●プレイングについて(1) ―プレイングと字数制限とシーン数―
note2回目は、『マスターから見たプレイングについて』です。
プレイングには色々なジャンルや側面があると思っているので、ナンバリングしています。
「長くやりすぎて気づいていなかったが、マスター業って結構高度だよね」という会話を某偉い人としたのが、今回noteを書き始めたきっかけの一つ of them。
なので、こういう切り口の話しは積極的にしたいと思っています。
そのうちほら、集合知みたいな何かが生まれるかもしれないし。なんて期待もしたりしつつ、ね!
というわけで、今回はこんな感じで書いていこうと思います。
じゃーん!
1)プレイングとジスウセイゲーン
2)プレイングと描写の関係
3)シーン数と提案
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1)プレイングとジスウセイゲーン
具体例とあわせつつ、想定していきましょう。
まず、WTRPGの依頼には参加してくださるPCがいらっしゃいます。
依頼は彼ら無しには始まりませんが、参加人数が増えれば増えるほど、プレイングに対して描写できる量に制限がかかってきます。
例えば、6人のPCが参加できるショートシナリオがあるならば、PC一人あたりに使える字数はざっと1000字前後。(2018年4月現在)
そして、プレイングは字数いっぱいいっぱいの場合で600字です。
そうなんです。
何も考えずにプレイングをまるっとコピーしたとして、MSが使える文字数は400字に過ぎない……!!
……おっと。誤解を呼びそうな表現ですが、実際にはコピペではマスタリングは進みません。マスターがプレイングそれぞれを判定(マスタリング)し、ストーリーとして構成し、執筆をすることになります。
この関係は、遺伝子のコーディング関係で用いられる、エクソンとイントロンの関係にも似ているなあ、というのがムジカの所感です。
ザックリした説明ですが、遺伝子情報にはエクソンとイントロン、という要素を有しています。
生体は遺伝子からタンパク質構造を作るのですが、この遺伝子情報のなかで実際のタンパク質生成に実際に用いる部分が『エクソン』。そうでない部分が『イントロン』です。
これを踏まえると、プレイングの中でもマスタリングの過程で大きく採用される部分は『エクソン的』といえ、そうでない部分は『イントロン的』、といえます。
イントロン的要素は全て切り捨てられるというわけでもなく、この中には、明確には用いられなくてもマスタリングや描写に修飾的な影響を与えることがあったりもします。
例としては、
エクソン的なものの最たるものは「会話」や「行動」プレ。プレイヤー(とキャラクター)にとって達成したい要素を多く含むものが該当し、リプレイ中で描写がほぼマストなものです。
イントロン的なものの例としては、「対策」「カウンター」「留意」プレ。場合によっては、キャラクター自身の過去や心情なども該当するかもしれませんが、場合によっては大きな流れ(例:依頼/判定の失敗)を変える力もあったりするので、決して侮ることは出来ない、いぶし銀的プレイングです。戦闘系統の依頼においては「戦術」などもイントロン的なプレイングに該当するかもしれませんね。
——さて。今回はプレイングと字数についての項ですので、話を戻します。
マスタリング結果をプロットに起こしていく中で、『エクソン的』要素は『字数を割くべき』要素。
これは即ち、『プレイングの中にエクソン的要素がどの程度入っているか』が、MSが使える字数にダイレクトに影響してくる、という事になります。
……おお。結構長かったですが、ここからが本題です。
我々MSは、実際にリプレイを執筆する段にプレイングを参照するので、
「エクソン的要素が残るのが多いほどジスウセイゲーンに苦しむことになり」
「そうでないほどプレイングを採用した上で追加表現を盛り込みやすい」
ということが言えます。
つまり、MSがジスウセイゲーン氏と闘うことになる根底はここにあるのです。
あなた(MS)がリプレイを書くのにどこか手が止まってしまったり、描写を増やせないことにストレスがかかる場合で、かつ、字数制限がちらついている場合を思い返していただきたいのですが、リプレイが効率よく書けないのは「リプレイの書き手であるワタシ/ボクの好不調」とは関係なく、ただ届いたプレイングが影響している……というのに思い当たる節はないでしょうか?
じゃあ、これはそのようなプレイングを書いたPL諸氏の問題だと——いうことでは、ありません。『プレイング』はその性質上、ほとんど全てがオープニングに依存するからです。
超えるべき障害への対応。その際に留意すべき事象。キャラクターの心境。投げかけたい言葉。これらのプレイングの対象は全てOPの中に存在するのです。翻れば、プレイング中のエクソンとイントロンの比率も、おおよそオープニングによって規定されることになります。
極端な例ですが、NPCと会話をするだけの依頼ではほぼほぼ全てが『エクソン』的プレイングが届くことになりますし、いつ誰が脱落するとも知れぬハードな戦闘依頼では会話をする余裕はあまりなく、落とし穴を避けるためにプレイングの字数を割いたプレイングが届くことになります。
……つまり、オープニングを書いた段階で、MS自身が字数で苦しむかどうかが大凡決まっちゃうわけです。うわぁい。
2)プレイングと描写の関係
結果として字数を費やすのが『エクソン』的プレイングと記しましたが、具体的に、どのような形で字数を使っていくでしょう?
