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#111 タック・スミス&ザ・レストレス・ハーツ『ならず者の代償』

服部さんへ

 ベッカ・スティーヴンスの新作紹介、ありがとうございます。アコギの弾き語りが大好きなので、気持ちよく聴かせていただきました。それにしても、フィーリングというかヴァイブスというか波長というか、そういうものが自分には合うなあと思っていたら、この人はデヴィッド・クロスビー(合掌)とも親交が深かったようですね。妙に納得してしまいました。
 弾き語りの魅力は、楽曲の本質が浮き彫りになるとともに、そのアーティストの歌心みたいなものがダイレクトに伝わるところだと思っているのですが、体温や鼓動まで届いてくるような、まさにエモーショナルな歌唱に聴き入ってしまいまいした。服部さんが書いているように、怒りや、哀しみ、諦観のようなものも感じて、しっかり対峙してしまうので軽い気持ちでは聴けませんが、弾き語りの醍醐味が味わえる、「こういう時代にこういうアルバムを世に送り出してくれて、ありがとう」な作品でした。
 さて今回は、「こういう時代にこういうバンドをやってくれて、ありがとう」なタック・スミス&ザ・レストレス・ハーツをご紹介します。私事で恐縮ながら、僕は元々コピーライター志望でして、やたらタイトルやらキャッチやらに目が行ってしまうのですが、彼らのアルバムの邦題が、センス抜群で大好きです。

タック・スミス&ザ・レストレス・ハーツ『ならず者の代償』

 9月29日、30日に初来日公演を行うタック・スミス&ザ・レストレス・ハーツは、米アトランタでバイターズというバンドのフロントマンとして活動していたタック・スミスが、バイターズ解散後の2020年に新たにスタートさせたバンド。昨年のデビュー・アルバム『しくじった青春のバラッド』(原題『Ballad of a Misspent Youth』)に続き、早くも2作目『ならず者の代償』(原題『Rogue To Redemption』)が届いたのだけど、これが前作以上の完成度の高さで、“ロックンロールとはは何ぞや”という問いに、胸がすくほど明快に、パーフェクトに答えを提示してくれています。
 いわゆる、ぽっと出の新人ではないものの、タック・スミスが標榜しているのは、ビッグなギター・サウンドと屈強なビート、キャッチーなメロディからなる王道ロックで、チープ・トリックやシン・リジィなどが引き合いに出されています。
 王道とはつまり、時代を問わないということだというのが、僕の考え。それは、新しくも古くもないということであり、新しくもあり、古くもあるということ。実際、僕らのような世代にとっては懐かしくも新鮮に響き、ギター・ソロなんかが来ると、ニンマリしてしまうことは確実です。でも10代や20代のリスナーにとっては、新しくも、ヴィンテージっぽく聴こえることでしょう。以下は、「めげずにロング・ウェイ」(原題「Take The Long Way」)。

 しかも、今回タック・スミスは早くも、自身の全キャリアを代表する1曲になること間違いなしな(あくまで個人的見解です)、もはやロック・クラシックスとも呼べる(感じ方には個人差があります)素晴らしいアンセムを生み出しているのです。それが、「時代の終わり」(原題「End Of An Era」)という楽曲。

 ほんのちょっとでもロックに興味がある、良い子の皆さん、そして悪い子の皆さん、この曲を視聴して、カッコいいとか、気持ちいいとか、なんかグッときたとか、ザワザワしたとか、はたまた楽器をやってみたくなったとか、歌ってみたくなったとか感じたのなら、君もあなたも、お前もユーも、もう立派なロッカーだと断言します。これからの人生、ロックが最良のパートナーとなってくれることでしょう。
                              鈴木宏和


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