見出し画像

ピアノテクニックにおいて最も重要な指は

ピアノは、5本の指を使って弾くのは周知の事実であるけれども、最初から均等に使える人はいない。特に4、5の指は、それなりのトレーニングをしないと、自由に動かすのは難しい。日常の手の動きは、1、2、3の指を動かせば完結する動作がほとんどで、4、5は補助的にしか使わないからだ。

では、鍵盤を自在に操る上で要となる指はどれかというと、それは4だと思う。確かに指自体は、5の方が細くて弱いが、5には端の指としての機能があり、単体であれば、コントロールは比較的し易い。4と5が絡むからこそ、動きが難しいのである。一方4は、構造的に3にも5にも引っ張られ、独立して動かすのが最も困難な指である。だからこそ、4が自由に使えるかどうかが、ピアノテクニックのスムーズさを左右するのである。

独学で何年もクラシックピアノをやっているという場合、4が使いこなせていないことが多々あると、観察していて気づいた。例えば、右手でファ・ラ・ド・ファという和音と、ファ・シ♭・レ・ファという和音を交互に弾く場合を想定してみる。これは分散和音であっても同様である。運指の定石を身につけ、4が自在に使える人は普通、ファ・ラ・ド・ファは1、2、3、5で、ファ・シ♭・レ・ファは1、2、4、5を使う。しかし独学でやっている人だと、ファ・シ♭・レ・ファのレに対しても、3を使う人が多いことに気づいた。ここで4を使うと、圧倒的に指の動きが少なく、無理な手の緊張もなく、スムーズに2つの和音を行き来できるのだが、3を使ってしまうと、指をバタバタ動かさざるを得ない。結果、練習しているのになぜかいつまで経ってもスムーズに弾けない、ということになってしまう。これはテンポが速い場合、決定的な違いを生む。

左手も同様に、4を使うべきところは多い。例えば左で属7の和音(コードでいうとセブンス)を押さえる際、第2音目は4を使った方がスムーズな場合が多くある。(しかし全てではなく、3の方が良い和音もある)

スケールなどでも同様で、くぐったり跨いだりする支点として、いかに4を自由に使えるかということが、速いパッセージを楽にスムーズに弾く上で、非常に重要だ。ここで4を避け続けると、エチュード的なものをなめらかに弾くのはほぼ不可能になる。4が担う役割は大きい。

たくさん練習しているのに弾けないとき、そもそも運指が適切でない場合が大部分だ。残りは、鍵盤の長さを十分生かせていない場合かと思う。鍵盤は奥域があるので、その長さを最大限利用して、次の鍵盤へ、最もスムーズに移行できるポイントを押さえる必要がある。闇雲に弾けない箇所を繰り返すより、自分の手の形を観察して、そのポイントを探り出した方が効率が良い。

ピアノをスムーズに弾けるということは、楽に弾けるということだ。無駄な動きがなく、合理的な運指を使うということだ。指は片手につき、たった5本しかない。一本一本が大事な役割を担い、一本たりとも無駄にはしたくない。4が使いこなせないと、無理な運指を採用せざるを得なくなり、手全体に負担がかかる。結果、なめらかに弾けないことに加え、あちこち痛くなったり、すぐ疲れたりする。

もし、久々にレッスンを受けて、運指についてしつこく改善を要求されたら、それを受け入れた方が上達する可能性が高い。楽譜を再現するにあたって、ピアノの運指は、とてもとてもとても大切なのだ。ここを疎かにすると、一切上達しないと言っても過言ではない。

もし完全独学でマスターするのなら、運指付きの譜面を見て、特に4をどのように使うのかという点を、じっくり研究することをお勧めする。最初はやりづらいと思っても、プロが付けた運指には、ひとつひとつに深い意味があり、それらは、より楽に、よりスムーズに、より音楽的に表現できるよう、熟考されたものなのだ。




いいなと思ったら応援しよう!