ・プロデューサーに鈴木優人氏を据え、手作りの感覚とクオリティを両立させたラインナップで親しまれ、年々注目度も増しています。2017年には、国際色豊かなプログラムに広げるため「調布国際音楽祭」と名称を改めました。
そして、12回目を迎えた今年のテーマは、「MUSIC WITHOUT BORDERS」。異なる文化や言語の壁を越え、音楽で心がつながる瞬間をお届けします。
(調布国際音楽祭公式ホームページより)
いつもと違う演奏スタイル
さて、今回は《音楽の捧げもの》が聴きたくてやってきました。
いつもの定期演奏会のBCJと違うなあと思ったら、みなさん立って演奏されていました。オペラシティでは、器楽奏者は座って演奏。合唱のみ立って歌うので、そこが違ったのでした。今日は器楽奏者だけなので、チェロ以外の方は立って演奏。カラダ全体で演奏している姿はとてもイキイキしていて、また新たなBCJが聴けて良かったです。
《音楽の捧げ物》の楽器編成は、ごく小さなソロ編成による室内楽で、二曲のリチェルカーレに鍵盤楽器が想定されているほか、トリオ・ソナタと無限カノンには、フリードリヒ大王お得意の楽器であるフルートがヴァイオリンとコンビを組みつつあらわれますが、コンサートホールが大きいので、弦楽器を追加して編成を組んで演奏されました。
この曲のフルートがなんともいえず、いいんです。今日の鶴田洋子さんの演奏も、とても透明感のあふれる気持ちのいい音色でした。コンサートから帰ってきてからも、ふとこのフレーズが蘇る、そんな不思議な曲です。私としては、20年後も毎日この曲を瞑想するように弾きたいというのが目標。自分にとっては気持ちが穏やかで静かになれる瞑想音楽だったのだということに気づきました。フルートの先生に話したら「とても難しいですよ」と。そりゃ今のレベルではそうですが、バッハの曲で簡単なものは一つもないので、まずは楽譜を用意。確かに、フラット3つで音が出にくいわ、指がむずかしいわで進まない。少しずつ練習を積み重ねていきたいと思います。
《音楽の捧げもの》ができるまでの背景
フリードリッヒ大王から父バッハを招待したいということを伝えられていた次男カール・フィリップ・エマヌエルは、父バッハに何度か手紙を書いていました。それがようやく実現したのが1747年5月7日、バッハが62歳の時です。エマヌエルはちょうど1子をもうけ、おじいちゃんになったバッハは初孫を見たくてベルリン・ポツダム旅行をする決意をしたようです。バッハは宮廷に入ると、喜んだ大王によってただちに広間に招じ入れられます。それからバッハは、宮廷に入っていたジルバーマン・クラヴィーア(フォルテピアノ)を試奏し、そのあと、大王の与えた「主題」に基づいて、フーガの即興演奏を行います。その見事さは、大王をはじめ、居ならぶ人々の驚嘆を誘います。さらにフリードリヒ大王は「6声のフーガとして即興演奏してみて!」と言い出したので、さすがのバッハもこのムチャぶりに白旗を揚げ、宿題として持ち帰り、「音楽の捧げもの」として完成させ、フリードリヒ大王に献呈します。
色々な謎
さて、この超難しいフルートは、大王がフルート奏者だったからなのか?かなりテクニックもある人だったと言われているので、それなりに高度なものを作ったのではないかと思われます。それとも、人前で恥をかかされたことに対するバッハの「仕返し」だったのか?指揮の鈴木雅明氏が「『捧げもの』とは『いけにえ』という意味でもあります」と意味深なお話もされていました。大王が宗教に興味がなかったことも関係あるのではないかと思われます。また「大王の主題」の真の作者は次男カール・フィリップ・エマヌエルではないか?という説もあります。すごく難しいお題を大王と画策して作ったのかもしれません。そして、この曲をフリードリヒ大王が演奏したのかもわかっておりません。最終的にはこの曲の印刷楽譜は大王の妹アンナ・アマリアへ渡り、彼女の楽譜コレクションに加わったことは事実です。
<プログラム>
ブランデンブルク協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV 1046
3つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調 BWV 1064R
「音楽の捧げもの」より
3声のリチェルカーレ
2つのヴァイオリンのための同度カノン
2声の反行カノン
5度のフーガ・カノニカ
6声のリチェルカーレ(鈴木優人編)
無限カノン
ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV 1048
管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV 1069
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