ブレッカー・ブラザーズ/ヘヴィメタル・ビバップ 1978
◆ブレッカーブラザーズ ヘヴィメタルビパップ
◆概要
1978年2月のフランク・のザッパヨーロッパ・ツアー終了後ドラマーのテリーボジオの契約が終了。すぐさまボジオと接近し録音が実現した作品。1978年9月発表。
1977年12月末のザッパのニューヨーク公演で目の当たりしたランディ&マイケルのブレッカー兄弟は、直感的に感じた演奏家の波長や、高度な格闘技的フィジカルのドラムをファンに体感させる作品を作りたいと判断。
ブレッカー兄弟とテリーボジオ、ニール・ジェイソンのベースが見事に激突するライブアルバム。
◆ヘヴィメタル・ビパップという造語
後にも先にもない斬新な造語を音で実現
アドリブと即興の「ビ・バップ」、どこまでも攻撃的で空中戦(場外戦!?)もできる「音のプロレス」を「ヘヴィ・メタル」というワードで表現し、2つを合体させた。
ジャズであり、フュージョンであり、ファンクであり、何よりマインドはアグレッシブな「ロック」であるのだ。
これらの要素を包括できるミュージシャンはほぼいないので「ヘヴィメタル・ビパップ」で造語させた。
◆参加メンバー
ランディ・ブレッカー - トランペット、キーボード
マイケル・ブレッカー – テナー・サクソフォーン
バリー・フィナティ - ギター、バックグラウンド・ボーカル
ニール・ジェイソン - ベース、リード・ボーカル
テリー・ボジオ - ドラムス、バックグラウンド・ボーカル
East River
Inside Out
Some Skunk Funk
Sponge長野
Funky Sea, Funky Dew
Squids
◆曲目抜粋紹介
East River
唯一のスタジオ録音。
出し惜しみせずに冒頭からボジオのドラムがド派手に展開。
チョッパー・ベースにサックスがそこから畳みかけるイントロ~ラップで激しく歌い上げる一連の流れが秀逸。
シンセでなくフェンダーローズをさりげない安心感。
ニューヨークというアーバン・ファンクを具体的に表現。Inside Out
ライブ録音最初の曲。
テリー・ボジオのタムの連打から攻撃的に畳みかけから始まる。
テーマのフレーズを吹いてからブレッカー兄弟交互のインプロのソロにギターのバリー・フィナティのハードロックなソロと続く。
ブレッカー兄弟はアドリブと即興の「ビ・バップ」を展開している。
そうした中でもボジオのドラムは容赦せず対峙する形で「音の格闘技」の様相を聴くにつけ、「どっちも負けるな」というスリリングな場面を堪能できる。Some Skunk Funk
スタンダードとしても有名なナンバー。
スタジオ録音よりも曲のスピードが速い。この速さでヤバさ倍増する。
ここでは特にランディ・ブレッカーのソロ終盤とボジオがランディの演奏を叩き潰すに来ている様でスリリングな展開。
隙間なく叩き、隙間ないブロウ(吹く)が激突する。そして全体のミストーンの無い音の応酬に酔いしれる。Squids
複雑なイントロとテーマ。バンドのアンサンブルが完璧。
中盤のベースとドラムの「空中戦」が散見される。
ここでは1音を確実に吹く兄弟交互のソロの対比であったり、対峙であったりと音の風景を堪能してる。
そこにいきなりをぶつ切りでテーマ部分に強引に戻る様、直感的なセンスが秀逸。
◆総評
ブレッカー・ブラザースとテリー・ボジオが同等に高度な「音のプロレス」を実現させたアルバム。
激しい演奏のテンションも、緩急のフレーズも即興も普段から1音をしっかり刻む基礎がなかれば無し得ないという演奏者への教示的作品。
膨大に参加した全ジャンルのスタジオ作品の「ワーク」から1アーティストとして「ミュージシャン魂」が解き放たれた作品。
センセーショナルなニューヨーク最先端サウンドがイケてる、手に汗握る名盤。