2012 ドナルド・フェイゲン、マイケル・マクドナルド、ボズ・スキャッグス ライブ・アルバム / The Dukes of September - Live at Lincoln Center
2012年ドナルド・フェイゲン、マイケル・マクドナルド、ボズ・スキャッグスの豪華3トップのライブ・アルバム。
1993年の「ニューヨーク・ロック&ソウル・レヴュー」の企画で顔を合わせていた。約20年近い時を経て3人の持ち歌とカバーで織りなす豪華なライブ盤。スティーリー・ダンのツアー・メンバーが演奏をバック・アップ。
聴かないまでもセットリストを見ただけで好奇心が掻き立てられる。
全18曲、一体どんな展開が繰り広げられるのか?妄想が止まらな過ぎる!
※アマゾン・ミュージックで視聴可能
曲目
People Get Up and Drive Your Funky Soul
Who's That Lady?
Sweet Soul Music
I Keep Forgettin'
Kid Charlemagne
The Same Thing
Miss Sun
You Never Can Tell
What a Fool Believes
Hey Nineteen
Love T.K.O.
Peg
Lowdown
Takin' It to the Streets
Reelin' In the Years
Lido Shuffle
Pretzel Logic
Them Changes
曲目感想
People Get Up and Drive Your Funky Soul
オープンニングはジェームス・ブラウンのナンバーのインストから幕を明ける。中盤から歓声が上がる。ここでJBをチョイスするセンス。選曲も相まって会場が冒頭から熱い!
Who's That Lady?
ほどなくJBからのアイズレー・ブラザースのカバーの流れたるや。。地味ながらも堪らない。。
クリーン・カッティングのギターからチョーキングがオリジナル通り。
ボズ・スキャッグス、ドナルド・フェイゲン(意外に熱唱でサプライズ)マイケル・マクドナルドの順番で3人がシェアして歌い上げていく。
オリジナル同様アーニー・アイズレーに成り切ってジョン・ヘリントンが多用するチョーキングで攻めまくる。
Sweet Soul Music
スタックス・ボルトのアーサー・コンレイの代表曲。
マイケル、ボズ、フェイゲンの順にボーカルを贅沢に繋ぐ。
この選曲。。3人の結論が出るわけもないファミレス井戸端選曲会議が目に浮かぶ。特にマイケルは以前からサザン・ソウルを熱血に歌いたかったのが伝わってくる。
I Keep Forgettin'
マイケル・マッナール(MCでのネイティブ発言的に記載してみた)の1982年のソロ・アルバム。
「あ、これを選ぶんだ」というサプライズ気味のチョイスだがAORとR&Bが絶妙にハイ・ブリッド。
Kid Charlemagne (滅びゆく英雄)
音楽の満腹中枢が既に来た感じに(カタカナ表記で)「キッド・シャルルマーニュ」は、スティーリー・ダンのアルバム「幻想の摩天楼」からのナンバーだが、これ絶対生演奏で聴きたいからニーズ高いはず。
イントロは「おお、(聴きたいけど)それやるんだ!」っていう会場の地味な反応なのも当然と言えば当然で、ギター・ソロがバンド史上屈指の難易度だからだ。
中盤から始まるギター・ソロの箇所になり会場が固唾を飲んで見守っているのが伝わる。ミス・トーンなく完コピで終わると「ヤベ、無事終わった」というドン引きに近い反応(初視聴だと若干鳥肌)。。
そして演奏はクライマックスに向かい引き続きジョン・ヘリントンはフリー・スタイルでソロを弾きまくる。そして曲が終了すると有終の美を称えるかのように拍手がマックスで襲う。
※ここはスタンディング・オベーションでもおかしくない。見た過ぎる!
The Same Thing
ここでガラリと流れが変わり、マディー・ウォータースのブルース・ナンバーをサプライズ投入。マディでしかも王道から少し外れた曲のチョイスに「ファミレス井戸端会議」は夜が明けてもやったんだな、という妄想を描きながら音数の少ないスライド・ギターにボズのボーカルを聴き入る。
Miss Sun
引き続きボズのミディアム・テンポのソロ・ナンバーを披露。
録音当時のジェフ・ポーカロのドラムにモロに似せて来ているのが聴いて分かる。天国にいるポーカロへの賛美と受け取った。
You Never Can Tell
チャック・ベリーのカバーは、聴いていてかつてビル・ワイマンの「Willie & the Poor Boys」のバージョンが思い浮かぶ。
アコーディオンが中間のソロを奏でルイジアナ・ザディコ・スタイルで胸が沸く。
というかボズの歌い方は参考にしてるだろうなと要らぬ妄想が浮かびながら聴いてしまう。。
What a Fool Believes
「ドゥービー・ブラザースの曲をあなたたちへ」というMCからマイケルが歌うと歓声が起こる。(そりゃ生演奏聴けば起こる)
スタジオ盤に忠実で高音のサビ部分は、女性コーラス陣のサポートを受けつつも何とか無事にキメる。ライブ中盤のクライマックスはここであるのは間違いない。
Hey Nineteen
ドゥービーで来たなら、スティーリー・ダンはこのナンバーで来るわけで、肝心のイントロの掴みのギターのチョーキング。。シングル・コイルのロング・トーンで安心感と満足感が同居する。
Love T.K.O.
