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現役DJが選ぶ!2025年1月のベストアルバムTOP5

 こんにちは。

 今日は1月にリリースされたアルバムから、筆者が特に良いと思ったものをランキング形式で5枚紹介します。基本的に「先週のリリースまとめ」で取り上げた作品ばかりですが、聴き逃した方には改めて聴いてみるきっかけに、既に聴いた方も改めて良さを再発見する記事にしていければと思います。

 そして留意していただきたいのは、ランキングはあくまで現時点での評価であること。筆者の目標としては、年末に今年の年間ベストアルバムをランキング形式で記事にしようと思っているのですが、その頃には評価が変わっていることもあるかもしれません。

 では、5位から順番に発表していきますよ!


5位
Lambrini Girls
『Who Let the Dogs Out』

 まず第5位は『Who Let the Dogs Out』。イギリス・ブライトン出身のガールズパンクデュオ、ランブリーニ・ガールズのデビューアルバムです。

 短尺でエネルギッシュなパンクサウンドに、ボーカルのフィービー・ラニーのダミ声シャウト、その声から発する社会に対する挑発的なメッセージ。まさに90年代のライオット・ガールを彷彿とさせるんですが、そこに (際どいというレベルではない、もろに) 卑猥な表現を男性優位な社会構造を批判するメタファーとして用いる、女性ならではのユーモアセンスもあって。また新たな逸材が、イギリスのガールズバンドムーブメントの仲間入りを果たしました。

 イギリスのメディアを中心に好レビューが相次いだ甲斐もあって、全英チャートで16位を記録。無名バンドのデビュー作としては立派な数字です。ここからフェスやツアーを通して徐々に知名度を上げていって欲しいですね。


4位
The Weeknd
『Hurry Up Tomorrow』

 続いて第4位は、31日にリリースされたばかりの『Hurry Up Tomorrow』。ザ・ウィーケンド名義でリリースされる最後のアルバムだと言われています。

 作品に関する内容は、まだ「先週のリリースまとめ」で取り扱っていないため、そちらに譲ります。まだ多くは語れないのがもどかしいですが、筆者の気持ちとしては本作を2位にしたかったんですよ。作品の質は言うまでもないし、来週には世界各国のチャートで上位独占も間違いないですからね。ただ、聴いたばかりの勢いで高い評価に上振れてる気もしたので、今回は控えめな順位に落ち着きました。また聴き返してみて、水曜日に更新予定の「先週のリリースまとめ」で取り上げます。


3位
Mac Miller
『Balloonerism』

 ここからの3枚は、どれを1位にしても遜色ないほどハイレベルな作品ばかりですね。その中から3位に選んだのは『Balloonerism』。18年に夭折したラッパー/シンガーのマック・ミラーの未発表アルバムです。

 本作は、彼の晩年に見られる「フランク・オーシャン以降のネオソウル」の系譜にある作品だと思います。緻密に設計されたコード進行の上に、余白を残したオーガニックなサウンド、その余白を埋めるサンダーキャットの美麗でグルーヴィーなベースライン、幾重にも重ねられたディレイのかかったボーカル、失恋や死をテーマにした内省的で詩的なリリック。ソングライターとしてのクリエイティビティが爆発してますよね。14年には完成していたと言われるこんな凄い作品が、なぜ今まで未発表だったんでしょうね。彼を失ったのはR&B界の大きな損失だったよなぁと改めて思うところです。

 作品の質だけで評価すればこれを1位にしてただろうなと思います。そうしなかったのは、亡くなったアーティストの未発表盤より現行シーンを牽引する作品をより評価したかったからで、他意はありません。


2位
FKA twigs
『EUSEXUA』

 そして第2位は『EUSEXUA』。FKAトゥイッグスの5年ぶりとなるスタジオアルバムです。

 まず本作の良さは、すごくわかりやすいことにあります。これまでやや難解な印象もあった彼女の作品にしては、かなりポップでキャッチーな方向性へ舵を切ってるんですよ。これが功を奏したか、彼女のキャリア初となる全英TOP10入り(3位)を記録しています。

 そしてダンスミュージックにチャレンジした本作は、チャーリー・xcxの『brat』と比較する声もあるようですね。筆者も「これは『brat』と並称されてもいい作品だよな」と思っています。個人的には、よりリアルにダンスフロアの熱狂を伝えている点では、『EUSEXUA』の方が上だとも思っています。この2枚を足がかりに、イギリスのダンスミュージックシーンが更に活性化することに期待しています。

 あと1つ付け加えておきたいのは、

『brat』『EUSEXUA』に続く候補作品を
筆者は既に見当をつけている!

 これがまだ誰の何という作品かは言いません。今後その作品がリリースされた時に答え合わせをしましょう。2025年中のリリースを発表している作品なので、気になる方は探してみてください(笑)。



1位
Bad Bunny
『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』

 そして1位はなんといってもこれ!プエルトリコのレゲトンシンガー、バッド・バニーの覚えにくいタイトルの最新作です(笑)。海外では各単語の頭文字をとって、『DTMF』と略して呼ばれたりもします。当noteを普段からお読みの方は、筆者がもう何度も本作をベタ褒めしていたのをご存知かと思います。

 まず言及しておきたいのは、「本作で遂にバニーが正真正銘の世界的アーティストになった」という点です。「何を言ってるんだ!何年も前から世界的に有名だったじゃないか!」との声が飛んできそうですが、そうでもありませんでした。アメリカ、中南米、南ヨーロッパではもう何年も前から巨大な存在でしたけど、イギリス、ドイツ、北欧諸国でのセールスはこれまでいまひとつだったんです。それが今回、急激にチャート成績を伸ばしていて、ヨーロッパの多くの国でTOP10入り。これまで最も苦戦していたイギリスでも、過去最高成績を大きく更新する13位。もうスペイン語圏だとかラテン系移民の多い地域だとか関係なく、彼が全編スペイン語のアルバムを引っ提げて世界中を席巻している。これがまず、非英語圏の音楽シーンにとって歴史的快挙だなと思うんですよ。

 こうした記録面だけでなく、音楽的にも過去最高の水準を更新しています。本作はレゲトン、そしてプエルトリコの伝統音楽という2つの軸で展開されている (レゲトンもプエルトリコ発の音楽なので、一貫してプエルトリコミュージックのアルバムと言える) のですが、その両輪を上手い具合に噛み合わせてるんですよね。レゲトン系の楽曲と伝統音楽志向の楽曲を概ね交互に配置することで、プエルトリコの歴史ある音楽カルチャーを紹介しつつ、彼にレゲトンを期待するリスナーにも飽きさせない構成になっていて。非常によく考えられてると思います。

 本作について語りたいことはまだまだたくさんありますが、さらに詳しい解説を以下の記事からご覧になれますので、興味がある方は是非。現在世に出ている本作の日本語レビューでは、これが1番詳しいのではないかと自負しています(笑)。

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