ピアノの運指の秘訣 その1
クラシックピアノの場合、楽譜に書いたものをそのままの形で弾く必要がある。その時に指の使い方をよく考えないと、弾けるものも弾けなってしまう。だから運指はものすごく大事だ。何せ鍵盤88鍵に対し、指は両手で10本だけ。そこで様々な工夫や技が必要になってくる。練習曲を多くやると、無意識に適切な指使いが身につくけれど、そんな遠回りはやっていられないという人に向けて。
まず、ピアノの楽譜は通常2段(たまに部分的に3段になっていたりするけれど)なので、上段を右手、下段を左手で弾くものと考えがちだが、そこは自由だ。確かに通常はそのまま上下で分業するのが1番弾き易いのだが、部分的に右の音を左で取ったり、左の音を右で取ったり、または手を交差させてトップの音を左で取ったりするのが効果的な場合さえある。これはロマン派以降の曲で顕著だ。手の大きさ的に弾くのが難しい場合、この方法で演奏効果を高めることもできる。プロピアニストの演奏動画から学ぶことも多い。左右を交差して、特定の音を際立たせるような目的で役割を入れ替える場合、かなり頭を使う。どこをどう聴かせたいかというプランに関わるからだ。研究、分析好きな人には楽しい方法だと思う。
続いて1(親指)で鍵盤をダブルに押さえる方法。これは楽譜に表示がある場合も多々ある。幅広い和音で、1(親指)で2音同時に押さえる方がやり易い、またはそれしか方法がない場合がある。これは簡単なので誰でもできる。
連続した速いパッセージを弾く場合、何度も指をくぐる必要がある。黒鍵の位置により、選択肢が限られることがほとんどだけれど、3(中指)でくぐるか4(薬指)でくぐるかは人によってやり易さが違ったりする。楽譜に運指が付いている場合、それは専門家により熟考されたものなので大変参考にはなるけれど、必ずしもその運指があらゆる人に向いているわけではない。その証拠に、同じ曲でも何百通りもの指使いが存在するのだ。異なる編纂者による、同じ曲の楽譜を見比べてみるとよく分かる。
一般的に、指をくぐる時、ひたすら1(親指)と2(人差し指)を使って細かく変えるようなは弾き方はやりにくい。また速いパッセージで、和音でもないのに黒鍵に1を持ってくるのも、やりにくい上ミスが増える。くぐる必要もないのに、くぐる回数を無駄に増やすのもミスが増える。ただし、アクセントをつけたい音に強い指を使うため、わざと一見不要な部分で指を変えることもある。
ゆっくりな曲は、極端に言えば一本指でも弾けてしまうこともある。でもそれはお勧めしない。フレーズが感じられない、音楽性のない弾き方になってしまうからだ。「今日は暑いねぇ〜」というのが「きょ・う・は・あ・つ・い・ね・え」と聴こえるようなものだ。そして何より弾きにくい。
大事なのが、曲の先を見越して指使いを決めることだ。通常楽譜に書き込まれている運指は、次のパッセージに繋がるよう、よく考えられてる。一箇所の弾き易さの問題ではなく、いかにフレーズが繋がって聴こえるか、どの指にどの音を当てはめるとより音楽的に楽に表現できるか、など本当にひとつひとつ熟慮されているのだ。だから弾き易さだけのために無闇に変更すると、曲全体が損なわれる場合がある。それでも、手の大きさや指の比率はまちまちなので、それが最高とも限らない。こういう時に先生に質問するといいのだ。運指はクラシックピアノの独学で、大変な部分のひとつ。
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