テディ・ペンダーグラス「恋のT.K.O. 」をボズが噛みしめて歌う。
このサプライズ的チョイスこそリスナーは「T・K・O」に違いなく、ギターのオクターブ奏法で曲に一層の彩(いろどり)を添える。
Peg
流れがガラリと変わりスティーリー・ダンの「彩(エイジャ)」の代表ナンバー。
会場の満足度も高いのは当然伺える訳で、ホーン・セクションの生演奏からのスタジオに音作りもかなり忠実なへリントンのギター・ソロ。直後の拍手、すごくわかる。見た過ぎる。。
Lowdown
「Peg」からのボズの「Lowdown 」の流れがヤバい。。。。もう悔しい(この会場にいたい)。。。
ベースの単音チョッパーからのボズのなよっとしたボーカル。。。からの歌詞の「Hey boy」までの展開が地味なんだけどやっぱりカッコいい。。
改めて曲、演奏楽器、歌の合わさり具合がパーフェクトなのがよく分かった。
Takin' It to the Streets
当然だが前曲終了後の長めの拍手は余韻に浸りたいが、そうはさせない。
再度ドゥービーのナンバーをぶつけて来る。。
フリー・スタイルのピアノのアドリブからお馴染みのイントロに入る様、ベタにじらされているのが分かる。しかし悔しいがソウルフルでカッコいい。。
Reelin' In the Years
スティーリー・ダンのファースト・アルバム収録曲はカバーも多いので結構親しまれている。(当然だが)スティーリー・ダンのツァー・バンドなので演奏がこなれている。
タイトルのサビ部分にマイケルが加わるスタジオ盤に無い贅沢さ。元からこれだったんではないかと錯覚するくらいのナチュラルさ。。
そしてこの曲もギター・ソロが肝になっているがトーンもフレーズもパーフェクトでチョーキングでのドナルド・フェイゲンが嬌声を上げるところは非常に珍しい。
Lido Shuffle
1976年のヒット・アルバムアルバム『Silk Degrees』から再度チョイス。
ライブ終盤に来てゴージャスで軽快なシャッフル・ナンバーは、エンディングへ向かって走り抜ける様が聴いているだけでも伝わってくる。
Pretzel Logic
ラス前でスティーリー・ダンのナンバーを投入。ブルース進行でスローに展開するがサビの部分のメロディやコーラスを聴くと独自色が強いのが良く分かる。
後半、ボズにボーカルが変わるがいい感じに雰囲気が変わる。
終盤のジョン・へリントンのギター・ソロもフェンダー系のシングル・コイルにエフェクターでアイバニーズのチューブ・スクリーマーをかました中域を強調したスティービー・レイ・ヴォーンを彷彿させる熱いソロ展開させる。
Them Changes
間髪入れず、スティービー・レイ宜しくワウ・ペダルもかましジミ・ヘンドリックス・バージョンの「Them Changes 」で締めくくる。
ブルース・ロックで決めるへリントンのギターはもう一つのギタリストの顔を出す。それにつられてマイケル・マクドナルドが最後の炎を振り絞るようにソウルフルに熱唱。
オープニングの「People Get Up and Drive Your Funky Soul」を追加してエンディングを迎える。
まとめ
1993年の「ニューヨーク・ロック&ソウル・レヴュー」の頃と比べ固定バンドが演奏しているので、安定感や迫力など聴かせる要素が非常に多く充実している。
セット・リストの選曲の良さ、渋さ、サプライズ、全体の流れも考えられ、最後には3人ほぼ均等の露出と配分が良い。
ジョン・ヘリントンのギタリストとしての存在感と成功のカギ
ギターのプレイス・タイルにクセが無いのに加えてエモーショナルさも備わっているので、ジョン・ヘリントンがスティーリー・ダンを現代に蘇らせているのは明白。
ドナルド・フェイゲンが重用するのも納得がいく。ソロ弾いた直後に拍手が起きる場面が何度もあるのも当然の結果だ。
各人の手持ちカード(レパートリー)が多く、「あ、それやるんだ」とか選曲の時点で楽しめるのもこの企画の強み。
特にスティーリー・ダンはライブを前提としないレコーディングに切り替わってしまった楽曲の生演奏の再現は、嬉しいプレゼントだ。
それとドナルド・フェイゲンは気難しい哲学者のイメージだが、時折見せるお茶目さが可愛い(笑)
本作品以外のセット・リストでも是非聴いてみたいと切望したくなるライブ・アルバム。
終わり
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