例えば、プレイングに「私……貴方に聞きたいことがあるの」(18字)と書かれていたとします。
これに対して、「どうしたの?」と返事をすると、8字。
プレ「貴方は、あの事件が起こった時、何をしていたの?」(24字)
返事「それは……ちょうどシャワーを浴びていたよ。そろそろ寝ようとしていたところだったし……」(44字)
このような形で、『エクソン』に対する描写は膨らんでいきます。これに情景表現や心情などを加えていけば爆発的に字数を要するようになり、晴れてジスウセイゲーン氏とのご対面、となります。
先程、
「エクソン的要素が残るのが多いほどジスウセイゲーンに苦しむことになり」
「そうでないほどプレイングを採用した上で追加表現を盛り込みやすい」
と書いたのはまさにこの点で、『判定結果をひろくおさえた』リプレイとしての要素と、『読み物として優れた』リプレイは、時に二者択一な状況になってしまいます。
このような事態に対してMSは——詳細については省きますが、『二人以上のPCの描写をまとめる』、『台詞や描写、プレイング自体を省く』などで対応することになります。
しかし、そういう時に問題になるのが、『連続性を持った台詞/行動』プレイングにです。
会話を例に取ると、どれか一つでも欠けたら、会話の妙味が薄れてしまう。
熱のこもった、まさに入魂のプレイングでしょう。しかし、概してそういう時に、セイゲーン氏は立ちはだかる……。
これにたいして、MSはあまりに貧弱です。
例えば会話プレイングだけで600字届いた場合、先程の状況を例にとると400字までしか返事ができません。
(※プレイング外からの返事を要さない、たとえばPC間のやり取りの場合は互いのプレ/描写双方の字数を用いての描写になりますから、シーン辺りの字数を共有するため、相対的に豊かな描写ができるのはこのためでもあります)
あー! めちゃくちゃ無口なD○系の勇者なら余裕なんだけどなー!
少なくともムジカのNPCはめっちゃ喋るからなー!!!!!
そういうわけで、いざ執筆の際に悲しむことがないように、オープニングの段階で意識するのが大事、ということになります。
大事なことだから2度めくらい。
ただ、MSにもタイプがありますので、エクソン的要素がたくさん有る方が描きやすいMSもいらっしゃるでしょうし、その逆もいるでしょうから、塩梅は各MSのさじ加減になりますけどね。
3)シーン数と提案
各キャラクターに割ける字数の例として1000字、と申し上げました。
これは、リプレイの中の起伏を考えれば、序破急としても300字前後ずつ。起承転結として、250字ずつ——程度の比率で描写を行う事になります。
実際には100/5-600/300、100/300/350-400/150といった感じになるかと思いますが、例えば、「Q&A」といった形態や、シーン数が増えがちなプレイングの場合は、各シーン辺りの描写は加速度的に薄くなっていきます。
これ(=各シーン辺りの描写は加速度的に薄くなっていくこと)は、大本となる『エクソン』的プレイングの字数/要素が多い場合、それぞれに対する修飾的描写や返事の比率が減っていくことによります。
PBW——とくにWTRPGにおけるリプレイはノベルではありません(これがWTRPGの魅力だと、ムジカは思っています)。
シナリオの中でのマスタリング内容も反映しながらストーリーが構築されていきますから、このような場合では、妙味を損なっていく、ということになりえます。
というわけで、ここからは提案になるのですが、
字数に苦しんでいるMSは、「貴方が描きやすいと思える」プレイング、シーン数を踏まえたうえで、オープニングを作ってみるのはいかがでしょう。
もっと描写を盛りたい方ほど、依頼中の要素を減らすか、イントロン的要素となりえる注意点などを置くことで、自然とプレイングが分散されることになり、「描きやすいリプレイを書けるOP」がだせるようになるかもしれません。
逆に、描写が物足りないPLの皆様は、「プレイングのエクソン的要素を減らしてみる」のはいかがでしょうか。(この点については、MSごとにさじ加減は変わるでしょうが……)
発言の代わりに添えられた心情やスタンスが、PCの細かな仕草に反映されるかもしれません。
先に会話の例として用いたものを、改めて使いまわしますと、
「あなたの信じたいけれど、信じられないことに胸を痛めている探偵役美少女」という描写が加えられるかもしれません。そんな彼女に対して告げられる言葉が増えるかもしれないですし、「疑われていることに気づいている犯人だが、探偵役美少女のことを憎からず思っているあまり手を伸ばそうとして止めてしまう」みたいなアドリブが加わるかもしれません。字数が足りなかったら、全部できませんからね……。
もちろんこれらは、「こうしなければいけない」という類のものではありません。MSにとって、PLにとって、「こういうリプレイが好きなんだなあ」という要素を、より実現しやすくするための思考ツールの一つとして用いる……ことができるかもしれない、という、弱々しい提案にすぎません(笑)
これに沿わなくてもプレイングに合わせて書き方を変えることでも対応は出来る類のものではありますので、必須ではない……けれども、「良きリプレイってなんやねん」ってことを考えたとき、「書きやすいリプレイ」というのは一つの答えでもあるよなあ、というので、テーマとして取り上げてみたのでした。
長くなりましたが、以上です。おやすみなさい!